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【テイラー】追想3
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「皇帝としての資質がございますから」
「公爵家なら大丈夫だろう?」
「はい、公爵家の方はご立派な方ばかりです。ですが、私が知る限り、ディオエル様こそが皇帝陛下に相応しい方です」
純血種でも皇帝の資質は、番がいるいないで、判断できるものではない。ディオエルが皇帝であることは、望まれたことである。
人の上に立ち、頼もしい安心感というのは、天性のものである。
「そうか。それでも、私は沢山、間違えてしまった」
「それは」
「ライシードからは言い難いな、私は人として間違たんだ。もしも、あの世があるとするなら、アイルーン嬢とテイラー嬢に会えるなら、ちゃんと謝りたい。何のしがらみもなく、ただ謝りたい……」
亡くなれば、身分も関係ない。
周りにどのように思われるかも考えずに、そこまでしなくては平等に謝ることもできない。それは皇帝だからでもあり、責任があるからである。
「私は、私はテイラー嬢にミリオン王国で会って、話をされた時に、私は救われたと思ってしまったのです……」
「救われた?」
「はい、アイルーン様ではないのに、この方を守ればと考えてしまったのです」
驚きはしたが、やり直すチャンスが与えられたのだと、受け取ってしまった。
アイルーンが殺されたこと、辛かったことを聞くことができる。調べている間、寝る暇がなくても、辛くはなかった。
それよりも辛かったのは、事件の全貌が分かってからであった。
この皇帝宮で行われていたのに、気が付かなかった自分に腹が立った。ディオエルは自分以上だっただろうと思うと、苦しかった。
「間違いではないだろう」
「ですが、守れなかったのです」
「ライシードのせいではない」
アイルーンは貧血で辛い状況だったのかもしれないが、苦しむ姿を見ることはなかったが、テイラーについては痛ましい姿を目にすることになった。
無力な自分を、また守れなかった自分を、失格だと実感した。
「いいえ!テイラー嬢も、側近は犯人を見付けて、ディオエル様に突き出すべきだと……テイラー嬢の言葉がなければ、何もできなかったのです」
「その責任は私にある」
殺された被害者に話を聞くなど、皇帝としても、側近としても、恥でしかなかった。
それでも、18年も気付かなかった竜帝国としては、テイラーに縋るしかなく、本来ならあの時にいた全員に自白剤を使ってでも行うべきことであった。
「側近である資格がないのです」
「母君に怒られたか?」
「はい……お前は何をやっているのだ!立っているだけか?ふざけるなと」
ライシードの母は、結婚前は騎士団におり、側近になった後で、何かあったら盾くらいにはなりますからと言って来たほどの強い女性である。
それでも、ライシードのことは気は利かないが、素直な子だとも言っていた。
確かに素直なライシードは、ディオエルは羨ましいと思うこともあった。テイラーが謝ったのはライシードだけと言ったのも、頭を殴られるような思いであった。
「ライシードには負担を掛けたな」
「いいえ、そんなことはありません」
「次期皇帝はアンデュース・キュレシール公爵と話をしてある。ライシードにはまた側近として、助けてやって欲しいと思っている」
「私は、何度も間違えております。側近などと言える立場ではありません」
何度も辞めようかと思ったが、イオリクのせいで、自分も離れるわけにはいかないと、どうにかここまでやって来た。
「そんなことはない。お前は私に寄り添い、支えてくれた。感謝している」
「そのようなことはありません、私がもっとちゃんとしていたら、こんなことにはならなかったのです。申し訳ありません」
「そんなことはない、お前は立派な側近だった」
「勿体ないお言葉でございます」
ライシードは涙は絶対に流さないと、噛み締めながら頭を下げた。
「公爵家なら大丈夫だろう?」
「はい、公爵家の方はご立派な方ばかりです。ですが、私が知る限り、ディオエル様こそが皇帝陛下に相応しい方です」
純血種でも皇帝の資質は、番がいるいないで、判断できるものではない。ディオエルが皇帝であることは、望まれたことである。
人の上に立ち、頼もしい安心感というのは、天性のものである。
「そうか。それでも、私は沢山、間違えてしまった」
「それは」
「ライシードからは言い難いな、私は人として間違たんだ。もしも、あの世があるとするなら、アイルーン嬢とテイラー嬢に会えるなら、ちゃんと謝りたい。何のしがらみもなく、ただ謝りたい……」
亡くなれば、身分も関係ない。
周りにどのように思われるかも考えずに、そこまでしなくては平等に謝ることもできない。それは皇帝だからでもあり、責任があるからである。
「私は、私はテイラー嬢にミリオン王国で会って、話をされた時に、私は救われたと思ってしまったのです……」
「救われた?」
「はい、アイルーン様ではないのに、この方を守ればと考えてしまったのです」
驚きはしたが、やり直すチャンスが与えられたのだと、受け取ってしまった。
アイルーンが殺されたこと、辛かったことを聞くことができる。調べている間、寝る暇がなくても、辛くはなかった。
それよりも辛かったのは、事件の全貌が分かってからであった。
この皇帝宮で行われていたのに、気が付かなかった自分に腹が立った。ディオエルは自分以上だっただろうと思うと、苦しかった。
「間違いではないだろう」
「ですが、守れなかったのです」
「ライシードのせいではない」
アイルーンは貧血で辛い状況だったのかもしれないが、苦しむ姿を見ることはなかったが、テイラーについては痛ましい姿を目にすることになった。
無力な自分を、また守れなかった自分を、失格だと実感した。
「いいえ!テイラー嬢も、側近は犯人を見付けて、ディオエル様に突き出すべきだと……テイラー嬢の言葉がなければ、何もできなかったのです」
「その責任は私にある」
殺された被害者に話を聞くなど、皇帝としても、側近としても、恥でしかなかった。
それでも、18年も気付かなかった竜帝国としては、テイラーに縋るしかなく、本来ならあの時にいた全員に自白剤を使ってでも行うべきことであった。
「側近である資格がないのです」
「母君に怒られたか?」
「はい……お前は何をやっているのだ!立っているだけか?ふざけるなと」
ライシードの母は、結婚前は騎士団におり、側近になった後で、何かあったら盾くらいにはなりますからと言って来たほどの強い女性である。
それでも、ライシードのことは気は利かないが、素直な子だとも言っていた。
確かに素直なライシードは、ディオエルは羨ましいと思うこともあった。テイラーが謝ったのはライシードだけと言ったのも、頭を殴られるような思いであった。
「ライシードには負担を掛けたな」
「いいえ、そんなことはありません」
「次期皇帝はアンデュース・キュレシール公爵と話をしてある。ライシードにはまた側近として、助けてやって欲しいと思っている」
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「そんなことはない。お前は私に寄り添い、支えてくれた。感謝している」
「そのようなことはありません、私がもっとちゃんとしていたら、こんなことにはならなかったのです。申し訳ありません」
「そんなことはない、お前は立派な側近だった」
「勿体ないお言葉でございます」
ライシードは涙は絶対に流さないと、噛み締めながら頭を下げた。
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