326 / 344
【テイラー】追想3
「皇帝としての資質がございますから」
「公爵家なら大丈夫だろう?」
「はい、公爵家の方はご立派な方ばかりです。ですが、私が知る限り、ディオエル様こそが皇帝陛下に相応しい方です」
純血種でも皇帝の資質は、番がいるいないで、判断できるものではない。ディオエルが皇帝であることは、望まれたことである。
人の上に立ち、頼もしい安心感というのは、天性のものである。
「そうか。それでも、私は沢山、間違えてしまった」
「それは」
「ライシードからは言い難いな、私は人として間違たんだ。もしも、あの世があるとするなら、アイルーン嬢とテイラー嬢に会えるなら、ちゃんと謝りたい。何のしがらみもなく、ただ謝りたい……」
亡くなれば、身分も関係ない。
周りにどのように思われるかも考えずに、そこまでしなくては平等に謝ることもできない。それは皇帝だからでもあり、責任があるからである。
「私は、私はテイラー嬢にミリオン王国で会って、話をされた時に、私は救われたと思ってしまったのです……」
「救われた?」
「はい、アイルーン様ではないのに、この方を守ればと考えてしまったのです」
驚きはしたが、やり直すチャンスが与えられたのだと、受け取ってしまった。
アイルーンが殺されたこと、辛かったことを聞くことができる。調べている間、寝る暇がなくても、辛くはなかった。
それよりも辛かったのは、事件の全貌が分かってからであった。
この皇帝宮で行われていたのに、気が付かなかった自分に腹が立った。ディオエルは自分以上だっただろうと思うと、苦しかった。
「間違いではないだろう」
「ですが、守れなかったのです」
「ライシードのせいではない」
アイルーンは貧血で辛い状況だったのかもしれないが、苦しむ姿を見ることはなかったが、テイラーについては痛ましい姿を目にすることになった。
無力な自分を、また守れなかった自分を、失格だと実感した。
「いいえ!テイラー嬢も、側近は犯人を見付けて、ディオエル様に突き出すべきだと……テイラー嬢の言葉がなければ、何もできなかったのです」
「その責任は私にある」
殺された被害者に話を聞くなど、皇帝としても、側近としても、恥でしかなかった。
それでも、18年も気付かなかった竜帝国としては、テイラーに縋るしかなく、本来ならあの時にいた全員に自白剤を使ってでも行うべきことであった。
「側近である資格がないのです」
「母君に怒られたか?」
「はい……お前は何をやっているのだ!立っているだけか?ふざけるなと」
ライシードの母は、結婚前は騎士団におり、側近になった後で、何かあったら盾くらいにはなりますからと言って来たほどの強い女性である。
それでも、ライシードのことは気は利かないが、素直な子だとも言っていた。
確かに素直なライシードは、ディオエルは羨ましいと思うこともあった。テイラーが謝ったのはライシードだけと言ったのも、頭を殴られるような思いであった。
「ライシードには負担を掛けたな」
「いいえ、そんなことはありません」
「次期皇帝はアンデュース・キュレシール公爵と話をしてある。ライシードにはまた側近として、助けてやって欲しいと思っている」
「私は、何度も間違えております。側近などと言える立場ではありません」
何度も辞めようかと思ったが、イオリクのせいで、自分も離れるわけにはいかないと、どうにかここまでやって来た。
「そんなことはない。お前は私に寄り添い、支えてくれた。感謝している」
「そのようなことはありません、私がもっとちゃんとしていたら、こんなことにはならなかったのです。申し訳ありません」
「そんなことはない、お前は立派な側近だった」
「勿体ないお言葉でございます」
ライシードは涙は絶対に流さないと、噛み締めながら頭を下げた。
「公爵家なら大丈夫だろう?」
「はい、公爵家の方はご立派な方ばかりです。ですが、私が知る限り、ディオエル様こそが皇帝陛下に相応しい方です」
純血種でも皇帝の資質は、番がいるいないで、判断できるものではない。ディオエルが皇帝であることは、望まれたことである。
人の上に立ち、頼もしい安心感というのは、天性のものである。
「そうか。それでも、私は沢山、間違えてしまった」
「それは」
「ライシードからは言い難いな、私は人として間違たんだ。もしも、あの世があるとするなら、アイルーン嬢とテイラー嬢に会えるなら、ちゃんと謝りたい。何のしがらみもなく、ただ謝りたい……」
亡くなれば、身分も関係ない。
周りにどのように思われるかも考えずに、そこまでしなくては平等に謝ることもできない。それは皇帝だからでもあり、責任があるからである。
「私は、私はテイラー嬢にミリオン王国で会って、話をされた時に、私は救われたと思ってしまったのです……」
「救われた?」
「はい、アイルーン様ではないのに、この方を守ればと考えてしまったのです」
驚きはしたが、やり直すチャンスが与えられたのだと、受け取ってしまった。
アイルーンが殺されたこと、辛かったことを聞くことができる。調べている間、寝る暇がなくても、辛くはなかった。
それよりも辛かったのは、事件の全貌が分かってからであった。
この皇帝宮で行われていたのに、気が付かなかった自分に腹が立った。ディオエルは自分以上だっただろうと思うと、苦しかった。
「間違いではないだろう」
「ですが、守れなかったのです」
「ライシードのせいではない」
アイルーンは貧血で辛い状況だったのかもしれないが、苦しむ姿を見ることはなかったが、テイラーについては痛ましい姿を目にすることになった。
無力な自分を、また守れなかった自分を、失格だと実感した。
「いいえ!テイラー嬢も、側近は犯人を見付けて、ディオエル様に突き出すべきだと……テイラー嬢の言葉がなければ、何もできなかったのです」
「その責任は私にある」
殺された被害者に話を聞くなど、皇帝としても、側近としても、恥でしかなかった。
それでも、18年も気付かなかった竜帝国としては、テイラーに縋るしかなく、本来ならあの時にいた全員に自白剤を使ってでも行うべきことであった。
「側近である資格がないのです」
「母君に怒られたか?」
「はい……お前は何をやっているのだ!立っているだけか?ふざけるなと」
ライシードの母は、結婚前は騎士団におり、側近になった後で、何かあったら盾くらいにはなりますからと言って来たほどの強い女性である。
それでも、ライシードのことは気は利かないが、素直な子だとも言っていた。
確かに素直なライシードは、ディオエルは羨ましいと思うこともあった。テイラーが謝ったのはライシードだけと言ったのも、頭を殴られるような思いであった。
「ライシードには負担を掛けたな」
「いいえ、そんなことはありません」
「次期皇帝はアンデュース・キュレシール公爵と話をしてある。ライシードにはまた側近として、助けてやって欲しいと思っている」
「私は、何度も間違えております。側近などと言える立場ではありません」
何度も辞めようかと思ったが、イオリクのせいで、自分も離れるわけにはいかないと、どうにかここまでやって来た。
「そんなことはない。お前は私に寄り添い、支えてくれた。感謝している」
「そのようなことはありません、私がもっとちゃんとしていたら、こんなことにはならなかったのです。申し訳ありません」
「そんなことはない、お前は立派な側近だった」
「勿体ないお言葉でございます」
ライシードは涙は絶対に流さないと、噛み締めながら頭を下げた。
あなたにおすすめの小説
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
大人しい令嬢は怒りません。ただ二年間、準備していただけです。――婚約解消の申請が受理されましたので、失礼いたします
柴田はつみ
恋愛
婚約者に、誕生日を忘れられた。
正確には、忘れられたわけではない。
エドワード・ヴァルト公爵はちゃんと覚えていた。
記念のディナーも、予約していた。
薔薇だって、一輪、用意していた。
ただ――幼馴染のクロエ・アンセル伯爵令嬢から使いが来た瞬間、全部置いて行ってしまっただけだ。
「すぐ戻る」
彼が戻ったのは、三時間後だった。
蝋燭は溶け切り、料理は冷え、ワインは乾いていた。
それでもリーゼロッテ・フォン・アルテンベルクは、笑顔で座って待っていた。
「ええ、大丈夫でございます。お気遣いなく」
完璧な微笑みで、完璧にそう言った。
さようなら、お別れしましょう
椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。
妻に新しいも古いもありますか?
愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?
私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。
――つまり、別居。
夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。
――あなたにお礼を言いますわ。
【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる!
※他サイトにも掲載しております。
※表紙はお借りしたものです。
【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです
唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。
すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。
「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて――
一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。
今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【残り数話を持ちまして3月29日完結!!】
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
【 お知らせ 】
先日、近況ボードにも
お知らせしました通り
2026年4月に
完結済みのお話の多数を
一旦closeいたします。
誤字脱字などを修正して
再掲載をするつもりですが
再掲載しない作品もあります。
再掲載の時期は決まっておりません。
表現の変更などもあり得ます。
他の作品も同様です。
ご了承いただけますようお願いいたします。
ユユ
【 お話の内容紹介 】
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり