英雄テイマーの後継者~無能と罵られて追放されたテイマー、伝説の勇者と同じスキルを覚醒させて巨悪に立ち向かっていく。本物のテイムを見せてやる~

友理潤

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第82話 ガーディアン、降臨

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◇◇

 逃げ道を作らせないつもりだろう。
 ガルーは上空から。ニックは地を這うようにして迫ってくる。

「あはは!! これで終わりさ! 大人しく僕の『犬』になるんだ!」

 ガルーの口から白い光が漏れだす。
 ブレスか!
 火には耐性があるとはいえ、さっきもノーダメージとはいかなかった。
 ブレスの直撃を食えばただじゃすまないだろう。
 だがそれを避けようとすれば、ニックの剣の餌食になるのは目に見えている。
 
 どうすればいい――?

 二人との距離はまだあるが、迷っている暇はない。
 仕方ないな。
 ブレスを食らいつつ、ニックの迎撃だ。
 問題はHPが持つかどうかだが……。

 ――カッ!!

 ガルーの口が眩しく輝きだした。
 ……と、その時だった。

「ご主人!!」
「助けに来たわ!」
「やってやるぞぉ!」

 俺の前に回り込んだのはグリン、メラロ、リズリーの3人だった。
 
 そうか……。
 彼らの【オートテイム】を解くのをすっかり忘れてた。
 
 でもルナはどうしたのだろう?
 彼らが勝手に動こうとすれば彼女が制するはずだ。
 だがそのことを推理する意味はない。
 とにかく3人が助けにきてくれた。
 その事実だけでしぼみかけた気持ちが一気に膨らんだ。

 『進化シナリオの発動条件を満たしました』

 懐かしさすら覚える無機質な女性の声。
 
 ――グリンがアルティメット・グリーンドラゴンに進化
 ――リズリーがアルティメット・ヘルグリズリーに進化
 ――メラロがアルティメット・キメラロードに進化

 3人の体がほのかな光を帯びる。
 その直後、ガルーのブレスが俺たちに向かって伸びてきた。

「ここは俺に任せろ!!」

 火に耐性のあるグリンが両手を広げてブレスを受け止めた。

「ぐおおおおお!!」

 伝説のドラゴンの一撃をまともに食らったのだ。
 ただではすまないのは目に見えている。
 しかしグリンは倒れなかった。
 心配するな、と言わんばかりに、ぎこちない笑みを浮かべて、小さくうなずいてみせる。

「あはは!! 雑魚が増えたところで何の意味もない!」

 今度はニックだ。

「これでも食らいな!!」

 突進してくる彼に向けてメラロが尻尾のヘビから毒切りを噴射する。

「無駄、無駄ぁ!!」

 ニックには効いていないようだ。
 しかしその視界は一瞬だけふさがれた。

「うおおおおお!!」

 ニックの死角に回り込んだリズリーが鋭い爪を振り下ろす。

「ちっ!!」

 剣で受け止めるニック。
 しかしその背中はがら空きだ。
 俺は固めた拳を振り抜いた。

 ――ドンッ!!

 背後からみぞおちに重い一撃を加える。

「ぐっ……!」

 一瞬だけニックのひざが落ちそうになった。
 
 効いてる――。

 これまで逃げ回りながらもコツコツと腹部に攻撃を加えてきたからな。
 俺みたいにあらゆる攻撃による痛みを無効化するようなスキルでもなければ、ほんの少しずつのダメージとはいえ痛くてかなわないはずだ。

「てめえぇぇ! 小癪なんだよ!!」

 ニックがなりふりかまわず襲いかかってきた。
 まさに思うつぼだ。

「もういっちょ!!」

 ひょいと横に避けて、鉄拳を脇腹にめり込ませる。

「ぐはぁ……!」

 ニックがついにひざをついた。

 ここが勝負所だ!

「よし! みんな! 畳みかけよう!!」
「「おおっ!!」」

 リズリー、メラロ、グリンの3人とともに一斉にニック目がけて攻撃をしかける。

 ……が、その時だった――。


 ――カッ!!


 目の前が真っ白になったかと思うと、全身が焼けるように熱くなったのだ。

「があああああ!!」
「きゃあああああ!!」
「ぐううううう!!」

 しまった……!
 ガルーの『灼熱の光』だ!

 3人が派手に吹き飛ばされていくのが気配で分かる。
 だがそれで終わりではなかった――。

「ホーリー・スラッシュ!!」

 ニックの放った一撃が無防備な俺の胸に吸い込まれていく。

 ――ザンッ!!

 高くて鈍い音が耳に入ると同時に、体が後方に跳ね飛ばされていくのを感じた。

 ――ドンッ……。

 背中から地面に叩きつけられ、後頭部をしこたま打つ。
 こんな時でも痛みはほとんどない。
 しかし尽きかけたHPのせいか、意識がもうろうとしている。

「悪あがきはここまでさ。いいだろう。君からとどめを刺してやる」

 形勢が一気に逆転した……。

 一歩また一歩と聞こえてくるニックの足音。
 体がしびれていて動かない。

 どうにかしなくては……。

 黒い影が少しずつ伸びてきた。
 しかし俺の体は依然として言うことをきかない。

 まずい……。

「喜べ。君はこれから僕の『犬』として第二の人生がはじまるんだから。あははは!」

 高笑いしたニックが剣を振り上げた。
 
 ごめんよ。サン……。
 もうここまでだ……。


『サンが究極進化の条件を満たしました。オリハルコンゴーレム……通称【ガーディアン】に進化』


「え?」

 
 ふっとよぎる疾風。

 ――ドゴォォォォン!!

 頭上で響く爆裂音。

「ぐあああああああ!!」

 甲高い叫び声とともに派手に吹き飛ばされていくニック――。
 

 いったい何が起こったんだ?


 軽いパニックに陥った俺の視界に飛び込んできたのは、白くて細い手だった。


「ピートさん。あなたのことは私が守ります」

 
 そよ風のような心地よい声。
 そして太陽のような眩しい笑み。

 サンだ――!!

 たった半日なのに、数年ぶりに再会をはたしたかのような喜びに包まれた。
 体のしびれはどこかに吹き飛び、腹の底から力が湧いてくる。
 
 俺は迷わずその手を握った。

「サン!!」
「ピートさん!!」

 勢いよく立った俺をサンが強く抱きしめる。
 俺もありったけの力で彼女を抱きしめ返したのだった。
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