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第84話 イライザの悲劇
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◇◇
とんでもないものを見てしまったわ――。
ニックとピートの戦いを目の当たりにした私、イライザの感想は至ってシンプルそのものだった。
だってそうでしょ?
どこからともなく現れた美女がドカーンとガルーをぶっ飛ばして、ピートはピートであれだけ劣勢だったのにパンチ一発で形勢逆転しちゃうんだから……。
涙目で「やだああああああああ!!」って叫んでたニックの顔。
傑作すぎて彫刻にして飾っておきたいくらいだったわ。
ほんと、ざまぁみろね!
……ところでさっきからガルーをぶっ飛ばした女がこっちをチラチラ見てるんだけど何かしら?
時々ピートと目配せしてたわよね。
そう言えばあいつが一度ギルドに戻ってきた時に連れていた女のような気がする。
まさかあいつのカノジョ!?
いやいや、ないない。
女っ気なんてなかったし。
もしあいつが女に興味を持つようなら、真っ先に私を誘惑してきたはず。
それなのに一度もそんな素振りを見せなかったもの。
「ちょっとあんた。さっきから何よ。こっちばっか見て」
「え? いえ、いや、あの……。久しぶりだけど元気そうで良かったなっていうか……」
「久しぶり? あんたなんか知らないわよ。人違いでしょ?」
「あ……。そうだった。こっちなら分かるかしら?」
女が光に包まれたかと思うと、みるみるうちに巨体化する。
「んなっ……!?」
驚いているうちに光が収まり、目に映ったのは金色に輝くゴーレム。
そのひたいには見覚えのあるオレンジの紋章があった。
「まさか……。あんたサン?」
ゴーレムはコクリとうなずいた後、再び人間の姿に戻った。
「驚いた……。あんたもガルーと同じように人間の姿になれるってことね」
「そうなの。とにかく元気そうでよかったわ」
「当たり前でしょ! 私のレベルは52。ピートなんかより全然高いんだから!」
「え? そ、そうだったわね。でも……」
「何よ? 言いたいことがあるならはっきりと言ってみなさいよ!」
「うん……。あのね……」
もじもじして言葉を濁すサン。
あー! もう! イライラする!!
「あんたねぇ――」
そう文句をつけようとした、その時。
いつの間にか戻ってきたピートが口を挟んだ。
「サン、はっきり言ってやれよ。おまえのレベルは『リセット』されてるってな」
衝撃的な発言に、ぐらりと目の前が歪む。
「ど、どういうことよ?」
「それは俺が聞きたいくらいだ。どうして『レベル1』に戻ったんだ?」
「はあああああ!? そんなのありえないわ! この私がレベル1ですってぇ!?」
「ウソじゃないって。ほら」
ピートが落ちていた岩に向かって手をかざすと、ギルドにあるのと同じようにステータスが映し出された。
そしてそこには確かに『レベル1』と書かれていたのだ……。
「そんな……。いや、あんた! この私を騙そうとしてるのね! そうはいかないわよ!!」
「おまえを騙して何になるって言うんだ?」
眉をひそめるピート。
ぐっ……。確かに彼の言う通りだ。
ピートが私を騙す理由なんてない……。
「し、知らないわよ!! いいわ、証明してあげる。これがレベル52のファイア・ボールよ!!」
てのひらを上空に向かってかざし、魔力を収束させる。
抱えきれないくらいの巨大な火球が頭上にあらわれるはず。
「あははは! ひれ伏しなさい! 100年に1人と称された魔術師の偉大なる力に!!」
ピートとサンがポカンと口を開けたまま、私のてのひらを見つめている。
ふふふ。どうやら驚かせちゃったみたいね。
「これで分かったでしょ! あんたが私を騙してるってことが!」と気分良く告げてから視線を上にやる。
けどてのひらに乗っかっていたのは、豆粒ほどの大きさをした火の粉だったのだ。
「んなっ!? ど、ど、ど、どういうことよ!? あんた、私に何をしたのよ!!」
「いやいや、俺じゃないし」
「だ、だったらサン! あんたでしょ! はぁーん、分かった。私にピートが取られると思ったから細工したんでしょ! そうに決まってるわ!!」
「へっ? 私? 細工? そ、そんなことしてませんっ!」
顔を真っ赤にして抗議するサン。
怪しい。絶対に彼女が何かしたに決まってる。
「ピートのことは仕方ないからあんたに譲ってあげるから、私のレベルを元に戻しなさいよ! 今すぐ!」
「だから違いますって! そ、それにピートさんを譲るとか譲らないとか、意味が分かりませんから!」
「ふんっ、うそおっしゃい。そんなに顔を真っ赤にしちゃって。『私は絶対にピートさんを譲りません』って書いてあるようなもんじゃない。ピートのことは譲ってあげるって言ってるでしょ。だから私のレベルを――」
そう言いかけたその時、背後から聞き覚えのあるドスのきいた低い声が聞こえてきたのだった。
「ああ、すまん。言い忘れたが、俺様と主従契約を結んだ時、小娘のレベルをすべていただいた。だからもう小娘のレベルは元に戻らんのだよ」
はっとなって振り返ると、そこには死んだはずのガルーの姿があった。
いったいぜんたいどーなってるのよ!?
とんでもないものを見てしまったわ――。
ニックとピートの戦いを目の当たりにした私、イライザの感想は至ってシンプルそのものだった。
だってそうでしょ?
どこからともなく現れた美女がドカーンとガルーをぶっ飛ばして、ピートはピートであれだけ劣勢だったのにパンチ一発で形勢逆転しちゃうんだから……。
涙目で「やだああああああああ!!」って叫んでたニックの顔。
傑作すぎて彫刻にして飾っておきたいくらいだったわ。
ほんと、ざまぁみろね!
……ところでさっきからガルーをぶっ飛ばした女がこっちをチラチラ見てるんだけど何かしら?
時々ピートと目配せしてたわよね。
そう言えばあいつが一度ギルドに戻ってきた時に連れていた女のような気がする。
まさかあいつのカノジョ!?
いやいや、ないない。
女っ気なんてなかったし。
もしあいつが女に興味を持つようなら、真っ先に私を誘惑してきたはず。
それなのに一度もそんな素振りを見せなかったもの。
「ちょっとあんた。さっきから何よ。こっちばっか見て」
「え? いえ、いや、あの……。久しぶりだけど元気そうで良かったなっていうか……」
「久しぶり? あんたなんか知らないわよ。人違いでしょ?」
「あ……。そうだった。こっちなら分かるかしら?」
女が光に包まれたかと思うと、みるみるうちに巨体化する。
「んなっ……!?」
驚いているうちに光が収まり、目に映ったのは金色に輝くゴーレム。
そのひたいには見覚えのあるオレンジの紋章があった。
「まさか……。あんたサン?」
ゴーレムはコクリとうなずいた後、再び人間の姿に戻った。
「驚いた……。あんたもガルーと同じように人間の姿になれるってことね」
「そうなの。とにかく元気そうでよかったわ」
「当たり前でしょ! 私のレベルは52。ピートなんかより全然高いんだから!」
「え? そ、そうだったわね。でも……」
「何よ? 言いたいことがあるならはっきりと言ってみなさいよ!」
「うん……。あのね……」
もじもじして言葉を濁すサン。
あー! もう! イライラする!!
「あんたねぇ――」
そう文句をつけようとした、その時。
いつの間にか戻ってきたピートが口を挟んだ。
「サン、はっきり言ってやれよ。おまえのレベルは『リセット』されてるってな」
衝撃的な発言に、ぐらりと目の前が歪む。
「ど、どういうことよ?」
「それは俺が聞きたいくらいだ。どうして『レベル1』に戻ったんだ?」
「はあああああ!? そんなのありえないわ! この私がレベル1ですってぇ!?」
「ウソじゃないって。ほら」
ピートが落ちていた岩に向かって手をかざすと、ギルドにあるのと同じようにステータスが映し出された。
そしてそこには確かに『レベル1』と書かれていたのだ……。
「そんな……。いや、あんた! この私を騙そうとしてるのね! そうはいかないわよ!!」
「おまえを騙して何になるって言うんだ?」
眉をひそめるピート。
ぐっ……。確かに彼の言う通りだ。
ピートが私を騙す理由なんてない……。
「し、知らないわよ!! いいわ、証明してあげる。これがレベル52のファイア・ボールよ!!」
てのひらを上空に向かってかざし、魔力を収束させる。
抱えきれないくらいの巨大な火球が頭上にあらわれるはず。
「あははは! ひれ伏しなさい! 100年に1人と称された魔術師の偉大なる力に!!」
ピートとサンがポカンと口を開けたまま、私のてのひらを見つめている。
ふふふ。どうやら驚かせちゃったみたいね。
「これで分かったでしょ! あんたが私を騙してるってことが!」と気分良く告げてから視線を上にやる。
けどてのひらに乗っかっていたのは、豆粒ほどの大きさをした火の粉だったのだ。
「んなっ!? ど、ど、ど、どういうことよ!? あんた、私に何をしたのよ!!」
「いやいや、俺じゃないし」
「だ、だったらサン! あんたでしょ! はぁーん、分かった。私にピートが取られると思ったから細工したんでしょ! そうに決まってるわ!!」
「へっ? 私? 細工? そ、そんなことしてませんっ!」
顔を真っ赤にして抗議するサン。
怪しい。絶対に彼女が何かしたに決まってる。
「ピートのことは仕方ないからあんたに譲ってあげるから、私のレベルを元に戻しなさいよ! 今すぐ!」
「だから違いますって! そ、それにピートさんを譲るとか譲らないとか、意味が分かりませんから!」
「ふんっ、うそおっしゃい。そんなに顔を真っ赤にしちゃって。『私は絶対にピートさんを譲りません』って書いてあるようなもんじゃない。ピートのことは譲ってあげるって言ってるでしょ。だから私のレベルを――」
そう言いかけたその時、背後から聞き覚えのあるドスのきいた低い声が聞こえてきたのだった。
「ああ、すまん。言い忘れたが、俺様と主従契約を結んだ時、小娘のレベルをすべていただいた。だからもう小娘のレベルは元に戻らんのだよ」
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いったいぜんたいどーなってるのよ!?
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