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もう二度と
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「「申し訳ございませんでした」」
リックスとノラがロークロア公爵邸に謝罪にやって来て、二人で頭を下げている。許可なく勝手に手首を掴んで骨折させた、ノラの過失である。
「わざとではないんだな?」
「勿論です」
「公爵様が治されたのでしょうか」
「いや、この程度で治癒術を使うことはないと、全治4~6週間だそうだ」
「治してないの?」
「ああ、そうだ」
「直接、謝罪をさせて貰えませんか」
シュアンは執事にどうするか聞いて来て貰うように頼んだ。すると手首を固定され、痛々しい姿のミファラがやって来た。
「申し訳ございませんでした」「ごめんなさい」
「いえ、いずれ治りますから構いません」
ミファラは穏やかな表情のまま、気にする様子もなく答えた。
「どうして治して貰わないの?シュアンならすぐなのよ」
「この程度のことで、私のような者に使うことではないだけです」
「で、でも」
「お前が強要することではない!申し訳ございません。そして、妻が随分酷いことを申したようで、私の方からも謝罪させてください」
「酷いことなんて言われておりません。事実を仰っただけではありませんか?」
「ですが」
「醜いものを醜いということが、罪なのですか?」
部屋は静まり返り、まさか醜いと言ったのかという疑惑の目がノラに向けられる。
「私はそんなこと言っていないわ、嘘を言わないで」
「あなた様が醜いと言ったわけではありません。醜い者を見れば醜いと言うのは、当たり前ではないかということです」
ノラはホッとしたが、ミファラのただならぬ様子にリックスも気付いた。
まるで自分が価値のない、恥ずかしい、醜い存在だと言っているようなものだった。いや、おそらくそう思って言っているのだ。
「私が価値がないって言ったのは、あなたに生きる意味を持って欲しくて、敢えて言ったのよ」
「私はあなた様の様に生きる価値はありません、生きている意味もありません」
再びの静寂が訪れ、部屋に一気に重苦しい空気に包まれた。
「死にたくなったら、お酒を飲んで誤魔化しながら、毎日過ごしております。そんな人間、価値などないでしょう?だから、あなた様の仰った通りなのです。ですから、どうかお主人様も誤解なさらないでください」
「い、いや…」
「私は感謝しているのです」
ノラは自分に非がないと言ってくれたことには助かったが、シュアンと一緒にいる意味もないと言っているようで腹が立っていた。
「じゃあ言わせてもらうけど、ずっとそうやって生きていくつもりなの?」
「ノラ!!」
リックスはただならぬ様子にノラを止めようとしたが、ノラは止まらない。
「それしかないんです。何もなくなった人間には選択肢はありません。最初からなかったら良かったのにと思います」
「また作ればいいじゃないの!」
「作るとはどういうことでしょうか?」
「シュアンがいるじゃない!」
シュアンとこれから先のことを考えるべきじゃないか、男爵家の教育はどうなっているのか、だから下位貴族は駄目なのだと思っていた。
「公爵様は未来のある方です。未来ない者には関わることは出来ません」
「相応しくないっていうの?」
「あなた様が一番分かっているのではありませんか?お前でなければ良かったのに、お前みたいなのでは不満だと。あなた様のような方なら良かったのでしょうね、価値のある、素晴らしい方であればどんなに良かったか、そう思いませんか…」
「もういい…君に価値がないなどと私は思っていない。だからもう止めてくれ…」
ミファラが自分を蔑め蔑むほど、シュアンは苦しくなり、悲痛な叫びであった。
「シュアン!こういうことはハッキリ言った方がいいわ、男爵家の娘なら、公爵家の言うことを聞くべきだと!」
「ノラ!」
リックスは声を荒げたが、それよりもシュアンが酷く冷淡な声で答えた。
リックスとノラがロークロア公爵邸に謝罪にやって来て、二人で頭を下げている。許可なく勝手に手首を掴んで骨折させた、ノラの過失である。
「わざとではないんだな?」
「勿論です」
「公爵様が治されたのでしょうか」
「いや、この程度で治癒術を使うことはないと、全治4~6週間だそうだ」
「治してないの?」
「ああ、そうだ」
「直接、謝罪をさせて貰えませんか」
シュアンは執事にどうするか聞いて来て貰うように頼んだ。すると手首を固定され、痛々しい姿のミファラがやって来た。
「申し訳ございませんでした」「ごめんなさい」
「いえ、いずれ治りますから構いません」
ミファラは穏やかな表情のまま、気にする様子もなく答えた。
「どうして治して貰わないの?シュアンならすぐなのよ」
「この程度のことで、私のような者に使うことではないだけです」
「で、でも」
「お前が強要することではない!申し訳ございません。そして、妻が随分酷いことを申したようで、私の方からも謝罪させてください」
「酷いことなんて言われておりません。事実を仰っただけではありませんか?」
「ですが」
「醜いものを醜いということが、罪なのですか?」
部屋は静まり返り、まさか醜いと言ったのかという疑惑の目がノラに向けられる。
「私はそんなこと言っていないわ、嘘を言わないで」
「あなた様が醜いと言ったわけではありません。醜い者を見れば醜いと言うのは、当たり前ではないかということです」
ノラはホッとしたが、ミファラのただならぬ様子にリックスも気付いた。
まるで自分が価値のない、恥ずかしい、醜い存在だと言っているようなものだった。いや、おそらくそう思って言っているのだ。
「私が価値がないって言ったのは、あなたに生きる意味を持って欲しくて、敢えて言ったのよ」
「私はあなた様の様に生きる価値はありません、生きている意味もありません」
再びの静寂が訪れ、部屋に一気に重苦しい空気に包まれた。
「死にたくなったら、お酒を飲んで誤魔化しながら、毎日過ごしております。そんな人間、価値などないでしょう?だから、あなた様の仰った通りなのです。ですから、どうかお主人様も誤解なさらないでください」
「い、いや…」
「私は感謝しているのです」
ノラは自分に非がないと言ってくれたことには助かったが、シュアンと一緒にいる意味もないと言っているようで腹が立っていた。
「じゃあ言わせてもらうけど、ずっとそうやって生きていくつもりなの?」
「ノラ!!」
リックスはただならぬ様子にノラを止めようとしたが、ノラは止まらない。
「それしかないんです。何もなくなった人間には選択肢はありません。最初からなかったら良かったのにと思います」
「また作ればいいじゃないの!」
「作るとはどういうことでしょうか?」
「シュアンがいるじゃない!」
シュアンとこれから先のことを考えるべきじゃないか、男爵家の教育はどうなっているのか、だから下位貴族は駄目なのだと思っていた。
「公爵様は未来のある方です。未来ない者には関わることは出来ません」
「相応しくないっていうの?」
「あなた様が一番分かっているのではありませんか?お前でなければ良かったのに、お前みたいなのでは不満だと。あなた様のような方なら良かったのでしょうね、価値のある、素晴らしい方であればどんなに良かったか、そう思いませんか…」
「もういい…君に価値がないなどと私は思っていない。だからもう止めてくれ…」
ミファラが自分を蔑め蔑むほど、シュアンは苦しくなり、悲痛な叫びであった。
「シュアン!こういうことはハッキリ言った方がいいわ、男爵家の娘なら、公爵家の言うことを聞くべきだと!」
「ノラ!」
リックスは声を荒げたが、それよりもシュアンが酷く冷淡な声で答えた。
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