【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ

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馬鹿息子の再挑戦

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「殿下」

 エルドールは生徒会室で、オマリーに話し掛けられ、書類があるのかと思ったが、手には何も持っていなかった。距離は取ったがオマリーが書記には変わりないので、全く接点がなくなったわけではない。

 だが、必ずエルドールとカイロスが一緒、もしくは別の者も一緒にいるために、ボディタッチをして来ることはなくなった。

 前提として、エルドールとカイロスはオマリーから、恋愛の好意を感じたことがなかった。だからこそ、たまたまだったのか、わざとならば婚約者のいる相手に、男爵令嬢が行う意図が分からなかった。

「何だろうか?」
「手伝えることはないかと思いまして」
「いや、今のところはないかな。ありがとう」
「でも、沢山の辞書も抱えてらっしゃいますし、私で出来ることがあれば、お手伝いさせていただきたいと思いまして」
「いや、これは私的なことだから気にしなくていい」

 エルドールは解読をヨルレアンと話すきっかけにしようと、再度行うようになっていた。だが、大事な文献を学園には持ち込むことは出来ない。

 ヨルレアンも文献を持ち込んでいたのではなく、自身で書き写した物を持ち込んでいたので、文献ではない。ならばと同じように、書き写して持ち込んでいたが、全く進むことはなかった。

 生徒会室のエルドールの机には辞書が並ぶようになっていた。時間が空けば、見る様にしていたが、全く手応えはない。

「私的な事でも構いません、お手伝いさせてください」
「いや、大丈夫だ」

 勝手に見せるわけにはいかない上に、オマリー嬢に手伝ってもらう理由がない。

「…分かりました、何かあったら言ってください」
「ああ」

 オマリー嬢は成績優秀者であり、だがそれは男爵令嬢の中でという点もある。彼女よりも、優秀な女子生徒はいるのである。

 生徒会の一員を高位貴族で固めるのは、あまり良くないとされているので、慣例で下位貴族からも選ぶことになっている。

 勿論、選ばれても断ることも出来る。成績優秀者で居続けるために、勉強をしなければいけないということで、断る者も今回はいなかったが、過去にはいるそうだ。

 そして、婚約している男女を生徒会に選ぶことは、まずないとされており、ヨルレアンは元々、エルドールの婚約者ということで選ばれることはなかったが、そうではなかったとしても、断ったか、父上が入れることを止めただろう。

 時間を見付けては、エルドールは学園でも辞書を開いたり、部屋でも文献を読んだりしていたが、すぐに行き詰ってしまう。

「糸口も見付からないな…どうなっているんだ…」

 母にヨルレアンに会いたいと話しはしたが、忙しいから無理だと一蹴された。学園にも来ておらず、忙しいということは解読をしているということだろうと、引き下がるしかなかった。

 ならば、せめて間違っていたとしても、一行だけでも文にして、ヨルレアンに誠意を見せようと考えた。一切、学園に来ないために、随分顔すら見ていない。

 断ったにも関わらず、オマリーはエルドールの様子から、話しかけてくるようになってしまった。その日も、残っていたのは、エルドールとカイロスと、一部抜けがあったと書き直していたオマリーであった。

「殿下、何か訳されているのですか?」
「私的なことだから」
「訳すなら、何か手伝えると思うのです」

 訳すと言っていいのか、分からない代物だとは思っていないのだろう。

「いや、気持ちだけ貰っておくよ。今日の仕事が終わったなら、帰るといい」
「で、でも!」
「これは私が自分の力でやらなくてはならないことなんだ」
「そうなのですか…」
「ああ、だから気にしないでくれ」
「そうですか、分かりました…。そういえば、オズラール公爵令嬢は、お具合が悪いそうですね、大丈夫なのでしょうか」
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