17 / 131
馬鹿息子の再挑戦
しおりを挟む
「殿下」
エルドールは生徒会室で、オマリーに話し掛けられ、書類があるのかと思ったが、手には何も持っていなかった。距離は取ったがオマリーが書記には変わりないので、全く接点がなくなったわけではない。
だが、必ずエルドールとカイロスが一緒、もしくは別の者も一緒にいるために、ボディタッチをして来ることはなくなった。
前提として、エルドールとカイロスはオマリーから、恋愛の好意を感じたことがなかった。だからこそ、たまたまだったのか、わざとならば婚約者のいる相手に、男爵令嬢が行う意図が分からなかった。
「何だろうか?」
「手伝えることはないかと思いまして」
「いや、今のところはないかな。ありがとう」
「でも、沢山の辞書も抱えてらっしゃいますし、私で出来ることがあれば、お手伝いさせていただきたいと思いまして」
「いや、これは私的なことだから気にしなくていい」
エルドールは解読をヨルレアンと話すきっかけにしようと、再度行うようになっていた。だが、大事な文献を学園には持ち込むことは出来ない。
ヨルレアンも文献を持ち込んでいたのではなく、自身で書き写した物を持ち込んでいたので、文献ではない。ならばと同じように、書き写して持ち込んでいたが、全く進むことはなかった。
生徒会室のエルドールの机には辞書が並ぶようになっていた。時間が空けば、見る様にしていたが、全く手応えはない。
「私的な事でも構いません、お手伝いさせてください」
「いや、大丈夫だ」
勝手に見せるわけにはいかない上に、オマリー嬢に手伝ってもらう理由がない。
「…分かりました、何かあったら言ってください」
「ああ」
オマリー嬢は成績優秀者であり、だがそれは男爵令嬢の中でという点もある。彼女よりも、優秀な女子生徒はいるのである。
生徒会の一員を高位貴族で固めるのは、あまり良くないとされているので、慣例で下位貴族からも選ぶことになっている。
勿論、選ばれても断ることも出来る。成績優秀者で居続けるために、勉強をしなければいけないということで、断る者も今回はいなかったが、過去にはいるそうだ。
そして、婚約している男女を生徒会に選ぶことは、まずないとされており、ヨルレアンは元々、エルドールの婚約者ということで選ばれることはなかったが、そうではなかったとしても、断ったか、父上が入れることを止めただろう。
時間を見付けては、エルドールは学園でも辞書を開いたり、部屋でも文献を読んだりしていたが、すぐに行き詰ってしまう。
「糸口も見付からないな…どうなっているんだ…」
母にヨルレアンに会いたいと話しはしたが、忙しいから無理だと一蹴された。学園にも来ておらず、忙しいということは解読をしているということだろうと、引き下がるしかなかった。
ならば、せめて間違っていたとしても、一行だけでも文にして、ヨルレアンに誠意を見せようと考えた。一切、学園に来ないために、随分顔すら見ていない。
断ったにも関わらず、オマリーはエルドールの様子から、話しかけてくるようになってしまった。その日も、残っていたのは、エルドールとカイロスと、一部抜けがあったと書き直していたオマリーであった。
「殿下、何か訳されているのですか?」
「私的なことだから」
「訳すなら、何か手伝えると思うのです」
訳すと言っていいのか、分からない代物だとは思っていないのだろう。
「いや、気持ちだけ貰っておくよ。今日の仕事が終わったなら、帰るといい」
「で、でも!」
「これは私が自分の力でやらなくてはならないことなんだ」
「そうなのですか…」
「ああ、だから気にしないでくれ」
「そうですか、分かりました…。そういえば、オズラール公爵令嬢は、お具合が悪いそうですね、大丈夫なのでしょうか」
エルドールは生徒会室で、オマリーに話し掛けられ、書類があるのかと思ったが、手には何も持っていなかった。距離は取ったがオマリーが書記には変わりないので、全く接点がなくなったわけではない。
だが、必ずエルドールとカイロスが一緒、もしくは別の者も一緒にいるために、ボディタッチをして来ることはなくなった。
前提として、エルドールとカイロスはオマリーから、恋愛の好意を感じたことがなかった。だからこそ、たまたまだったのか、わざとならば婚約者のいる相手に、男爵令嬢が行う意図が分からなかった。
「何だろうか?」
「手伝えることはないかと思いまして」
「いや、今のところはないかな。ありがとう」
「でも、沢山の辞書も抱えてらっしゃいますし、私で出来ることがあれば、お手伝いさせていただきたいと思いまして」
「いや、これは私的なことだから気にしなくていい」
エルドールは解読をヨルレアンと話すきっかけにしようと、再度行うようになっていた。だが、大事な文献を学園には持ち込むことは出来ない。
ヨルレアンも文献を持ち込んでいたのではなく、自身で書き写した物を持ち込んでいたので、文献ではない。ならばと同じように、書き写して持ち込んでいたが、全く進むことはなかった。
生徒会室のエルドールの机には辞書が並ぶようになっていた。時間が空けば、見る様にしていたが、全く手応えはない。
「私的な事でも構いません、お手伝いさせてください」
「いや、大丈夫だ」
勝手に見せるわけにはいかない上に、オマリー嬢に手伝ってもらう理由がない。
「…分かりました、何かあったら言ってください」
「ああ」
オマリー嬢は成績優秀者であり、だがそれは男爵令嬢の中でという点もある。彼女よりも、優秀な女子生徒はいるのである。
生徒会の一員を高位貴族で固めるのは、あまり良くないとされているので、慣例で下位貴族からも選ぶことになっている。
勿論、選ばれても断ることも出来る。成績優秀者で居続けるために、勉強をしなければいけないということで、断る者も今回はいなかったが、過去にはいるそうだ。
そして、婚約している男女を生徒会に選ぶことは、まずないとされており、ヨルレアンは元々、エルドールの婚約者ということで選ばれることはなかったが、そうではなかったとしても、断ったか、父上が入れることを止めただろう。
時間を見付けては、エルドールは学園でも辞書を開いたり、部屋でも文献を読んだりしていたが、すぐに行き詰ってしまう。
「糸口も見付からないな…どうなっているんだ…」
母にヨルレアンに会いたいと話しはしたが、忙しいから無理だと一蹴された。学園にも来ておらず、忙しいということは解読をしているということだろうと、引き下がるしかなかった。
ならば、せめて間違っていたとしても、一行だけでも文にして、ヨルレアンに誠意を見せようと考えた。一切、学園に来ないために、随分顔すら見ていない。
断ったにも関わらず、オマリーはエルドールの様子から、話しかけてくるようになってしまった。その日も、残っていたのは、エルドールとカイロスと、一部抜けがあったと書き直していたオマリーであった。
「殿下、何か訳されているのですか?」
「私的なことだから」
「訳すなら、何か手伝えると思うのです」
訳すと言っていいのか、分からない代物だとは思っていないのだろう。
「いや、気持ちだけ貰っておくよ。今日の仕事が終わったなら、帰るといい」
「で、でも!」
「これは私が自分の力でやらなくてはならないことなんだ」
「そうなのですか…」
「ああ、だから気にしないでくれ」
「そうですか、分かりました…。そういえば、オズラール公爵令嬢は、お具合が悪いそうですね、大丈夫なのでしょうか」
4,857
あなたにおすすめの小説
筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
手放してみたら、けっこう平気でした。
朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。
そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。
だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。
天然と言えば何でも許されると思っていませんか
今川幸乃
恋愛
ソフィアの婚約者、アルバートはクラスの天然女子セラフィナのことばかり気にしている。
アルバートはいつも転んだセラフィナを助けたり宿題を忘れたら見せてあげたりとセラフィナのために行動していた。
ソフィアがそれとなくやめて欲しいと言っても、「困っているクラスメイトを助けるのは当然だ」と言って聞かず、挙句「そんなことを言うなんてがっかりだ」などと言い出す。
あまり言い過ぎると自分が悪女のようになってしまうと思ったソフィアはずっともやもやを抱えていたが、同じくクラスメイトのマクシミリアンという男子が相談に乗ってくれる。
そんな時、ソフィアはたまたまセラフィナの天然が擬態であることを発見してしまい、マクシミリアンとともにそれを指摘するが……
【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します
hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。
キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。
その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。
※ざまあの回には★がついています。
さよなら初恋。私をふったあなたが、後悔するまで
ミカン♬
恋愛
2025.10.11ホットランキング1位になりました。夢のようでとても嬉しいです!
読んでくださって、本当にありがとうございました😊
前世の記憶を持つオーレリアは可愛いものが大好き。
婚約者(内定)のメルキオは子供の頃結婚を約束した相手。彼は可愛い男の子でオーレリアの初恋の人だった。
一方メルキオの初恋の相手はオーレリアの従姉妹であるティオラ。ずっとオーレリアを悩ませる種だったのだが1年前に侯爵家の令息と婚約を果たし、オーレリアは安心していたのだが……
ティオラは婚約を解消されて、再びオーレリア達の仲に割り込んできた。
★補足:ティオラは王都の学園に通うため、祖父が預かっている孫。養子ではありません。
★補足:全ての嫡出子が爵位を受け継ぎ、次男でも爵位を名乗れる、緩い世界です。
2万字程度。なろう様にも投稿しています。
オーレリア・マイケント 伯爵令嬢(ヒロイン)
レイン・ダーナン 男爵令嬢(親友)
ティオラ (ヒロインの従姉妹)
メルキオ・サーカズ 伯爵令息(ヒロインの恋人)
マーキス・ガルシオ 侯爵令息(ティオラの元婚約者)
ジークス・ガルシオ 侯爵令息(マーキスの兄)
【完結】結婚しておりませんけど?
との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」
「私も愛してるわ、イーサン」
真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。
しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。
盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。
だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。
「俺の苺ちゃんがあ〜」
「早い者勝ち」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\
R15は念の為・・
良いものは全部ヒトのもの
猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。
ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。
翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。
一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。
『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』
憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。
自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる