運命だとは認めない

野村にれ

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再び4

「でも上手くいっていなかったと聞きました」
「誰に?メイファス殿がそう言っていたの?それともアリルール殿下が言ったの?殿下に会う機会があなたにあった?」
「いえ……噂で……」
「噂で子爵令嬢が公爵家と王家に驕った態度を取ったの?」
「それは……」

 アリレッサはどんどん頭を下げて行き、下を向いてしまったが、マイラナも二人の噂は聞いたが、誰も見たこともないはずなのにとしか思わなかった。

 おそらくメイファスが結婚したことで妬みもあり、姿を見せないアリルールのことを公ではないが、そうではないかという話に尾ひれがついたのだろう。

「どうしてそんな考えになったの?誰かに言われたの?」
「いえ……」
「本当のことを言いなさい。あなたが一人でこんなことを思い込んだの?」
「それは……後妻ならチャンスがあるのではないかと言われたことはありました」
「はあ……そのようなことに振り回されてどうするの。冷静に考えることも必要なことですよ」

 メイファスに思いを寄せていたことを知っていた同僚や友人に、初婚は無理でも後妻ならば伝えてみるのもいいのではないかと言われるようになった。

 アリルールとアリレッサで名前も少し似ていると、メイファスはアリ好きだと盛り上がったほどであった。

「でも早くしないと別の方と再婚されると思ったのです」
「それならば、せめて職場ではなく家同士で行うべきだったわね」

 マイラナも再婚するとしても、相手が王女殿下だったのだから、すぐにはないと思っていた。

 アリレッサの場合はそれでも叶わなかっただろうが、きちんとした手順を踏んで断られてしまえば、彼女も納得したのではないかと思った。

 そうしなかったからこそ、今でも一夜限りの相手と同じように扱われていたことを気付いていないのだろう。

「まずはお話をしてからと思ったのです……ご子息のこともあるでしょうから」

 自分から声を掛けるのは緊張してしまい、でも女性たちがまたメイファスに声を掛けるようになっており、あんな女性よりもと思うところがあり、ようやく思い切って声を掛けたがなかったことにされた。

 無理なのだと諦めようと思ったが、前に婚約をしていたことのあるポーリンクとの再婚の話が出て、どういうことなのかと思った。

 彼女が子どもが産めなかったからと離縁されたことをアリレッサは知っており、だから子どものいるメイファスなのかと、自分ならば子供だって産んであげられるのにと怒りすら湧いた。

 だが、自分よりも婚約をしていたのだから親しい相手で、騎士でもないことから再婚してしまうのではないかと思った。

 また何もできずに終わるのだと思ったが、しばらくしてどうやらそうではないと聞きホッとはしたが、再婚の話がなくなるわけではなかった。

 後悔するよりもと思い、もう一度メイファスをまずは食事に誘ってと思ったが、取り付く島もなかった。

「それもあなたが口を出すことではないわ」

 マイラナもアリレッサの時折滲む上から目線の発言に、自分は再婚相手として魅力的な相手だと思っていることが感じ取れた。

「ですが!先輩も騎士同士で結婚されているじゃないですか」
「そうね、それで騎士同士だったら上手くいくと思ったの?」

 まさか自分のことを言われるとは思っていなかったマイラナも少し動揺したが、都合のいい部分だけを良いように考えた結果なのかと、貴族令嬢だから色恋に疎いことは珍しくはないが、年齢を考えると幼さに心配になるほどであった。

「理解し合える部分は大きいと思ったのです」
「騎士同士だけだったらそうでしょうね。でもメイファス殿はモンカール公爵家の嫡男なのよ?分かっていたでしょう?」
「それは、はい……」
「あなたの人生のためにも冷静になったほうがいいわ」

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