ヤバい!魔王が息してない!~英雄になれない最強忍者と白い犬の異世界忍法帖~

友理潤

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第1章 天然勇者の依頼事

悲劇のはじまりは姉から!

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「くそ…なんでこんなことになっちまったんだ…?」

魔王城を白い小型犬とともに抜けだした俺は、これまでのことを振り返っていた。
そしてこの悲劇の原因はなんだったのかを回想することにしたのだ。
それには今から1週間ほど前までさかのぼる必要がある。

◇◇
「ああ…腹減ったなぁ…」

あの日もいつも通り、やることもない俺は自分の家でごろごろして、ただひたすら夕飯の時間を心待ちにしていた。

師匠であるじいちゃんが死んでから半年―
18歳になった俺は、特にこれといった職につくこともなく教師である親のすねをかじって、その若さをむさぼっていた。
じいちゃんは「伝説」とうたわれるほどの、凄腕な忍者で、俺はそのじいちゃんの最後の弟子だ。
そんな俺が畑を耕したり、漁に出て魚をとったりするなんて、プライドが許さないってもんだ。
俺は職業も「忍者」でありたい!そんな風に考えていた。
しかし魔王の出現以降、人間同士の争いはなくなり、他国の諜報や要人の暗殺といった、まっとうな忍者への仕事の依頼はめっきり減っていた。
仕事があっても「逃げ出したペットを探して欲しい」とか、「旦那の不倫の証拠をつきとめて欲しい」とか、心踊るようなものとは程遠い、至極現実じみたものばかり…
それは由緒正しい忍者の家系であるコウガ家にとっても同じことで、もはや忍者の仕事の依頼だけで、食い扶持をつなぐのは不可能であった。

そんな状況だったわけで、俺がこうして真昼間からごろごろしているのだって、いわば「必然」と言うものだ。
俺は単に働きたくないという怠惰に、自分勝手な言い訳をして、畳の上に寝転がっていた。

そんな俺の顔を覗き込む一人の鬼…いや、女性の顔が天井に変わって俺の視界に現れた。

「あんたねぇ…『働かざる者、食うべからず』ってことわざ知ってる?」

抜群のプロモーションと、誰もが振返ってしまうほどの美貌、さらにおしとやかな性格に頭脳も忍者としての腕前もトップクラス…
目の前の女性を一言で表すなら「パーフェクト」―
彼女こそ俺の実の姉、コウガ・サユリである。

「なんで姉ちゃんが、こんな時間にこんなところにいるんだよ?」

と、言うのも、彼女は里長(さとおさ)、つまり忍者の棟梁である、大叔父のコウガ・ハンゾーの秘書として、世界各地を飛び回っているのだ。
こんな時間に、家にいるほど「暇」なわけがない。

「そのセリフ、そっくりそのままあんたに返すわ。わたしは今日は早めに仕事を終えて、久々の休日を満喫しようと、家に帰ってきたところなの!」

「そっか。じゃあ、楽しんでらっしゃい~」

「そっか、じゃない!!あんた!まだ仕事もしないで、ごろごろしているの!?情けない…コウガの家の恥さらしもいいところよ!」

「姉ちゃんに関係ないだろ!俺は俺の仕事をしているんだ!」

「どんな仕事よ!?」

「自宅警備!!」

そこまで会話を交わした時…
ブチ…
っと、姉ちゃんから何かがキレる音がした。

「きさまぁぁぁ!!私が優しく接してやってるからって、いい気になりおって!!その腐った根性、叩きのめしてくれるわ!!」

烈火のごとく怒りちらした姉ちゃんが、まさに般若の面となって俺に襲いかかってきた。
しかもクナイといって、忍者特有の先端が鋭い刃物の武器を手にしている。

本気だ…
本気で俺を「殺す」つもりなんだ…

「ぎゃぁぁぁぁ!!」

俺はすぐさま起き上がると脱兎のごとく、逃げ出した。

「まてぇ!ごらぁ!!!」
「ちくしょう!バラしてやる!姉ちゃんが本当は『鬼』な事をバラしてやるからな!」
「そんな事してみろ!私があんたを『バラして』やるわ!!」
「ひぃぃぃぃ!!」

シュッ!シュッ!シュッ!

背後から空気を切り裂く音が近づいてくる。

「のわっ!」

間一髪、右にステップすると、飛び道具である手裏剣が俺をかすめていく。
その軌道は確実に急所をとらえている…

「くそぉぉ!!!姉ちゃんなんて、大嫌いだぁ!!」

俺は一目散にとある場所に向かって走り続ける。鍛えられた俺の足は、まさに目にも止まらない速さだ。
あと少し!あと少し!

俺の目的地―それは、この広い屋敷の玄関だ。
一歩外に出てしまえば、「外面に命を懸けている姉」が鬼から菩薩に変わるはずだ!
しかし、我を忘れてトランス状態になった姉ちゃんはもはや、世界最凶の忍者と言っても過言ではない。
一歩ずつその差が詰まってきているのが、背中の気配で分かった。

捕まったら…食われて、死ぬ…

「させるかぁぁ!!」

俺は最後の力を振り絞って、玄関目指して加速した。
そして、ゴールが目の前に迫ってくる…
姉ちゃんの気配は、すぐ背後まで来ているが…

「俺の勝ちだ!!!
ざまぁみろ!!これが俺の実力だ!思い知ったか!鬼姉き!!」

俺は背後を振返って、そう吐き捨てた。

しかし…
姉ちゃんは笑っていた…
ニタァ…と…

その瞬間…俺は悟った…

彼女の最後の罠を…

「いてぇぇぇぇ!!!!」

足の裏から電撃のような、激痛が走る。
「まきびし」という、とげのついた小さな鉄球が、玄関に「これでもか!」というほどにまかれていたのだ。

普通の人間なら、あまりの痛さにここで立ち止まってしまうだろう。
しかし今の俺は違った。

「それでも俺は負けないっ!!」

ゴロゴロゴロ…

俺は前のめりに回転し、全身にまきびしを浴びながら、玄関の外へ出た…

俺の勝ちだ…
勝利の女神は最後まで正義を見捨てなかったのだ!

サイゾー!サイゾー!サイゾー!

俺の中で「サイゾーコール」が巻き起こる。

そしてその喝采に応えるように、全身全霊でガッツポーズを決めた…が…

ムズッ…

恐ろしい怪力が、俺の首根っこを掴んだ。

「作戦成功!姉は今、ひきこもりでどうしようもない弟を外に引っ張り出すミッションに成功しました!」

この声…姉ちゃんの「外面モード」だ…

「おい!勝ったのは俺だ!放せ!俺は自由だ!!」

俺はその怪力に抵抗して、なんとか振りほどこうとするが、びくともしない。


「ふふふ、サイゾーちゃんは何を言っているのかな?勝ち負けなんてないのよ。今から、仲良しの姉と弟が、隣町まで一緒にお買い物に行くだけなんだから」

「な…ま、まさか…」

「お互いにいい準備運動になったでしょ!?」

そう…全ては姉ちゃんの謀略だったのだ…
俺と一緒に外に出るための…

「くそ…この鬼姉きめ…」

俺はうらめしそうに、腕をからめて横に並ぶ姉ちゃんを睨んでつぶやいた。
その一言に、姉ちゃんは恐ろしいほどの低くくてドスのきいた声で、こう言ったんだ。

「外で余計な事言ったら…あんたをその場で始末するよ」

こうしてその日の昼、俺は久々に隣町まで出かけることになったのだった。
これが、悲劇の始まりとも知らずに…
いや、むしろすでに姉ちゃんが帰ってきた時点で悲劇だったか…


◇◇
人物紹介①

名前:コウガ・サイゾー
性別:男
年齢:18
職業:ニートな忍者、ひきこもり
能力:自称最強
腕力:C
素早さ:SS
魔力:D
体力:B
器用さ:SS
運:F
武器:クナイ、短剣、手裏剣、毒針、煙玉 など
得意技:忍術、潜入、暗殺、近接戦、幻術、ごろ寝、言い訳
身長:175cm
体重:60kg
体型:体脂肪少ないアスリート体型
顔立ち:良くも悪くも目立たない中庸
髪型:黒髪、柔らかな髪質、アホ毛、ふんわりした髪型


名前:コウガ・サユリ
性別:女
年齢:25
職業:忍者の棟梁の秘書、サイゾーの姉
能力:最凶
腕力:S(SS)
素早さ:S(SS)
魔力:C(S)
体力:S(SS)
器用さ:SS(SS)
運:A(A)
※( )内は鬼化した場合のステータス
武器:クナイ、手裏剣、まきびし など
得意技:鬼化、外面を整える
身長:160cm
体重:48kg
体型:抜群のプロモーション
服装:タイトな忍装束(くのいち型)
顔立ち:誰もが振返る美貌
髪型:黒髪、後ろで束ねる

※ステータスは「SS>S>A>B>C>D>E>F」の順。

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