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第五十七話「いきなりパンツ・オン・ザ・フェイス(中編)」
しおりを挟む――その姿、まさに女神降臨。
“美”だ。
そこに美があった。
目の前にあるのはまさに美の化身。
具象化された美そのものと言っても過言ではない美しさだ。
なぜなら、艶やかな黒髪をたずさえたその少女の顔立ちは、やや垂れ眼がちで丸みを帯びた童顔狸顔。されど、その眼、鼻、口、輪郭に至るまでが、まるで黄金比とでも言うべき完成された位置に配置されており、その奇跡的なまでの造形美、そして愛くるしさに愛くるしさを重ねたパーツのみを見事に掛け合わせた奇跡の配合バランスと、まさに完璧としか言いようの無いデザインで形成されており、それを一言で言い表すならば、例え陳腐な表現であったとしても、美少女。それ以外の表現を許さない程だった。
ありていにわかりやすく例えるなら、AIが写真みたいに作成した、リアルなんだけどこんなんありえないだろうってくらいに整いまくった超絶美形な美少女の顔。まさにあれだ。あの異世界めいた、されど写実的な美少女の顔を想像すればだいたい合ってる。あの顔なのだ。
だけどさ。これで魅力A+だって言うんだからたまったもんじゃありませんぜ?
もしもだ、仮にもし、Sランクなんて美少女様がこの世にいらっしゃられ遊ばれた日にゃどうなるよ。
いや、もしそれ以上の、それこそSSSランクの魅力をお持ちの超絶美少女様なんかが御降臨遊ばれてしまわれた日なんて想像してみて御覧なさいな。
最悪、道を歩いただけで栗の花の香りにも似たあの臭が周囲から立ち昇り始めてきてしまったりしたりして……?
ほぅ、無手見ヌき発射ですか。たいしたものですね。
……たいしたものですねじゃねぇよ。
オイオイオイ、引くわ、俺でも。
……当事者の俺が言うのもなんだが、俺が男だったからよかったものの、魅力SSSって実はヤバいんじゃねぇの?
っと、くだらねぇ話でちょいと現実逃避しちまったぜ。
今は目の前の美を堪能しなきゃだよな。
まぁ、俺の脳がどこかへ逃避しちまうのも無理も無い話さ。
だってよう、目の前によう、誘うようによう。踊るようにそれが揺れ動いてるんだってばよぉぉっ!
舞い踊るという表現がふさわしいくらいに跳ねて震えるそれ。
それとは何ぞやだって?
そんなの、決まってるじゃないかっ……!
どたぷん、という擬音が聞こえてきそうなほどに、今にも溢れ零れ落ちんとばかりにたわわに実った濃厚むっちり肌色水饅頭様がだよぉっ!!
――それはうら若き乙女の果実と言うには、あまりに豊満すぎた。
大きく、肉厚で、重厚、そして先端にあるピンクが眩しすぎた。
それは正に爆乳だった。
あれを直視してはならない。
なぜならあれは、見る雄全てを石化させる能力を保有する魔性のSランク宝具なのだから。
……なお、一体どこが石化するかについては推して知るべし。言うまでもあるまいよ。男ならわかるだろ?
ちなみに余談だが、けっして漫画とかにあるような奇乳とか魔乳と呼ばれるようなグロイ異質なデカさという訳ではない。
実に現実的にほどよくバランスの取れた美しい巨乳様が進撃なさっている訳だ。今まさに。俺の目の前で。もはや一人立体起動ともいわんばかりの勢いでな。
そんなお肉饅様達がよう、プルンプルンプルンの、バインバインバインってな具合に踊り狂っていやがるんですぜ?
理性を保たなきゃならない俺の身にもなってくれってんだ。
いくら状態異常無効があるって言ったってさぁ。自由意思でオンオフ可能なスキルだってある訳でしてね?
『逆に考えるんだ、理性を手放しちゃってもいいさって』
その時、唐突に俺の心の奥底にある欲望めいた部分が囁きかけてくる。気がした。
目の前の果実を貪り食らってしまえばいいじゃないか、と。
というか、今日の用事とか明日でいいじゃん。もういっそ悩むくらいなら、この場で一回スッキリしちゃおうぜ、と。
一言で要約するならば、
『ユー、犯っちゃいなヨ』と。
……馬鹿言っちゃいけねえ。
俺はこれでも、今までずっと心の中では騒いでいたとしても、顔や行動にだけは出すことなく、出来る限り平静を保つ努力を続けてきてたんだ。する時だって童貞丸出しムーブなのは心の中だけで外面だけは手馴れたイケメンムーブでこなしてきてたんだ。
なぜならよう、Sランクの性的魅了スキル様がよう……幻滅されないよう、無様な醜態を晒さないよう、導いてくれてるんだからよぉぉ。
顔には出すな。行動には出すな。そういうのは地の文だけにしておけ、ってさ。
ってか地の文ってなんだよ地の文って。俺はな○う小説の登場人物じゃねぇんだぞ?
まぁ、そんな些事はさておいて、平静を保つべく、俺はスッと、さりげなく視線を目の前で俺を誘惑する魔性の宝具からそらすのだった。
が、なんということでしょう。
――大魔王からは逃げられない。
誘惑の果実から目を背けた先。そこにも、蠱惑的な罠が待ち受けているのだった。
なぜなら、乙女の体というものは隙の生じぬ三段構え。見るもの全てが思考を絡め取る、誘惑の迷宮なのだから。
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