36 / 38
皇女と王太子2
しおりを挟む
「どうしようもないですね、瞳もなんて言い出しそうですね」
「まあ、怖い。抉らるの?」
「幼い頃、殿下の瞳を羨ましい、私もあれが良かったなんて言っていましたよ」
その後で、『でも人形の目みたいで、生きていないみたい』という余計な一言を放っていた。
「あげられるものならすべて差し上げたかったけど、あの子は何も得られなかったでしょうね。だからこれで良かったのよ。で、王太子妃は決まりそう?」
「ちなみにアウラージュ王太子妃殿下に興味は?」
「リオン、あなた私が気付いていないと思っているの?私と揃いのドレスを着たがる可愛い子を」
「っななな!」
リオンは真っ赤になって、壁際に寄って行き、護衛たちが何かあったのかと、あたふたしてしまっている。リオンは胸に秘めただけで、誰にも言ったことはなかった。
ホワイトア公爵家とブラックア公爵家は仲が悪いわけではないが、交流はない。ホワイトアは王家の監視者、ブラックアは国の影、立場が違うからだ。
「ステフならいい妃になると思うけど、あなたをどう思っているかは知らないわ。さすがに色恋に口を出すのは性分じゃないもの」
ステフはブラックア公爵家のステファニーである。アウラージュは立場上、気配を気にしながら生きていた、ゆえに懐いてくれるステファニーが側にいるとリオンの視線に気付く。おそらく、兄・アルバートも気付いているだろう。
「ええ…ブラックア公爵家、怖いんですよ」
「そうかしら?おじ様も優しいじゃない」
「どこが!」
「えっ、皆には厳しいの?アルバートにだけだと思っていたけど」
ブラックア公爵は非常にアルバートに厳しい。後継者である以上、当たり前なのだが、ヒーヒー言っている。
「殿下は執事をように連れていますけどね、物凄く怖いんですよ!あと、騎士団長もですよ?気付いていないと思っていましたけど」
「えっ、騎士団長もなの?」
「そうですよ、威圧感で気絶すると言われています」
「しないわよ!人のいいおじ様じゃない」
「いやいや、殿下は幼い頃から知っているせいもあるでしょうけど、怖いんですよ。あとアルバートも!」
騎士団長は幼き頃のアウラージュ護衛であるため、怖いと思ったことは一度もない。当時の口癖は『もう、殿下~』『ちょっと休憩しましょうよ』であった。アルバートは友人なので、言わずもがな。
「えっ、アルバートも?」
「だからステファニー嬢になかなか近寄れなくて…」
「そうだったの、頑張りなさい!王太子殿下なんだから!ねっ!」
「ちょっと投げやりではありませんか」
「じゃあ、私の部屋、ステフにあげたら喜ぶかもしれないわよ?家具とかそのままにしてあるから、見に来ないかって誘ってみたら?」
「いいんですかぁ!ありがとうございます」
「でも、押し倒したりは駄目よ?」
「そんなことしませんよ」
リオンは涼しげで、卒なくこなすように見え、令嬢の人気も高かった。それが王太子となれば、さらに狙う者も多いだろうが、責任を持てる者でなければならない。その点、ステファニーなら申し分ないだろう。
アウラージュの前でリオンは元から今のような雰囲気だった。監視者としてわざとかと思っていたが、そうではなかったようだ。だが、国王陛下になる重圧を考えれば、その方がいいかもしれない。
きっと、アウラージュが降り、姿を消している間、戻らないと分かった時、ホワイトアとしての覚悟を徐々に決めただろう。角度が違うだけで、生まれ持ったという点ではアウラージュと同じではある。
でもきっといい王になることだろう。アウラージュはそう思っている。
「じゃあ、そろそろ行くわ。あと、アルバートも多分、気付いているわよ」
「えええ!別れ際に言うことですか~ちょっとぉ!」
「まあ、怖い。抉らるの?」
「幼い頃、殿下の瞳を羨ましい、私もあれが良かったなんて言っていましたよ」
その後で、『でも人形の目みたいで、生きていないみたい』という余計な一言を放っていた。
「あげられるものならすべて差し上げたかったけど、あの子は何も得られなかったでしょうね。だからこれで良かったのよ。で、王太子妃は決まりそう?」
「ちなみにアウラージュ王太子妃殿下に興味は?」
「リオン、あなた私が気付いていないと思っているの?私と揃いのドレスを着たがる可愛い子を」
「っななな!」
リオンは真っ赤になって、壁際に寄って行き、護衛たちが何かあったのかと、あたふたしてしまっている。リオンは胸に秘めただけで、誰にも言ったことはなかった。
ホワイトア公爵家とブラックア公爵家は仲が悪いわけではないが、交流はない。ホワイトアは王家の監視者、ブラックアは国の影、立場が違うからだ。
「ステフならいい妃になると思うけど、あなたをどう思っているかは知らないわ。さすがに色恋に口を出すのは性分じゃないもの」
ステフはブラックア公爵家のステファニーである。アウラージュは立場上、気配を気にしながら生きていた、ゆえに懐いてくれるステファニーが側にいるとリオンの視線に気付く。おそらく、兄・アルバートも気付いているだろう。
「ええ…ブラックア公爵家、怖いんですよ」
「そうかしら?おじ様も優しいじゃない」
「どこが!」
「えっ、皆には厳しいの?アルバートにだけだと思っていたけど」
ブラックア公爵は非常にアルバートに厳しい。後継者である以上、当たり前なのだが、ヒーヒー言っている。
「殿下は執事をように連れていますけどね、物凄く怖いんですよ!あと、騎士団長もですよ?気付いていないと思っていましたけど」
「えっ、騎士団長もなの?」
「そうですよ、威圧感で気絶すると言われています」
「しないわよ!人のいいおじ様じゃない」
「いやいや、殿下は幼い頃から知っているせいもあるでしょうけど、怖いんですよ。あとアルバートも!」
騎士団長は幼き頃のアウラージュ護衛であるため、怖いと思ったことは一度もない。当時の口癖は『もう、殿下~』『ちょっと休憩しましょうよ』であった。アルバートは友人なので、言わずもがな。
「えっ、アルバートも?」
「だからステファニー嬢になかなか近寄れなくて…」
「そうだったの、頑張りなさい!王太子殿下なんだから!ねっ!」
「ちょっと投げやりではありませんか」
「じゃあ、私の部屋、ステフにあげたら喜ぶかもしれないわよ?家具とかそのままにしてあるから、見に来ないかって誘ってみたら?」
「いいんですかぁ!ありがとうございます」
「でも、押し倒したりは駄目よ?」
「そんなことしませんよ」
リオンは涼しげで、卒なくこなすように見え、令嬢の人気も高かった。それが王太子となれば、さらに狙う者も多いだろうが、責任を持てる者でなければならない。その点、ステファニーなら申し分ないだろう。
アウラージュの前でリオンは元から今のような雰囲気だった。監視者としてわざとかと思っていたが、そうではなかったようだ。だが、国王陛下になる重圧を考えれば、その方がいいかもしれない。
きっと、アウラージュが降り、姿を消している間、戻らないと分かった時、ホワイトアとしての覚悟を徐々に決めただろう。角度が違うだけで、生まれ持ったという点ではアウラージュと同じではある。
でもきっといい王になることだろう。アウラージュはそう思っている。
「じゃあ、そろそろ行くわ。あと、アルバートも多分、気付いているわよ」
「えええ!別れ際に言うことですか~ちょっとぉ!」
1,284
あなたにおすすめの小説
覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
婚約破棄された令嬢のささやかな幸福
香木陽灯
恋愛
田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。
しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。
「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」
婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。
婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。
ならば一人で生きていくだけ。
アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。
「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」
初めての一人暮らしを満喫するアリシア。
趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。
「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」
何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。
しかし丁重にお断りした翌日、
「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」
妹までもがやってくる始末。
しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。
「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」
家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛
Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。
全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)
【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません
すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」
他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。
今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。
「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」
貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。
王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。
あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
【完結】完璧令嬢の『誰にでも優しい婚約者様』
恋せよ恋
恋愛
名門で富豪のレーヴェン伯爵家の跡取り
リリアーナ・レーヴェン(17)
容姿端麗、頭脳明晰、誰もが憧れる
完璧な令嬢と評される“白薔薇の令嬢”
エルンスト侯爵家三男で騎士課三年生
ユリウス・エルンスト(17)
誰にでも優しいが故に令嬢たちに囲まれる”白薔薇の婚約者“
祖父たちが、親しい学友であった縁から
エルンスト侯爵家への経済支援をきっかけに
5歳の頃、家族に祝福され結ばれた婚約。
果たして、この婚約は”政略“なのか?
幼かった二人は悩み、すれ違っていくーー
今日もリリアーナの胸はざわつく…
🔶登場人物・設定は作者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます✨
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる