75 / 88
第75話 再戦の時
しおりを挟む
◇◇
「何よ……。誰もいないじゃない」
第53層のモンスターハウスに入った僕、ニックとイライザたち。
けどモンスターの気配がまったくない。
いったいどういうことだろう?
「ほう。あれは」
部屋の奥に巨大なホテルのような建物が目に留まる。
「なるほどね。僕の『犬』にされないように、ここにいたモンスターを全部自分のモノにしたってわけか」
「はぁ!? あんなうじゃうじゃいた凶悪なモンスターをピートが全部仲間にしたって言うの?」
「ああ、今のヤツならやりかねないね。そして彼らを僕に殺されないようにどこかへ逃がした」
「うそ……」
顔を真っ青にしたイライザが言葉を失う。
「はははっ。あの無能なピートがそんなことをできる訳がない、って言いたいんだろう? 分かるよ。僕だってはじめは認めたくなかったさ。でもヤツは変わった。理由は分からないけど急に色々とできるようになってね。きっと悪魔とでも契約したのさ」
「それはあんたで……あぐっ!?」
相変わらずイライザは余計なことばかりをしゃべる。
だからちょっと喉を細工してあげた。
奴隷になれば触れなくても体の一部を自由にできるみたいでね。
イライザは涙目で恨めしそうに僕を睨みつけてるけど、むしろその視線が心地いい。
「先に進もう。あ、そうだ。せっかくだから僕がわざわざ来てあげたという記念を残してあげよう。ホーリースラッシュ!!」
剣を横に一閃させる。
――ズザァァァァ!!
衝撃波がフロアを走り抜け、巨大な建物にぶつかった。
――ドォォォォン!!
轟音とともに建物が崩れていく。
「おやおや。せっかく頑張って建てただろうに。こんなにも脆いなんてね。ふふ。あはははは!!」
さて。次はピート。おまえの番だ。
あっさり殺すだけじゃ飽き足らない。
じっくりといたぶってあげよう――。
◇◇
ニックが姿をあらわした。
ん? あれはイライザか。
「どうやらあの人間の娘がガルーを召喚したみたいですわ。しかもガルーの主人ではなく奴隷になるという契約のようです」
「なに?」
「あの中央にいる人間の男……ネクロマンサーですわ! ガルーは彼に殺されて下僕になってしまったのですね。ああ、なんて嘆かわしいのでしょう」
まだはっきりとしたことは分からないけど、何となく状況が見えてきたぞ。
功を焦ったイライザがガルーを召喚した。しかも自分が奴隷になるという契約で。
彼女たちはアルゼオンを討伐しに行ったけど返り討ちにあった。
そのガルーにとどめをさしたのがニックで、彼がガルーを奴隷にしたことで、自然とイライザもニックに従わざるを得なくなってしまった――。
おそらくそんな感じだろう。
だが顛末が分かったところで戦況が変わるわけがない。
「ピート様。いかがしましょう?」
ソフィが引き締まった表情で見つめてくる。
今……俺の相棒は彼女。つまり『使役』しているということ。
「予定通りだ」
「分かりました。お役に立てるよう頑張りますわ!」
二人で作戦本部を出て、外壁の方へ向かう。
「サン……。それにみんな。頼んだぞ」
祈るようにつぶやきながら、俺は壁の外に出る門を開いた。
「おやおや! 今回はわざわざ出迎えにきてくれたんだね! あはは! 嬉しいよ!」
相変わらず一目見ただけでお腹がムカムカしてくる嫌らしい笑みだ。
強くなったからだろうか。
いつにも増して憎たらしいほど自信に満ち溢れている。
だがいい気になるなよ。ニック。
絶対に再び返り討ちにしてやる――!
「何よ……。誰もいないじゃない」
第53層のモンスターハウスに入った僕、ニックとイライザたち。
けどモンスターの気配がまったくない。
いったいどういうことだろう?
「ほう。あれは」
部屋の奥に巨大なホテルのような建物が目に留まる。
「なるほどね。僕の『犬』にされないように、ここにいたモンスターを全部自分のモノにしたってわけか」
「はぁ!? あんなうじゃうじゃいた凶悪なモンスターをピートが全部仲間にしたって言うの?」
「ああ、今のヤツならやりかねないね。そして彼らを僕に殺されないようにどこかへ逃がした」
「うそ……」
顔を真っ青にしたイライザが言葉を失う。
「はははっ。あの無能なピートがそんなことをできる訳がない、って言いたいんだろう? 分かるよ。僕だってはじめは認めたくなかったさ。でもヤツは変わった。理由は分からないけど急に色々とできるようになってね。きっと悪魔とでも契約したのさ」
「それはあんたで……あぐっ!?」
相変わらずイライザは余計なことばかりをしゃべる。
だからちょっと喉を細工してあげた。
奴隷になれば触れなくても体の一部を自由にできるみたいでね。
イライザは涙目で恨めしそうに僕を睨みつけてるけど、むしろその視線が心地いい。
「先に進もう。あ、そうだ。せっかくだから僕がわざわざ来てあげたという記念を残してあげよう。ホーリースラッシュ!!」
剣を横に一閃させる。
――ズザァァァァ!!
衝撃波がフロアを走り抜け、巨大な建物にぶつかった。
――ドォォォォン!!
轟音とともに建物が崩れていく。
「おやおや。せっかく頑張って建てただろうに。こんなにも脆いなんてね。ふふ。あはははは!!」
さて。次はピート。おまえの番だ。
あっさり殺すだけじゃ飽き足らない。
じっくりといたぶってあげよう――。
◇◇
ニックが姿をあらわした。
ん? あれはイライザか。
「どうやらあの人間の娘がガルーを召喚したみたいですわ。しかもガルーの主人ではなく奴隷になるという契約のようです」
「なに?」
「あの中央にいる人間の男……ネクロマンサーですわ! ガルーは彼に殺されて下僕になってしまったのですね。ああ、なんて嘆かわしいのでしょう」
まだはっきりとしたことは分からないけど、何となく状況が見えてきたぞ。
功を焦ったイライザがガルーを召喚した。しかも自分が奴隷になるという契約で。
彼女たちはアルゼオンを討伐しに行ったけど返り討ちにあった。
そのガルーにとどめをさしたのがニックで、彼がガルーを奴隷にしたことで、自然とイライザもニックに従わざるを得なくなってしまった――。
おそらくそんな感じだろう。
だが顛末が分かったところで戦況が変わるわけがない。
「ピート様。いかがしましょう?」
ソフィが引き締まった表情で見つめてくる。
今……俺の相棒は彼女。つまり『使役』しているということ。
「予定通りだ」
「分かりました。お役に立てるよう頑張りますわ!」
二人で作戦本部を出て、外壁の方へ向かう。
「サン……。それにみんな。頼んだぞ」
祈るようにつぶやきながら、俺は壁の外に出る門を開いた。
「おやおや! 今回はわざわざ出迎えにきてくれたんだね! あはは! 嬉しいよ!」
相変わらず一目見ただけでお腹がムカムカしてくる嫌らしい笑みだ。
強くなったからだろうか。
いつにも増して憎たらしいほど自信に満ち溢れている。
だがいい気になるなよ。ニック。
絶対に再び返り討ちにしてやる――!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
165
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる