私のバラ色ではない人生

野村にれ

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さようなら、お母様3

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「誰も花嫁の母のドレスなんて見てもいないし、覚えてもいないわよ」
「私なのよ?見ないわけないじゃない!ソアリスとは違うの!」
「ある意味、目立ったかもしれないわね」
「私は目を引くから仕方ないのよ!」

 参加することはなかったが、これだけ肥え太ったララシャが、若い頃と同じようなドレスを着ていたら、悪い意味で目立つことにはなっただろう。

 そんなものが新聞に載っていたら、クロンデール王国としても恥であった。

「でも、あなたの出席を、誰も望まなかったのでしょう?」
「結婚相手が言ったの?」
「知らないわよ。結婚とは家と家の結びつきですもの。貴方も公爵令嬢だったのだから、ご存知でしょう?」
「っでも、母親を大事に出来ない結婚なんて!駄目よ、そうよ、無効よ!」

 ララシャは渾身の大きな声で、叫んだ。

「ピデム王国王家、公爵家を敵に回せるの?あなたの力で?」
「お兄様!」

 すぐさま再びサイラスに向き、ララシャは涙目になりながら訴えた。

「ロアンスラー公爵家は、お前とはもう関係ない」
「でも、エミアンが迎えに来れないって。ロアンスラー公爵家から、抗議してよ!おかしいって!」
「抗議することはない。私たちはエミアンローズ殿下の結婚式に参加している」
「は?」

 ララシャはまるで、目が点という顔をして、サイラスを見つめていた。

「何で!何でお兄様が、私をどうして、どうして連れて行かなかったのよ!おかしいじゃない!私は母親なのよ!」
「招待されなかったからに決まっているだろう」
「は?」
「ララシャは招待されていない。私や両親は、エミアンローズ殿下の招待を受けたから参加した。それだけだ」

 ララシャは今日、初めて悲しい表情を浮かべていた。

「嘘でしょ……どうして私が……蔑ろにされなきゃいけないの……」

 それほどのことをしたからだと言っても、理解することはないために、誰も答えることはなかった。

「一人娘の結婚式に、出られないなんて……どうしてこんなことになったのよ、お兄様も酷いわ、私も連れて行ってくれれば良かったじゃない。そうすれば、エミアンは泣いて喜んだはずよ。ママがいなくて、辛い思いをしたんじゃないかしら……娘を悲しませるなんて」

 本当に手紙を読んだのかというような口振りで、悲劇のヒロインが始まっていた。

 だが、手紙を渡した後は、答えるべき部分は答えるが、エミアンローズについては私たちが答えることではないと、ソアリスは事前に皆に話してあった。

 だから、必要以上にララシャを説得するようなことは、誰も何も言わない。

 これはララシャが、娘であるエミアンローズの気持ちをきちんと受け止めるべきことである。

「エミアンに会わせて、ちゃんと話をしてあげなきゃいけないわ」
「手紙にはなんて書いてあったの?会いたいと書いてあるの?」
「もちろんよ」

 ソアリスは、手紙の中身を知っているというつもりはなかった。

「だったら、手紙を出せばいいじゃない。それで、約束をして、会えばいい」

 平民が他国の伯爵夫人に簡単に会えるものではない。だが、手紙を送ることを止める気はない。送られてきた手紙をエミアンローズが読むも読まないも、返事を書く書かないも決めればいい。

「そうね、そうするわ!」
「ええ」

 ソアリスはララシャの様子に、エミアンローズの写真を渡すべきか、悩んでいた。正直、会う前は写真くらいと思っていたが、渡さないことに決めた。

「今日はエミアンローズの手紙を渡すために呼んだの」
「すぐに渡してくれればいいじゃない!」
「そうね。でも私は今後、あなたに会うことはもうないから、最後に話しておこうと思ったのよ」
「最後?あなた病気なの?」

 ララシャはまたも、馬鹿にしたように小さく笑っていた。
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