2 / 7
食堂の手伝い
しおりを挟む
食堂は二十一時に閉まる。それから春は店の掃除、皿洗い、金の計算、明日の仕込みまでを一人でするのだ。二階が自室とは言え、すべてを終えて彼がベッドにはいるのは、日が変わってからがほとんどだ。
今日もとりあえず皿を洗うことから始める。すると二階から音がした。見上げると秋がこちらを見ている。
「仕事終わった?」
「うん。何?手伝うのか?」
「それくらいしか出来ねぇから。」
春は少し笑うと、隅にある箒とちりとりを指さした。
「床掃いて、それからモップで床を拭く。それから布巾でテーブルを拭いたあと、つまようじと割り箸、それから紙ナプキンの補充をしてくれるか。」
「わかった。」
掃除だけでもしてくれれば助かる。彼はそう思いながら、秋の動きを見ていた。ずいぶん丁寧にする人だ。飲食業をしていたのだろうか。
「秋君、仕事は?」
「あ、一応昼間は……バイトで鳶。」
「ふーん。っぽいね。がたい良いもん。俺ももう少し背があったらなぁ。」
「もっとちゃっちゃっと動けって言われるけど。」
「でも力はあるんだろ?」
「まぁ。他の人よりは。」
「いいじゃん。それで。それよりほかに何が必要なんだよ。他の人より優れたことがあるってことは、それだけで取り柄になるんだしさ。」
秋は手を止めて春をみる。そんなことを言う人は初めてだった。
結局仕事を終えて、二人で二階に上がってきたのは二十二時過ぎのことだった。いつもよりは早い。
「風呂沸いてんじゃん。ラッキー。秋君。入った?」
「イヤ。手伝おうと思ったから。」
「じゃあ先入りなよ。布団用意しておくからさ。」
風呂に入りながら、秋はため息をついた。そして体の傷をみる。もうとれない傷だった。
目を瞑れば、思い出すのは小さい頃の思い出。二度と思い出したくない暗闇の出来事。
「大丈夫か?秋君?寝てない?」
風呂の向こうから、春の声が聞こえる。
「すいません。起きてます。」
「だったら良かった。」
もう考えまい。そう思って彼は風呂から出る。
食卓のテーブルにはおにぎりが二つおいてあった。それを風呂上がりの秋はめざとく見つける。
「あぁ。腹減ってんなら食って良いよ。」
「いいのか。」
「どうせ飯余ったし。」
「あんた食わなくていいのか。」
「俺はいいの。」
そういって春は冷蔵庫からビールを見せる。
「なるほどな。」
「じゃあ、俺も入るから。」
そういって春は髪をほどく。長い髪だ。背中あたりまである髪は、秋も長いと思っていたが、彼の方が長そうに見える。
今日もとりあえず皿を洗うことから始める。すると二階から音がした。見上げると秋がこちらを見ている。
「仕事終わった?」
「うん。何?手伝うのか?」
「それくらいしか出来ねぇから。」
春は少し笑うと、隅にある箒とちりとりを指さした。
「床掃いて、それからモップで床を拭く。それから布巾でテーブルを拭いたあと、つまようじと割り箸、それから紙ナプキンの補充をしてくれるか。」
「わかった。」
掃除だけでもしてくれれば助かる。彼はそう思いながら、秋の動きを見ていた。ずいぶん丁寧にする人だ。飲食業をしていたのだろうか。
「秋君、仕事は?」
「あ、一応昼間は……バイトで鳶。」
「ふーん。っぽいね。がたい良いもん。俺ももう少し背があったらなぁ。」
「もっとちゃっちゃっと動けって言われるけど。」
「でも力はあるんだろ?」
「まぁ。他の人よりは。」
「いいじゃん。それで。それよりほかに何が必要なんだよ。他の人より優れたことがあるってことは、それだけで取り柄になるんだしさ。」
秋は手を止めて春をみる。そんなことを言う人は初めてだった。
結局仕事を終えて、二人で二階に上がってきたのは二十二時過ぎのことだった。いつもよりは早い。
「風呂沸いてんじゃん。ラッキー。秋君。入った?」
「イヤ。手伝おうと思ったから。」
「じゃあ先入りなよ。布団用意しておくからさ。」
風呂に入りながら、秋はため息をついた。そして体の傷をみる。もうとれない傷だった。
目を瞑れば、思い出すのは小さい頃の思い出。二度と思い出したくない暗闇の出来事。
「大丈夫か?秋君?寝てない?」
風呂の向こうから、春の声が聞こえる。
「すいません。起きてます。」
「だったら良かった。」
もう考えまい。そう思って彼は風呂から出る。
食卓のテーブルにはおにぎりが二つおいてあった。それを風呂上がりの秋はめざとく見つける。
「あぁ。腹減ってんなら食って良いよ。」
「いいのか。」
「どうせ飯余ったし。」
「あんた食わなくていいのか。」
「俺はいいの。」
そういって春は冷蔵庫からビールを見せる。
「なるほどな。」
「じゃあ、俺も入るから。」
そういって春は髪をほどく。長い髪だ。背中あたりまである髪は、秋も長いと思っていたが、彼の方が長そうに見える。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる