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青い王子と雨の王冠

目覚め①

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 孤児院にある庭でたくさんの子供達が遊んでいる。その中で1人だけ庭の隅にいる小さな猫獣人の女の子。
 涙を堪えている女の子に、孤児院のシスターが静かに近寄った。

「ハフィ?また泣いているの?」

 うずくまっているハフィの頭をシスターは優しく撫でる。顔を上げたハフィは涙を堪えながらシスターに抱きついた。


「シスター。私はお母さんに会いたいよ。シスターは私を孤児院に置いて行ったお母さんと会ったんでしょ?どんな人だったか教えて!」

「…ごめんなさい。それは教えられないルールになっているの。」

 いつも通りのシスターの答えに、ハフィはとうとう顔をくしゃくしゃにして泣き出してしまう。シスターは困った顔をしながらも、ハフィを優しく抱きしめ返した。

「でもね。とても素敵な人だったわ。ハフィのことをとっても愛していたはずよ。」

「なら!ならどうしてハフィを置いて行ったの?どうしてハフィを1人にしたの?お母さんに会いたい!お母さんーー!」

 孤児院にいる子供の中には、定期的にお母さんが会いに来てくれる人もいる。家が貧しくて一時的に預けられている子もいるのだ。そんな子たちは、お母さんと手を繋いで笑顔で孤児院を出て行く。

 でもハフィは迎えに来てくれる人は誰もいない。ハフィには家族がいないから。


「ハフィも家族が欲しいよぉ。優しいお母さんとお父さんが欲しい!どうしてハフィにはいないの!」


 わんわんと泣き続けるハフィに気付いて数人の子供たちも集まってくる。

「またハフィが泣いてる。」

「お母さんに会いたいのか?」

「私たちが一緒にいてあげるから。」

「ほら泣くなよ。一緒におやつでも食べに行こう。」

 泣き続けるハフィの手を引いて、孤児院の子供達が建物の方へと向かって行く。

 そんな様子を微笑ましそうに見守っていたシスターは、子供達がいなくなると細く長いため息をついた。


「愛してる…か…。」


 突然ですが冷たい風が吹いてシスターは体を震わせる。遠くから名前を呼ばれ、シスターも建物へと向かっていった。








「うぅ…。」



 随分と昔の夢を見たような気がする。ハフィはうめき声を上げながらゆっくりと目を開けた。周りを見渡すと、そこは村雲のベッドの上だった。体を締め付けないゆってりとしたローブのような服を着せられて横たわっていたハフィは体を起こす。


「あ…。」


 気付けばベッドの周りで数人が眠り込んでいた。
 ベッドに上半身を預ける村雲。枕元の椅子に座る静間、少し離れたソファで横たわる善雨。



「起きてんだね、ハフィ。」




「ロミィさん。」




「おかえり。」


 そして宙をぷかぷかと浮いてハフィを見守っていたロミィ。ローブを脱いで笑顔を見せるロミィに、ハフィは満面の笑みで応えたのだった。
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