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さようなら1
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「いいえ、あなたと違って健康よ」
「じゃあ、何よ」
「私は王妃、いずれ前王妃にはなるだろうけど、二度とあなたと会うことはないわ。これで、今生のお別れです」
ソアリスはララシャだけを見つめてはいたが、淡々と告げた。
アンセムもソアリスは一度決めたことは変えないだろうことは分かっているために、これで本当に顔を合わせるのは最後だろう。
だが、今日の話の場ですら、後悔するようなことはないと断言できる。
「は?そう言ったら、私が悲しむとでも思っているの?」
「思っていないわ、ただ事実を言っているだけよ」
もはや姉妹でも、道が重なることはなくなった二人は、普通に生活するだけでも、偶然会うことはない。
「別に構わないわ!私がエミアンに迎えに来てもらって、ピデム王国で優雅に暮らすのだから、あなたに会うこともなくなるわ」
まだそんなことを言っているのかと思うが、もはや本当に迎えに来ることのないエミアンローズを待ち続ければいい。
「さようなら、お姉様」
ソアリスは妹ではなく、王妃の顔で告げた。
わざとではなく妹の顔など、一緒に暮らしていた頃から、することがなかったと言った方が正しい。
一緒に遊んだこと、勉強を教えてもらったこと、楽しい会話すらなかった。
あるとすれば、一緒にお茶会を含め、食事をしたくらいだろうか。だが、それも食べ過ぎは事実なのでいいが、太り過ぎだと言われ続け、マルシャの体形も相まって、ソアリスに刷り込まれる結果になった。
姉らしいことをされたことは思い出しても、記憶になかった。
普通の姉はどんなことをするのか、それすらもソアリスは知らないまま、生きていっていた。優しい姉、意地悪をする姉、喧嘩する姉、色々話を聞くことはあったが、どれもララシャには当てはまらなかった。
姉ではないのかと、思うようになっていたのだろう。
「ええ!さようなら!お兄様、帰りましょう!」
ララシャはソアリスよりも、早くエミアンローズに手紙を書かなくてはならないと席を立ち、ソアリスも最後くらいドアまで送ろうと、立ち上がった。
「きちんと挨拶くらいしろ!」
最後の最後に我慢していたサイラスが、姉妹として終わりなら、せめて王妃陛下に挨拶をさせようと怒鳴り付けて、ララシャの頭を押さえて、ぐいーっと下げさせた。
「痛っ!やめてよ!何するのよ!」
「最後くらいちゃんとしろ」
ララシャはジタバタしていたが、それでも太っているだけで力のないサイラスに、抗えなかった。
だが、実は今まで怒鳴られることはあっても、ソアリスのように物理的に叩かれたり、頭を無理矢理下げさせられることもなかった。
初めての屈辱にララシャは、その怒りをソアリスに向けた。
目を吊り上げ、ソアリスの方に向かって来ると感じたが、ソアリスはいい機会だと思い、護衛に小さく制した。両手を上げて、走って来たララシャをソアリスは、素早い速さでしゃがみ込んで、片足を掴んだ。
すると、ララシャはバランスを崩し、前方に倒れ込んだ。
そこへソアリスは手を緩めることはなく、ララシャの背中にまるで椅子のように優雅に座った。
―ぐえっ、ぐふ
ララシャの潰れたような声がしたが、お構いなしに、左手で両手を押さえ、右腕を首を回し、素晴らしい手際であった。
皆、ただじっと見つめて、その様子を見ていた。
明らかに何度も行っている人間の手際であり、王家に入ってからはこのような事態になれば、アンセムの耳にも入ることから、おそらく学園だろうことも想像することができた。
これは陰の支配者ではなく、悪の親玉の姿ではないかと感慨深い気持ちになった。
「私がここで首を絞めるか、ナイフでも持っていたら、お前は死ぬぞ?あっけないな、こんなに簡単にやられて、恥ずかしくないのか?」
「っあ、あっあ、なっ」
椅子になったままのララシャは、くぐもった声で鳴いていた。
「じゃあ、何よ」
「私は王妃、いずれ前王妃にはなるだろうけど、二度とあなたと会うことはないわ。これで、今生のお別れです」
ソアリスはララシャだけを見つめてはいたが、淡々と告げた。
アンセムもソアリスは一度決めたことは変えないだろうことは分かっているために、これで本当に顔を合わせるのは最後だろう。
だが、今日の話の場ですら、後悔するようなことはないと断言できる。
「は?そう言ったら、私が悲しむとでも思っているの?」
「思っていないわ、ただ事実を言っているだけよ」
もはや姉妹でも、道が重なることはなくなった二人は、普通に生活するだけでも、偶然会うことはない。
「別に構わないわ!私がエミアンに迎えに来てもらって、ピデム王国で優雅に暮らすのだから、あなたに会うこともなくなるわ」
まだそんなことを言っているのかと思うが、もはや本当に迎えに来ることのないエミアンローズを待ち続ければいい。
「さようなら、お姉様」
ソアリスは妹ではなく、王妃の顔で告げた。
わざとではなく妹の顔など、一緒に暮らしていた頃から、することがなかったと言った方が正しい。
一緒に遊んだこと、勉強を教えてもらったこと、楽しい会話すらなかった。
あるとすれば、一緒にお茶会を含め、食事をしたくらいだろうか。だが、それも食べ過ぎは事実なのでいいが、太り過ぎだと言われ続け、マルシャの体形も相まって、ソアリスに刷り込まれる結果になった。
姉らしいことをされたことは思い出しても、記憶になかった。
普通の姉はどんなことをするのか、それすらもソアリスは知らないまま、生きていっていた。優しい姉、意地悪をする姉、喧嘩する姉、色々話を聞くことはあったが、どれもララシャには当てはまらなかった。
姉ではないのかと、思うようになっていたのだろう。
「ええ!さようなら!お兄様、帰りましょう!」
ララシャはソアリスよりも、早くエミアンローズに手紙を書かなくてはならないと席を立ち、ソアリスも最後くらいドアまで送ろうと、立ち上がった。
「きちんと挨拶くらいしろ!」
最後の最後に我慢していたサイラスが、姉妹として終わりなら、せめて王妃陛下に挨拶をさせようと怒鳴り付けて、ララシャの頭を押さえて、ぐいーっと下げさせた。
「痛っ!やめてよ!何するのよ!」
「最後くらいちゃんとしろ」
ララシャはジタバタしていたが、それでも太っているだけで力のないサイラスに、抗えなかった。
だが、実は今まで怒鳴られることはあっても、ソアリスのように物理的に叩かれたり、頭を無理矢理下げさせられることもなかった。
初めての屈辱にララシャは、その怒りをソアリスに向けた。
目を吊り上げ、ソアリスの方に向かって来ると感じたが、ソアリスはいい機会だと思い、護衛に小さく制した。両手を上げて、走って来たララシャをソアリスは、素早い速さでしゃがみ込んで、片足を掴んだ。
すると、ララシャはバランスを崩し、前方に倒れ込んだ。
そこへソアリスは手を緩めることはなく、ララシャの背中にまるで椅子のように優雅に座った。
―ぐえっ、ぐふ
ララシャの潰れたような声がしたが、お構いなしに、左手で両手を押さえ、右腕を首を回し、素晴らしい手際であった。
皆、ただじっと見つめて、その様子を見ていた。
明らかに何度も行っている人間の手際であり、王家に入ってからはこのような事態になれば、アンセムの耳にも入ることから、おそらく学園だろうことも想像することができた。
これは陰の支配者ではなく、悪の親玉の姿ではないかと感慨深い気持ちになった。
「私がここで首を絞めるか、ナイフでも持っていたら、お前は死ぬぞ?あっけないな、こんなに簡単にやられて、恥ずかしくないのか?」
「っあ、あっあ、なっ」
椅子になったままのララシャは、くぐもった声で鳴いていた。
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