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彼女 を 誘拐
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いつの間にか私は眠っていたらしく、目が覚めるともう朝だった。時計を見るといつも起きる時間よりは遅く起きてしまったようで、自分の部屋だと思っていた私はベッドから飛び起きる。しかし、そこは私の部屋ではなかった。
見覚えない部屋に私は寝かされていたようだ。
「……ここ……。」
畳の部屋のようだ。シンプルな部屋で、あまりモノがない。
立ち上がり、その隣の部屋の扉を開ける。その部屋は、私が夜までいた山口さんの部屋のリビングだった。
そして中央にあるソファには、息吹が眠っていた。
「息吹。」
ソファの前でひざまずいて、彼に声をかける。すると彼は薄く目を開けた。そして手を私の方にのばす。
「……サクヤ……。」
わずかにそうつぶやいたように聞こえる。そして私の頬に手を伸ばした。
「息吹。ちょっと!」
その手を振り払うと、彼は完全に起きたらしい。
「……今何時?」
体を起こしてあくびを一つ。そしてこちらをみた。
「七時。」
「もうそんな時間か。」
伸びをして、こちらをみる。そんなに寝ていないのかもしれない。
「コーヒーでも入れようかしら。あなた飲む?」
「あぁ。もらおうか。」
彼はそれだけいうと、トイレの方にいってしまった。そこから立ち上がり、私はキッチンの方へ向かう。やかんに水を入れて、コンロの火をつける。そのとき、玄関のドアが開いた。
「ただいま。」
少し疲れたような表情の山口さんが戻ってきたのだ。しかし彼は私を見るといつもの笑顔に戻っていった。
「お帰りなさい。」
「桜井さん。バッグを持ってきた。」
彼はそう言って私のバッグを、さっきまで息吹が眠っていたソファに置く。そしてそのソファの向かいのソファに腰掛けると、少しため息を付いていた。
「……すいません。私のことで。」
「いいんだよ。ただ、ちょっとショックだったね。」
ショックだったというのは、やはりあのことだろうか。
私が桐彦さんの妻だったということ。息吹が知っていることなのに、彼が知らないわけがないのだろうから。
そのときトイレから息吹が出てきた。
「帰ってたのか。」
「あぁ。息吹。ちょっとそこに座って。」
すると息吹はさっきまで自分が眠っていたのソファに座った。
私は入れ終わったコーヒーを三つカップに入れて、彼らの前に置く。コーヒーの匂いが、部屋の中に充満するようだった。
「お前の記憶を封印したのは、確かにボスだ。」
「……やはり俺には何か隠されていることがあったんだな。」
「あぁ。」
コーヒーを口に含むと、山口さんはカップをテーブルに置く。その手がわずかに震えていたのを、見逃さなかった。
「それを話してもいいとボスに許可を得た。だけど桜井さん。」
立っている私の方に、山口さんは視線をあげた。
「はい。」
「このことは桜井さんの記憶を呼び覚ますかもしれない。そのときは、君に寄ってくる魔物が増加する可能性もある。それがイヤだったら、僕の部屋でもいいし息吹の部屋にでもいてくれないか。」
その言葉に、私は「いいや」とはいえなかった。自分の知らないことで、私が狙われているのは納得いかないとずっと思っていたからだ。
「……かまいません。」
「六花。」
息吹が声を上げて、私を止めようとしているようだった。しかし私はその手に持っているコーヒーを持って、息吹の隣に座った。
その行動に、山口さんは少しため息を付いた。
「君は何もわかってないのかもしれないな。」
「……。」
「多分息吹は薄々気が付いていたんだろう。」
「こいつがボスの奥さんだったというので、少し思い出したことがあるが……。」
「チューブにはいっている奥さんの姿だろう。」
「そうだ。」
「お前はな、そのチューブから奥さんを盗んだんだよ。」
人間界から人間の作り出した魔物の成功例である、魔物。それを桐彦は盗み出した。目的はその魔物のデーター集めのため。
だが盗み出したことを他の外部に知られると、その魔物を盗まんとする魔物が多くなるだろう。そこで彼はその魔物を自分の妻にすることにした。
「妻は体が不自由だ。他のモノと会うことは出来ない。」
そう言ってその魔物を、監禁した。なぜなら、その魔物はあふれるほどの力を持っていたのだから。その力は桐彦でも立ち向かうことが出来るかわからない。
そこで彼はその魔物の力を漏らさないようにするため、力を回復させるために使う水をチューブに浸し、その中に魔物を入れた。
そうすれば力が外に漏れ出すことはない。
そしてそのチューブ越しに、魔物を分析していく。そして生まれたのが、息吹だった。力のコントロールが出来る分、息吹は使いやすい。
そしてそれをきっかけに、魔物を量産することが出来た。
それから数年。
息吹はいきなり反乱を起こし、その魔物を盗み取ったのだ。
魔物もいきなり外の空気を吸い、戸惑いを隠せない。ただでさえ力のセーブが出来ない魔物だ。力すら不安定になる。
その結果、血に飢えた魔物が魔物を襲ってきた。それは何百、何千という数だった。
魔物はその数に驚き、息吹もそれほどの数の相手にするのは無理と判断し、逃げようとしたときだった。
魔物が力を解放したのだ。
どーーーーん。
元々森の中だったところは一瞬で砂漠になり、魔物は大量に死んだ。
そして残ったのは息吹とその魔物だけだった。
見覚えない部屋に私は寝かされていたようだ。
「……ここ……。」
畳の部屋のようだ。シンプルな部屋で、あまりモノがない。
立ち上がり、その隣の部屋の扉を開ける。その部屋は、私が夜までいた山口さんの部屋のリビングだった。
そして中央にあるソファには、息吹が眠っていた。
「息吹。」
ソファの前でひざまずいて、彼に声をかける。すると彼は薄く目を開けた。そして手を私の方にのばす。
「……サクヤ……。」
わずかにそうつぶやいたように聞こえる。そして私の頬に手を伸ばした。
「息吹。ちょっと!」
その手を振り払うと、彼は完全に起きたらしい。
「……今何時?」
体を起こしてあくびを一つ。そしてこちらをみた。
「七時。」
「もうそんな時間か。」
伸びをして、こちらをみる。そんなに寝ていないのかもしれない。
「コーヒーでも入れようかしら。あなた飲む?」
「あぁ。もらおうか。」
彼はそれだけいうと、トイレの方にいってしまった。そこから立ち上がり、私はキッチンの方へ向かう。やかんに水を入れて、コンロの火をつける。そのとき、玄関のドアが開いた。
「ただいま。」
少し疲れたような表情の山口さんが戻ってきたのだ。しかし彼は私を見るといつもの笑顔に戻っていった。
「お帰りなさい。」
「桜井さん。バッグを持ってきた。」
彼はそう言って私のバッグを、さっきまで息吹が眠っていたソファに置く。そしてそのソファの向かいのソファに腰掛けると、少しため息を付いていた。
「……すいません。私のことで。」
「いいんだよ。ただ、ちょっとショックだったね。」
ショックだったというのは、やはりあのことだろうか。
私が桐彦さんの妻だったということ。息吹が知っていることなのに、彼が知らないわけがないのだろうから。
そのときトイレから息吹が出てきた。
「帰ってたのか。」
「あぁ。息吹。ちょっとそこに座って。」
すると息吹はさっきまで自分が眠っていたのソファに座った。
私は入れ終わったコーヒーを三つカップに入れて、彼らの前に置く。コーヒーの匂いが、部屋の中に充満するようだった。
「お前の記憶を封印したのは、確かにボスだ。」
「……やはり俺には何か隠されていることがあったんだな。」
「あぁ。」
コーヒーを口に含むと、山口さんはカップをテーブルに置く。その手がわずかに震えていたのを、見逃さなかった。
「それを話してもいいとボスに許可を得た。だけど桜井さん。」
立っている私の方に、山口さんは視線をあげた。
「はい。」
「このことは桜井さんの記憶を呼び覚ますかもしれない。そのときは、君に寄ってくる魔物が増加する可能性もある。それがイヤだったら、僕の部屋でもいいし息吹の部屋にでもいてくれないか。」
その言葉に、私は「いいや」とはいえなかった。自分の知らないことで、私が狙われているのは納得いかないとずっと思っていたからだ。
「……かまいません。」
「六花。」
息吹が声を上げて、私を止めようとしているようだった。しかし私はその手に持っているコーヒーを持って、息吹の隣に座った。
その行動に、山口さんは少しため息を付いた。
「君は何もわかってないのかもしれないな。」
「……。」
「多分息吹は薄々気が付いていたんだろう。」
「こいつがボスの奥さんだったというので、少し思い出したことがあるが……。」
「チューブにはいっている奥さんの姿だろう。」
「そうだ。」
「お前はな、そのチューブから奥さんを盗んだんだよ。」
人間界から人間の作り出した魔物の成功例である、魔物。それを桐彦は盗み出した。目的はその魔物のデーター集めのため。
だが盗み出したことを他の外部に知られると、その魔物を盗まんとする魔物が多くなるだろう。そこで彼はその魔物を自分の妻にすることにした。
「妻は体が不自由だ。他のモノと会うことは出来ない。」
そう言ってその魔物を、監禁した。なぜなら、その魔物はあふれるほどの力を持っていたのだから。その力は桐彦でも立ち向かうことが出来るかわからない。
そこで彼はその魔物の力を漏らさないようにするため、力を回復させるために使う水をチューブに浸し、その中に魔物を入れた。
そうすれば力が外に漏れ出すことはない。
そしてそのチューブ越しに、魔物を分析していく。そして生まれたのが、息吹だった。力のコントロールが出来る分、息吹は使いやすい。
そしてそれをきっかけに、魔物を量産することが出来た。
それから数年。
息吹はいきなり反乱を起こし、その魔物を盗み取ったのだ。
魔物もいきなり外の空気を吸い、戸惑いを隠せない。ただでさえ力のセーブが出来ない魔物だ。力すら不安定になる。
その結果、血に飢えた魔物が魔物を襲ってきた。それは何百、何千という数だった。
魔物はその数に驚き、息吹もそれほどの数の相手にするのは無理と判断し、逃げようとしたときだった。
魔物が力を解放したのだ。
どーーーーん。
元々森の中だったところは一瞬で砂漠になり、魔物は大量に死んだ。
そして残ったのは息吹とその魔物だけだった。
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