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夫の帰館
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翌日、ようやく息を切らしたオーランドがトスター侯爵家にやって来た。服装も乱れた様子で、急いで戻って来たことは分かる。
「ユーリは…ユーリは…」
「ようやく戻ったか…」
「ユーリは?」
「グリメール墓地に埋葬されている…」
「どうして…」
「応接室で話そう。私も聞きたいことがある…」
父・マトムと応接室に移動すると、母・レイアがお茶を運んで来て、そのまま座った。人払いをしたようであった。
「事情は聞いたか?」
「はい、アベリーが大公家のお孫様に怪我をさせて、ユーリが毒を飲んで亡くなったと…聞きました。なぜそのようなことになったのですか!」
「邸には寄ったのか?」
「いいえ、寄らずにそのままこちらに来ました。本当に死んだのですか?」
「ああ、そうだ」
「どうしてユーリが…キリアムとメルベールが責任を取るべきだろう?」
キリアムとメルベールが領地に行った際には既にオーランドはおらず、知らせもそこまでは伝えてはいなかったのだろう。
「二人は領地に行っており、不在だったのだ。それでグラーフ伯爵がユーリを行かせたんだ」
「そういうことか、義父上が指示したんだな」
オーランドもユーリに義父があたりが強いことは知っている、だから実家にも侯爵家にもわざわざ行く必要はないと伝えていた。
「そうではないと言っているが、仕向けたとも言えることは確かだな…」
「大公家への謝罪は終わったと聞いたが、大丈夫だったのか?」
「許されたわけではない、これからアベリーを反省させて、十二になって修道院に入れて、ようやく反省を見せることが出来るだろう」
「王家も心配していたようで、大公閣下が帰られて、ようやく安心したと殿下もおっしゃっていました」
王家が介入することはなかったが、問題のある教育をしていると、トスター侯爵家もグラーフ伯爵家もの評価が下がったのは間違いないだろう。
「そして、ユーリは急死したことになっていると…」
「ああ、そうだ」
ユーリは大公閣下が指示したなどと思わせないためにも、なぜ亡くなったのかは公にされず、急死したことになっている。
「それで、お前は愛人がいるのか」
「は?」
「邸にお腹の膨らんだ女が来たそうだ」
「あり得ません」
「本当か?愛人もいないのか?不貞行為を犯していないと言えるか?」
結婚の約束をしていると、邸に女性が押し掛けて来たこともある。
「ユーリがその女に会ったのか」
「そうだ、執事に聞いてみるといい。ユーリは国の問題にさせないために過剰な責任を取ったのだと思ったが、お前に裏切られたこともあったんじゃないのか」
扱いの悪い父に、裏切った夫、毒を飲むことが出来るほど、追い詰めたのではないか。サイラ夫人もユーリはオーランドを待っていないと、不貞を犯した夫など待つはずがないと言ったそうだ。
正直、その通りだと思った。そんな夫を待つはずがない。
「…そんな」
「あなた言ったわよね、ユーリと結婚したいって、それなのにどうして…」
「大事にしていた…本当だ」
「愛人が押し掛けて来るような状態なのにか」
「確かに、何人か関係を持ったことはある。だが、遊びだ。避妊薬を飲んでいたし、子どもなんて作っていない」
「最低ね…いいわけなんて、もう何の意味もないわ」
もう弁解するべき相手であるユーリと話すことは出来ない。
「どこの女か知らないが、子どもの確認はしろ。妻が亡くなって、別の女に子を作っていたなどとなれば、問題になるぞ」
「あなたの子だったとしても要らないわ」
「…キリアムとメルベールは?」
「アベリーに毎日、話をしているようだけど、難しいわね…どうしてこんなことに」
「お前は自分の責任を取りなさい」
「…はい」
このまま墓地に行くことは憚られ、邸に戻り、執事に女性の話を聞くと、人相からおそらく前に一緒になった女性騎士だと分かった。
同級生で、既婚者であったはずだ。
「ユーリは…ユーリは…」
「ようやく戻ったか…」
「ユーリは?」
「グリメール墓地に埋葬されている…」
「どうして…」
「応接室で話そう。私も聞きたいことがある…」
父・マトムと応接室に移動すると、母・レイアがお茶を運んで来て、そのまま座った。人払いをしたようであった。
「事情は聞いたか?」
「はい、アベリーが大公家のお孫様に怪我をさせて、ユーリが毒を飲んで亡くなったと…聞きました。なぜそのようなことになったのですか!」
「邸には寄ったのか?」
「いいえ、寄らずにそのままこちらに来ました。本当に死んだのですか?」
「ああ、そうだ」
「どうしてユーリが…キリアムとメルベールが責任を取るべきだろう?」
キリアムとメルベールが領地に行った際には既にオーランドはおらず、知らせもそこまでは伝えてはいなかったのだろう。
「二人は領地に行っており、不在だったのだ。それでグラーフ伯爵がユーリを行かせたんだ」
「そういうことか、義父上が指示したんだな」
オーランドもユーリに義父があたりが強いことは知っている、だから実家にも侯爵家にもわざわざ行く必要はないと伝えていた。
「そうではないと言っているが、仕向けたとも言えることは確かだな…」
「大公家への謝罪は終わったと聞いたが、大丈夫だったのか?」
「許されたわけではない、これからアベリーを反省させて、十二になって修道院に入れて、ようやく反省を見せることが出来るだろう」
「王家も心配していたようで、大公閣下が帰られて、ようやく安心したと殿下もおっしゃっていました」
王家が介入することはなかったが、問題のある教育をしていると、トスター侯爵家もグラーフ伯爵家もの評価が下がったのは間違いないだろう。
「そして、ユーリは急死したことになっていると…」
「ああ、そうだ」
ユーリは大公閣下が指示したなどと思わせないためにも、なぜ亡くなったのかは公にされず、急死したことになっている。
「それで、お前は愛人がいるのか」
「は?」
「邸にお腹の膨らんだ女が来たそうだ」
「あり得ません」
「本当か?愛人もいないのか?不貞行為を犯していないと言えるか?」
結婚の約束をしていると、邸に女性が押し掛けて来たこともある。
「ユーリがその女に会ったのか」
「そうだ、執事に聞いてみるといい。ユーリは国の問題にさせないために過剰な責任を取ったのだと思ったが、お前に裏切られたこともあったんじゃないのか」
扱いの悪い父に、裏切った夫、毒を飲むことが出来るほど、追い詰めたのではないか。サイラ夫人もユーリはオーランドを待っていないと、不貞を犯した夫など待つはずがないと言ったそうだ。
正直、その通りだと思った。そんな夫を待つはずがない。
「…そんな」
「あなた言ったわよね、ユーリと結婚したいって、それなのにどうして…」
「大事にしていた…本当だ」
「愛人が押し掛けて来るような状態なのにか」
「確かに、何人か関係を持ったことはある。だが、遊びだ。避妊薬を飲んでいたし、子どもなんて作っていない」
「最低ね…いいわけなんて、もう何の意味もないわ」
もう弁解するべき相手であるユーリと話すことは出来ない。
「どこの女か知らないが、子どもの確認はしろ。妻が亡くなって、別の女に子を作っていたなどとなれば、問題になるぞ」
「あなたの子だったとしても要らないわ」
「…キリアムとメルベールは?」
「アベリーに毎日、話をしているようだけど、難しいわね…どうしてこんなことに」
「お前は自分の責任を取りなさい」
「…はい」
このまま墓地に行くことは憚られ、邸に戻り、執事に女性の話を聞くと、人相からおそらく前に一緒になった女性騎士だと分かった。
同級生で、既婚者であったはずだ。
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