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第1部 ブルー王国編
第1部 おまけ 大将軍の重み
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これは、第1部本編が始まる数年前の話・・・・・
この大陸で、特に文化水準が高く歴史的に長く発展してきた地域を中央平原という。
その中央平原でも屈指の大国であるシルバー王国は、領土こそ広大だが、肥沃な穀倉地帯を持たず決して豊かな国となる条件を満たしていなかった。
ゲームっぽく言うと国土C
だが、それを補って余りあるのが強力なシルバー王国軍と、長年にわたって中央平原を暴れ回りシルバー王国を周辺最強国に押し上げた「常勝無敗」の大将軍シェーラの存在であった。
軍A
将軍SS
政治 B
大将軍シェーラはシルバー王国の建国より将軍として仕え、シルバー王国の誰よりも長く生き、誰よりも貢献してきた。
しかし、全身を黒で覆われた鎧で身を包んでおり、誰もその素顔を見たことがない。
数百年もの間、大将軍として君臨し長寿であることからその種族は、エルフ族ではないかとか魔族にちがいないとか、よもや龍族かも、とかさまざまな憶測がなされてきた。
しかし、もっとも大事なことは、大将軍シェーラによりシルバー王国は成り立ち、大将軍シェーラによりシルバー王国は栄え続けてきたと言う事実である。
実は、大将軍シェーラは爵位を持っていない。
身分は平民なのである。
もちろん歴代の王たちは爵位につくよう言ってきたが本人は固辞してきたのである。
加えて言うとシルバー王国は、文民統制(シビリアンコントロール)が行き届いており軍のおかげで成り立っているにもかかわらず、軍の立場が低い国でもあった。
なので、大将軍シェーラも王宮内では決して発言力のある立場とは言えないのである。
しかし王国民はそのようなことは知らず、建国の大英雄として絶大な人気を誇っている。
この矛盾は徐々にある収束点を迎えようとしていた。
(作者に代わってエクレアからの一言メモ)◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ちなみに、文民統制とは、文民たる政治家が軍隊の上に来て、軍の暴走をさせないと言う政治と軍部の関係を意味するものですわ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
シルバー王国には、大将軍しかいないのではない。むしろ積極的に将軍となりうる人材を育成してきた。
人族は致命的に寿命が短く力が弱い。しかし将軍は原則、人族から選ぶことにしている。
なぜならシルバー王国は人族を中心とする国であり他の種族に軍を掌握させないためである。
この処置は必然といえよう。
そして、隣国との間に大規模な会戦が起これば、積極的に将軍たちを同伴させ、経験を積ませようとししてきたのだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今回も相手が大軍を動員しシルバー王国の領土近くまで迫ってきたため軍を率いて出陣をした。
相手は宿敵ともいえる魔法国家プラチナ帝国である。
そして相手の軍はこちらより兵数が多いようであった。
大将軍シェーラは素早い軍の編成と行軍で予定よりも早く戦場に着くことができた。
しかしそれでも相手の軍はすでに戦場に到着し、陣を組んでいた。
大将軍シェーラとその幕僚はそれがよく見える小高い丘に本陣を置き、軍議を開く。
すると、大勢の兵士の移動による地鳴りがする。眼下に映るプラチナ帝国軍に動きがあったようだ。
これを目にした大将軍シェーラは、幕僚たる将軍らに問うた。
「ごらんなさい。相手軍に動きがあるでしょう。これに対しわが軍がとるべき行動はどうすべきか。諸兄らの考えを伺いましょう」
幕僚の将軍にとっては、大将軍シェーラの質問は全てが試験であり、訓練であり、修行ともいえた。
この試験にパスして初めて一軍を率いることがシェーラから許され、名実ともにこの国の将軍と名乗れるのだ。
まず第一将のジングートから口を開く。
「敵は到着して陣を整えたばかり。まだ、相手の出方が読めず、すぐに動くべきでないと判断します」
緊張しながらも堅実な考えを示した将軍は、いまいる将軍の中では一番の年長であり一番長くシェーラの側にいて研鑽をつんでいる智将である。
しかし、シェーラは答えを返さず沈黙したまま次を待った。
次は第ニ将のアカエールが意見を言った。
「とは言っても、着陣から陣組みまでもう半日は過ぎております。相手の出方や目的はまだハッキリとしていないことは認めますが」
と一度言葉を切り、
「ですが、相手に先手を取らせるぐらいなら、こちらから偵察用の小隊をだして相手の反応を見るというのも一つの手ではないでしょうか」
と、第一将よりも積極的な案を出した。
この案を出した第二将は年若く経験も浅いがそれを補って余りある軍才をもつ将軍だ。
武勇はもちろんだが天性のひらめきと動物的勘にすぐれ数年で第二将にまで駆け上がってきた傑物である。慎重ではあるが勇猛さとのバランスが良い。
「フン」
と鼻を鳴らし慇懃無礼に口を開いたのが第三将アルフレッド・エルマール。
「大将軍の幕では、敵を眼下においてこのように悠長におしゃべりをするのが通例なのでしょうか」
と暴言を吐いた第三将アルフレッドはこの会戦から将軍として選ばれ参加をしているので他の将軍と少し考えが違っている。
シルバー王国の政務一切を取り仕切る政務大臣エルマール公爵の次男だということもこの反抗的な態度を取らせる一因だろう。
この将軍はシェーラが選んだ将軍ではなく政務大臣が直接推薦し軍にねじ込んできたのである。
ゆえになにかにつけて鼻についたような話し方をし、こちらを見下す態度をとった。
「敵が目の前にいる。さらに、相手の軍に動きがあるにもかかわらず何もなさらないとは、失礼ながら、戦の素人のやり方ではございませんか」
第三将は自分の経験不足に自覚がないのかさらなる暴言を重ねた。
「ギリリッ」
第一将と第二将の歯ぎしりの音である。第三将アルフレッドをにらむだけで殺せるのではないかと思えるほど殺気を込めた目で睨んでいる。
しかし声は出さない。戦場で余計な感情を出さないよう躾けてきたシェーラの教育の賜物である。
「相手は、帝国内部の権力争いのあおりで出兵しただけであろう。士気に陰りがある」
「しかしなにもしないままでいれば士気に障りがあるので、小部隊を動かし敵である我らを釣ろうとしているのであろう。つまらぬ策だ」
大将軍シェーラはその圧倒的存在感とは裏腹にポツリといった小声でそう呟いたのだ。
「相手は、今日いっぱいは大きく動くまい。各自、テントで休むが良い」
そう言ってシェーラは、大将軍用の天幕へ戻っていった。それは同時に軍議の終わりをも意味していた。
第一将、第二将は、ともに背筋を整え、敬礼をしシェーラを見送ったが、第三将のアルフレッドだけは、下を向いてプルプルとふるえていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
第一将ジングートは、先ほどの軍議のあと大将軍シェーラが天幕へ戻るのを見届け、しばらく敵軍を観察していたが、確かに大きな動きはなかった。
大将軍シェーラの言う通りであった。
ジングートは大将軍シェーラへの尊敬と敬慕の思いを持ちつつ、大将軍の発した一言一言を復唱しながら自分のテントで休んでいた。
するとジングートのもとへ伝令兵が焦った様子で報告にやってきた。
「報告。第三将アルフレッド様が兵5000を率い本陣を離れたもよう。敵陣に向かったと思われます」
それを聞いたジングートは
「なんとバカな真似をするのだ!!シェーラ様の指示を無視してまで功績がほしいのか!」
と激しく憤った。軍内では、上の命令は絶対である。
それも百戦錬磨を誇る大将軍シェーラからの命令である。
その指示に間違いなどあろうはずもないうえに命令を無視してまで勝手に出陣するなどあり得ない行動だと言っていい。
場合によっては処刑されても文句は言えない。
それをたった5000の兵で敵陣に攻めるとはどういうつもりだ。
数では相手が圧倒的に多いのだ。
そもそもわが軍はプラチナ帝国軍よりも常に数に劣る。
それを大将軍の武力と巧みな戦術でようやく互角に渡り合ってきただけなのだ。
それを数も少なく大将軍抜きで出陣するなど度し難い行為だ。現実が見えていないのか頭が狂ったのか。
伝令兵の報告を聞きながら、ジングートは第三将アルフレッドがバカな真似をしたその動機について考えていた。
どうせ。
主導権争いのために功績が欲しいだけなのだろう。
ここで大手柄を立て軍内の立場を上げゆくゆくは父親のエルマール公爵とともに王国を政務と軍務の両方から牛耳ろうと考えているのだろう。
馬鹿なことを考えるものだ。
戦場は王宮内の政治ごっことはちがって油断をすれば自分の命が失われる場所なのだ。
シルバー王国は建国以来、危険な戦場はすべて大将軍シェーラが仕切り、そのおかげで常勝を誇っている。
ゆえに国民だけでなく王宮内の要人たちも戦争とは勝利するものだという愚かな先入観がついてしまっているのだ。
そうでなければ大切な我が子をあえて戦場に送り込むだろうか。
私や第二将のアカエールは、平民のそれも孤児だ。
平民の孤児が名を成し功を得ようとするならば軍に入るしかないのだ。
普通は命を散らしていくのだろうが、ここシルバー王国は大将軍シェーラ様の指導のもと、危険をおかさない方針のおかげで他国より格段に兵の死ぬ数が少ない。
私がこうして第一将という高い地位につけたのも大将軍シェーラ様のおかげ。
いやシルバー王国にいるものは大なり小なり必ず大将軍シェーラ様の恩恵を受けているのだ。
それをあのボンボンは。
考えているとムカムカしてきたジングートに伝令兵はさらに驚きの報告を伝えてきた。
「大将軍シェーラ様はすでに第三将アルフレッド様を追って手勢を引き連れ出陣なさいました!!」
その報告を聞いたジングートはさすがに開いた口が塞がらなかった。
「何だと。大将軍様はまだあのバカを救おうとされているのか」
「こうしていられない。直ちに大将軍様の後を追うぞ。誰か馬をひけ!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
アルフレッド率いる第三軍がプラチナ帝国軍の小部隊を射程内にとらえ、第三軍全軍で襲い掛かろうとしたところで周りから一斉に矢が降り注いだ。
気づけば林に囲まれた地形に誘導されており、弓兵を隠すにもってこいの場所だ。
小部隊を餌に釣られ教科書のお手本のような罠のかかり方をしたのだ。
この矢の嵐でアルフレッド自身も肩と足に矢を受け落馬し、もはやこれまでと観念した。
そのとき奥から怒号のような、地鳴りのようなものが聞こえたのだ。その音は徐々に近づいてくる。
すると遠くから真っ黒い得体のしれないものが矛を振りかざし敵を振り払いながらやってきたのだ。そのさまはまるで黒い竜巻のようであった。
その黒い竜巻のようなものは、
「シェーラである!!アルフレッド将軍はまだ息はあるか。あるなら急ぎこの死地を脱出するぞ!!!」
と叫び、アルフレッドは考える間もなく脇に抱えられ、大将軍シェーラ自らの働きによって助けられた。
この戦いはのちに、シェーラ大将軍の武勇を讃える英雄譚にもなったが、戦として総括するならば5000の兵はほぼ全滅し、シルバー王国でも近年稀に見る大敗北を喫したという結果だけが残った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「このような大層な戦果をのこした大将軍閣下にどのような罰を与えるべきでしょうかな。大将軍閣下」
皮肉めいた声でシェーラを責めているのは、シルバー王国政務大臣エルマール公爵。
政務大臣という職は王国を運営する会議では最も中心となる職である。
シルバー王国では、政務大臣、外務大臣、軍務卿、内務卿、法務卿らが中心となって重要なことを決定する会議を行い、王国を運営する体制をとっている。
シルバー王国では国王の権限は他国より小さい。せいぜいが会議の議長程度の権限しかない。
これを定めたのはもちろん大将軍シェーラである。
立憲君主制をとっており、国王をはじめ王族の責任を極力減らすことに成功した。
あと、軍務卿という役職は軍部全般を担当しているが、軍務卿は政務大臣の下に位置する役職である。
文民統制で軍をコントロールするためであった。
王国の法令上、政務は軍部の上に位置するので軍部のことであっても政務大臣が裁く権限を持っているのだ。
しかし実際に歴代政務大臣が軍部に干渉したことは一度もない。専門外だし、軍部には大将軍シェーラがいるからだ。
法的に可能でも今までそのようなことをしたものは国王を含めだれもいなかったのだ。
しかし、近年政務大臣についた野心家のエルマール公爵は違う。その権限を振りかざし、ことあるごとに軍務卿に命令を下し、軍部の弱体化を図ってきた。
そして王国最大の大物であり、最強の政敵である大将軍シェーラを責める材料が先の戦いで得られたのだ。
「あなたが総大将として臨んだ先の戦いで王国兵は5000の兵を失った。また、将軍1人が意識不明の状態でいる」
「この戦いでシルバー王国の威信は大いに下がったと言えよう。あなたには、この失敗の責任をとってもらう。私は政務大臣の権限を用いてあなたに国外追放の刑を与える!!」
エルマール公爵の発言を聞いた第二将のアカエールが野太い声で叫んだ。この会議には軍部の第二将まで参加を許されている。
「馬鹿な!!何を血迷ったことを言ってるんだ。エルマール公爵は!!」
それに勢いづくように第一将ジングートも発言した。努めて冷静な声で。
「そもそも大将軍様は待機を命じられていた。それを無視し第三将が勝手に第三軍を率いて出撃したのだ。これは明確な命令違反であり、第三将こそが処罰を受けるべきである」
「さらに言えば罠にはまった第三将を御自ら武勇をふるいて助けられたのだ。どこに大将軍の責めれられる罪があるというのか?」
ジングートの発言で場は大将軍を擁護する空気になってきた。その空気を敏感に感じ取ったジングートはさらに、
「また我が国は大将軍シェーラ閣下を中心に発展してきた国である。その大将軍を追放するとは、この国を潰すことと変わりない行為ぞ!!」
第35代国王ロンバムウ・シルバーナもこれには同感である。
しかしこの会議では、政務大臣エルマール公爵が大きな発言力をもつ。
国王ですらも議長程度の権限しかないので止める事は容易ではなかったのだ。
しかしだからといって大将軍の追放など到底受け入れられるべきものではない。
下手をすれば軍部が反乱を起こすかもしれない。
国王ロンバムウ・シルバーナが困り果てたその時、大将軍から驚きの提案があった。
「陛下並びに大臣の皆様方に置かれましては、将軍たる我の発言をお許しくださいますよう」
「まずこの戦争についての責任は総大将たる我の責任であり、その罪を重く受け止めます。よって政務大臣の提案する国外追放を受け入れます」
この発言に周りの大臣と将軍がざわめいた。
「そんな嘘だ!!」
「違う。逆だ。大将軍様が我らを見捨てたのだ!」
つづけて大将軍シェーラが発言する。
「それに加えて次の提案をいたします。不肖シェーラは、大将軍としてこの国と周囲の国々に大きな影響を長年にわたり及ぼして参りました」
「ここで私を追放したと発表することは、シルバー王国にとっても下策といえましょう」
「ですのでしばらくの間、大将軍は病気療養のため第一線から引かせるという発表をしてください」
さらに大将軍シェーラは国王ロンバムウ・シルバーナに向き直り、発言を続けた。
「陛下。もともと私とこの国との契約関係は50年前に終わりを告げております」
「ですが、先代、先々代の国王陛下より契約延長を懇願されてここまで来てしまいましたが、今回のことは契約を終了させる良い機会ではないでしょうか」
この発言には誰もが初耳のことであり、周囲も政務大臣も驚きを隠せなかった。
しかし、この発言はシルバー王国の権力を握ろうと考える政務大臣エルマール公爵に好都合である。
「ふはははは。これはたまげた。そうだな。契約が終了していたのなら、無理に大将軍殿を引き留められない。それこそ明確な契約違反であり処罰をうけるべき行為だ」
とちらりと第一将ジングートのほうをむいて皮肉めいた言い回しをした。
つづけて政務大臣エルマール公爵は、
「大将軍殿の提案を受け、大将軍シェーラ閣下はさきの戦いで傷をうけ具合がひどいためその療養をするという名目で領地にこもったことにする」
「しかし国外からは期限をもうけて出て行ってもらおう!!」
この強引な決定に対し国王をはじめ大将軍もだれも口を開かなった。
こうして、シルバー王国から建国の大忠臣である大将軍シェーラは追放されることになったのだ。
しかしこのことは徹底したかん口令を敷き誰にも知られないようにし、表向きは領地内で怪我の療養のため誰にも会わず静かにすごしていることになったのである。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
シルバー王国の後日談。
「なぜ、今回の交渉がうまくいかなかったのだ。あの国は我が国の傘の下でぬくぬくと守られてきた国。今までは、これぐらいの要求には応じたはず。上手くいかないのは外務大臣、そのほうの怠慢では無いのか!」
「恐れながら陛下。わが国は明らかに以前よりも軽く見られております」
「大将軍シェーラ様が戦場はもとより公式の場にも出なくなった影響が出始めているのでございます」
「うぐぐぐ、たとえそうであったにしても、我が国は中央平原屈指の大国であるぞ!」
「エルマール公爵殿。わが国は大将軍シェーラ様と言う強大な力の傘にいたのでございます」
「我が国が強大な武力を有しているから、他国は我が国に交渉の利を譲り、商人は我が国に大量の物資を流通させ、周りの小国は我が国の傘下に入りたがるのでございます」
「そして、その武力の大元は大将軍シェーラ様でごさいました。他の将軍では、まだまだ1段も2段も見おとりいたします」
「いま、表向きには病気療養中となっていますが、それでも以前のような圧力を我が国は失いました。これでもし大将軍シェーラ様がいないことが他国に知れたらどうなることか」
「これを補うには、我が国はもとより傘下の国から税を増やし、軍の増強をするしかありません。それでも以前の7割を維持できればいいほうでしょう」
それを聞いた政務大臣エルマール公爵は肩を震わせていた。
軍が増強される。それは政務を担当する自分の派閥の勢力が衰えることを意味する。
しかし、そうでもしなければ現状維持が難しいということがわかったからだ。
文官統制も大将軍シェーラがいればこそ軍部は従っていたのだ。そんなことすらも政務大臣エルマール公爵はわかっていなかった。
結局自分も大将軍シェーラの大きな手のなかであやされていただけの赤子であることに遅まきながら気づいた。
しかしもう手遅れだ。大将軍シェーラを追放したいま、どこにいるか所在がわからないでいるからだ。
・・・・・・この後シルバー王国は確実に国力を落としていくのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
時間をさかのぼる。
大将軍シェーラはシルバー王国を追放されたあと王国を身一つで出た。
そして国境沿いの山のふもとに辿り着いたとき、シェーラ、いや、シェラは
「すべて上手くいった。これでようやく麗しきご主人様を迎えに行くことができますわ」
と微笑みながらつぶやいた。しかしこのつぶやきは誰の耳にも入ることは無く消えていく。
シェラはシルバー王国を振り返ることなくはプラチナ帝国のほうへ歩いていった。
第1部 終わり
この大陸で、特に文化水準が高く歴史的に長く発展してきた地域を中央平原という。
その中央平原でも屈指の大国であるシルバー王国は、領土こそ広大だが、肥沃な穀倉地帯を持たず決して豊かな国となる条件を満たしていなかった。
ゲームっぽく言うと国土C
だが、それを補って余りあるのが強力なシルバー王国軍と、長年にわたって中央平原を暴れ回りシルバー王国を周辺最強国に押し上げた「常勝無敗」の大将軍シェーラの存在であった。
軍A
将軍SS
政治 B
大将軍シェーラはシルバー王国の建国より将軍として仕え、シルバー王国の誰よりも長く生き、誰よりも貢献してきた。
しかし、全身を黒で覆われた鎧で身を包んでおり、誰もその素顔を見たことがない。
数百年もの間、大将軍として君臨し長寿であることからその種族は、エルフ族ではないかとか魔族にちがいないとか、よもや龍族かも、とかさまざまな憶測がなされてきた。
しかし、もっとも大事なことは、大将軍シェーラによりシルバー王国は成り立ち、大将軍シェーラによりシルバー王国は栄え続けてきたと言う事実である。
実は、大将軍シェーラは爵位を持っていない。
身分は平民なのである。
もちろん歴代の王たちは爵位につくよう言ってきたが本人は固辞してきたのである。
加えて言うとシルバー王国は、文民統制(シビリアンコントロール)が行き届いており軍のおかげで成り立っているにもかかわらず、軍の立場が低い国でもあった。
なので、大将軍シェーラも王宮内では決して発言力のある立場とは言えないのである。
しかし王国民はそのようなことは知らず、建国の大英雄として絶大な人気を誇っている。
この矛盾は徐々にある収束点を迎えようとしていた。
(作者に代わってエクレアからの一言メモ)◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ちなみに、文民統制とは、文民たる政治家が軍隊の上に来て、軍の暴走をさせないと言う政治と軍部の関係を意味するものですわ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
シルバー王国には、大将軍しかいないのではない。むしろ積極的に将軍となりうる人材を育成してきた。
人族は致命的に寿命が短く力が弱い。しかし将軍は原則、人族から選ぶことにしている。
なぜならシルバー王国は人族を中心とする国であり他の種族に軍を掌握させないためである。
この処置は必然といえよう。
そして、隣国との間に大規模な会戦が起これば、積極的に将軍たちを同伴させ、経験を積ませようとししてきたのだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今回も相手が大軍を動員しシルバー王国の領土近くまで迫ってきたため軍を率いて出陣をした。
相手は宿敵ともいえる魔法国家プラチナ帝国である。
そして相手の軍はこちらより兵数が多いようであった。
大将軍シェーラは素早い軍の編成と行軍で予定よりも早く戦場に着くことができた。
しかしそれでも相手の軍はすでに戦場に到着し、陣を組んでいた。
大将軍シェーラとその幕僚はそれがよく見える小高い丘に本陣を置き、軍議を開く。
すると、大勢の兵士の移動による地鳴りがする。眼下に映るプラチナ帝国軍に動きがあったようだ。
これを目にした大将軍シェーラは、幕僚たる将軍らに問うた。
「ごらんなさい。相手軍に動きがあるでしょう。これに対しわが軍がとるべき行動はどうすべきか。諸兄らの考えを伺いましょう」
幕僚の将軍にとっては、大将軍シェーラの質問は全てが試験であり、訓練であり、修行ともいえた。
この試験にパスして初めて一軍を率いることがシェーラから許され、名実ともにこの国の将軍と名乗れるのだ。
まず第一将のジングートから口を開く。
「敵は到着して陣を整えたばかり。まだ、相手の出方が読めず、すぐに動くべきでないと判断します」
緊張しながらも堅実な考えを示した将軍は、いまいる将軍の中では一番の年長であり一番長くシェーラの側にいて研鑽をつんでいる智将である。
しかし、シェーラは答えを返さず沈黙したまま次を待った。
次は第ニ将のアカエールが意見を言った。
「とは言っても、着陣から陣組みまでもう半日は過ぎております。相手の出方や目的はまだハッキリとしていないことは認めますが」
と一度言葉を切り、
「ですが、相手に先手を取らせるぐらいなら、こちらから偵察用の小隊をだして相手の反応を見るというのも一つの手ではないでしょうか」
と、第一将よりも積極的な案を出した。
この案を出した第二将は年若く経験も浅いがそれを補って余りある軍才をもつ将軍だ。
武勇はもちろんだが天性のひらめきと動物的勘にすぐれ数年で第二将にまで駆け上がってきた傑物である。慎重ではあるが勇猛さとのバランスが良い。
「フン」
と鼻を鳴らし慇懃無礼に口を開いたのが第三将アルフレッド・エルマール。
「大将軍の幕では、敵を眼下においてこのように悠長におしゃべりをするのが通例なのでしょうか」
と暴言を吐いた第三将アルフレッドはこの会戦から将軍として選ばれ参加をしているので他の将軍と少し考えが違っている。
シルバー王国の政務一切を取り仕切る政務大臣エルマール公爵の次男だということもこの反抗的な態度を取らせる一因だろう。
この将軍はシェーラが選んだ将軍ではなく政務大臣が直接推薦し軍にねじ込んできたのである。
ゆえになにかにつけて鼻についたような話し方をし、こちらを見下す態度をとった。
「敵が目の前にいる。さらに、相手の軍に動きがあるにもかかわらず何もなさらないとは、失礼ながら、戦の素人のやり方ではございませんか」
第三将は自分の経験不足に自覚がないのかさらなる暴言を重ねた。
「ギリリッ」
第一将と第二将の歯ぎしりの音である。第三将アルフレッドをにらむだけで殺せるのではないかと思えるほど殺気を込めた目で睨んでいる。
しかし声は出さない。戦場で余計な感情を出さないよう躾けてきたシェーラの教育の賜物である。
「相手は、帝国内部の権力争いのあおりで出兵しただけであろう。士気に陰りがある」
「しかしなにもしないままでいれば士気に障りがあるので、小部隊を動かし敵である我らを釣ろうとしているのであろう。つまらぬ策だ」
大将軍シェーラはその圧倒的存在感とは裏腹にポツリといった小声でそう呟いたのだ。
「相手は、今日いっぱいは大きく動くまい。各自、テントで休むが良い」
そう言ってシェーラは、大将軍用の天幕へ戻っていった。それは同時に軍議の終わりをも意味していた。
第一将、第二将は、ともに背筋を整え、敬礼をしシェーラを見送ったが、第三将のアルフレッドだけは、下を向いてプルプルとふるえていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
第一将ジングートは、先ほどの軍議のあと大将軍シェーラが天幕へ戻るのを見届け、しばらく敵軍を観察していたが、確かに大きな動きはなかった。
大将軍シェーラの言う通りであった。
ジングートは大将軍シェーラへの尊敬と敬慕の思いを持ちつつ、大将軍の発した一言一言を復唱しながら自分のテントで休んでいた。
するとジングートのもとへ伝令兵が焦った様子で報告にやってきた。
「報告。第三将アルフレッド様が兵5000を率い本陣を離れたもよう。敵陣に向かったと思われます」
それを聞いたジングートは
「なんとバカな真似をするのだ!!シェーラ様の指示を無視してまで功績がほしいのか!」
と激しく憤った。軍内では、上の命令は絶対である。
それも百戦錬磨を誇る大将軍シェーラからの命令である。
その指示に間違いなどあろうはずもないうえに命令を無視してまで勝手に出陣するなどあり得ない行動だと言っていい。
場合によっては処刑されても文句は言えない。
それをたった5000の兵で敵陣に攻めるとはどういうつもりだ。
数では相手が圧倒的に多いのだ。
そもそもわが軍はプラチナ帝国軍よりも常に数に劣る。
それを大将軍の武力と巧みな戦術でようやく互角に渡り合ってきただけなのだ。
それを数も少なく大将軍抜きで出陣するなど度し難い行為だ。現実が見えていないのか頭が狂ったのか。
伝令兵の報告を聞きながら、ジングートは第三将アルフレッドがバカな真似をしたその動機について考えていた。
どうせ。
主導権争いのために功績が欲しいだけなのだろう。
ここで大手柄を立て軍内の立場を上げゆくゆくは父親のエルマール公爵とともに王国を政務と軍務の両方から牛耳ろうと考えているのだろう。
馬鹿なことを考えるものだ。
戦場は王宮内の政治ごっことはちがって油断をすれば自分の命が失われる場所なのだ。
シルバー王国は建国以来、危険な戦場はすべて大将軍シェーラが仕切り、そのおかげで常勝を誇っている。
ゆえに国民だけでなく王宮内の要人たちも戦争とは勝利するものだという愚かな先入観がついてしまっているのだ。
そうでなければ大切な我が子をあえて戦場に送り込むだろうか。
私や第二将のアカエールは、平民のそれも孤児だ。
平民の孤児が名を成し功を得ようとするならば軍に入るしかないのだ。
普通は命を散らしていくのだろうが、ここシルバー王国は大将軍シェーラ様の指導のもと、危険をおかさない方針のおかげで他国より格段に兵の死ぬ数が少ない。
私がこうして第一将という高い地位につけたのも大将軍シェーラ様のおかげ。
いやシルバー王国にいるものは大なり小なり必ず大将軍シェーラ様の恩恵を受けているのだ。
それをあのボンボンは。
考えているとムカムカしてきたジングートに伝令兵はさらに驚きの報告を伝えてきた。
「大将軍シェーラ様はすでに第三将アルフレッド様を追って手勢を引き連れ出陣なさいました!!」
その報告を聞いたジングートはさすがに開いた口が塞がらなかった。
「何だと。大将軍様はまだあのバカを救おうとされているのか」
「こうしていられない。直ちに大将軍様の後を追うぞ。誰か馬をひけ!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
アルフレッド率いる第三軍がプラチナ帝国軍の小部隊を射程内にとらえ、第三軍全軍で襲い掛かろうとしたところで周りから一斉に矢が降り注いだ。
気づけば林に囲まれた地形に誘導されており、弓兵を隠すにもってこいの場所だ。
小部隊を餌に釣られ教科書のお手本のような罠のかかり方をしたのだ。
この矢の嵐でアルフレッド自身も肩と足に矢を受け落馬し、もはやこれまでと観念した。
そのとき奥から怒号のような、地鳴りのようなものが聞こえたのだ。その音は徐々に近づいてくる。
すると遠くから真っ黒い得体のしれないものが矛を振りかざし敵を振り払いながらやってきたのだ。そのさまはまるで黒い竜巻のようであった。
その黒い竜巻のようなものは、
「シェーラである!!アルフレッド将軍はまだ息はあるか。あるなら急ぎこの死地を脱出するぞ!!!」
と叫び、アルフレッドは考える間もなく脇に抱えられ、大将軍シェーラ自らの働きによって助けられた。
この戦いはのちに、シェーラ大将軍の武勇を讃える英雄譚にもなったが、戦として総括するならば5000の兵はほぼ全滅し、シルバー王国でも近年稀に見る大敗北を喫したという結果だけが残った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「このような大層な戦果をのこした大将軍閣下にどのような罰を与えるべきでしょうかな。大将軍閣下」
皮肉めいた声でシェーラを責めているのは、シルバー王国政務大臣エルマール公爵。
政務大臣という職は王国を運営する会議では最も中心となる職である。
シルバー王国では、政務大臣、外務大臣、軍務卿、内務卿、法務卿らが中心となって重要なことを決定する会議を行い、王国を運営する体制をとっている。
シルバー王国では国王の権限は他国より小さい。せいぜいが会議の議長程度の権限しかない。
これを定めたのはもちろん大将軍シェーラである。
立憲君主制をとっており、国王をはじめ王族の責任を極力減らすことに成功した。
あと、軍務卿という役職は軍部全般を担当しているが、軍務卿は政務大臣の下に位置する役職である。
文民統制で軍をコントロールするためであった。
王国の法令上、政務は軍部の上に位置するので軍部のことであっても政務大臣が裁く権限を持っているのだ。
しかし実際に歴代政務大臣が軍部に干渉したことは一度もない。専門外だし、軍部には大将軍シェーラがいるからだ。
法的に可能でも今までそのようなことをしたものは国王を含めだれもいなかったのだ。
しかし、近年政務大臣についた野心家のエルマール公爵は違う。その権限を振りかざし、ことあるごとに軍務卿に命令を下し、軍部の弱体化を図ってきた。
そして王国最大の大物であり、最強の政敵である大将軍シェーラを責める材料が先の戦いで得られたのだ。
「あなたが総大将として臨んだ先の戦いで王国兵は5000の兵を失った。また、将軍1人が意識不明の状態でいる」
「この戦いでシルバー王国の威信は大いに下がったと言えよう。あなたには、この失敗の責任をとってもらう。私は政務大臣の権限を用いてあなたに国外追放の刑を与える!!」
エルマール公爵の発言を聞いた第二将のアカエールが野太い声で叫んだ。この会議には軍部の第二将まで参加を許されている。
「馬鹿な!!何を血迷ったことを言ってるんだ。エルマール公爵は!!」
それに勢いづくように第一将ジングートも発言した。努めて冷静な声で。
「そもそも大将軍様は待機を命じられていた。それを無視し第三将が勝手に第三軍を率いて出撃したのだ。これは明確な命令違反であり、第三将こそが処罰を受けるべきである」
「さらに言えば罠にはまった第三将を御自ら武勇をふるいて助けられたのだ。どこに大将軍の責めれられる罪があるというのか?」
ジングートの発言で場は大将軍を擁護する空気になってきた。その空気を敏感に感じ取ったジングートはさらに、
「また我が国は大将軍シェーラ閣下を中心に発展してきた国である。その大将軍を追放するとは、この国を潰すことと変わりない行為ぞ!!」
第35代国王ロンバムウ・シルバーナもこれには同感である。
しかしこの会議では、政務大臣エルマール公爵が大きな発言力をもつ。
国王ですらも議長程度の権限しかないので止める事は容易ではなかったのだ。
しかしだからといって大将軍の追放など到底受け入れられるべきものではない。
下手をすれば軍部が反乱を起こすかもしれない。
国王ロンバムウ・シルバーナが困り果てたその時、大将軍から驚きの提案があった。
「陛下並びに大臣の皆様方に置かれましては、将軍たる我の発言をお許しくださいますよう」
「まずこの戦争についての責任は総大将たる我の責任であり、その罪を重く受け止めます。よって政務大臣の提案する国外追放を受け入れます」
この発言に周りの大臣と将軍がざわめいた。
「そんな嘘だ!!」
「違う。逆だ。大将軍様が我らを見捨てたのだ!」
つづけて大将軍シェーラが発言する。
「それに加えて次の提案をいたします。不肖シェーラは、大将軍としてこの国と周囲の国々に大きな影響を長年にわたり及ぼして参りました」
「ここで私を追放したと発表することは、シルバー王国にとっても下策といえましょう」
「ですのでしばらくの間、大将軍は病気療養のため第一線から引かせるという発表をしてください」
さらに大将軍シェーラは国王ロンバムウ・シルバーナに向き直り、発言を続けた。
「陛下。もともと私とこの国との契約関係は50年前に終わりを告げております」
「ですが、先代、先々代の国王陛下より契約延長を懇願されてここまで来てしまいましたが、今回のことは契約を終了させる良い機会ではないでしょうか」
この発言には誰もが初耳のことであり、周囲も政務大臣も驚きを隠せなかった。
しかし、この発言はシルバー王国の権力を握ろうと考える政務大臣エルマール公爵に好都合である。
「ふはははは。これはたまげた。そうだな。契約が終了していたのなら、無理に大将軍殿を引き留められない。それこそ明確な契約違反であり処罰をうけるべき行為だ」
とちらりと第一将ジングートのほうをむいて皮肉めいた言い回しをした。
つづけて政務大臣エルマール公爵は、
「大将軍殿の提案を受け、大将軍シェーラ閣下はさきの戦いで傷をうけ具合がひどいためその療養をするという名目で領地にこもったことにする」
「しかし国外からは期限をもうけて出て行ってもらおう!!」
この強引な決定に対し国王をはじめ大将軍もだれも口を開かなった。
こうして、シルバー王国から建国の大忠臣である大将軍シェーラは追放されることになったのだ。
しかしこのことは徹底したかん口令を敷き誰にも知られないようにし、表向きは領地内で怪我の療養のため誰にも会わず静かにすごしていることになったのである。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
シルバー王国の後日談。
「なぜ、今回の交渉がうまくいかなかったのだ。あの国は我が国の傘の下でぬくぬくと守られてきた国。今までは、これぐらいの要求には応じたはず。上手くいかないのは外務大臣、そのほうの怠慢では無いのか!」
「恐れながら陛下。わが国は明らかに以前よりも軽く見られております」
「大将軍シェーラ様が戦場はもとより公式の場にも出なくなった影響が出始めているのでございます」
「うぐぐぐ、たとえそうであったにしても、我が国は中央平原屈指の大国であるぞ!」
「エルマール公爵殿。わが国は大将軍シェーラ様と言う強大な力の傘にいたのでございます」
「我が国が強大な武力を有しているから、他国は我が国に交渉の利を譲り、商人は我が国に大量の物資を流通させ、周りの小国は我が国の傘下に入りたがるのでございます」
「そして、その武力の大元は大将軍シェーラ様でごさいました。他の将軍では、まだまだ1段も2段も見おとりいたします」
「いま、表向きには病気療養中となっていますが、それでも以前のような圧力を我が国は失いました。これでもし大将軍シェーラ様がいないことが他国に知れたらどうなることか」
「これを補うには、我が国はもとより傘下の国から税を増やし、軍の増強をするしかありません。それでも以前の7割を維持できればいいほうでしょう」
それを聞いた政務大臣エルマール公爵は肩を震わせていた。
軍が増強される。それは政務を担当する自分の派閥の勢力が衰えることを意味する。
しかし、そうでもしなければ現状維持が難しいということがわかったからだ。
文官統制も大将軍シェーラがいればこそ軍部は従っていたのだ。そんなことすらも政務大臣エルマール公爵はわかっていなかった。
結局自分も大将軍シェーラの大きな手のなかであやされていただけの赤子であることに遅まきながら気づいた。
しかしもう手遅れだ。大将軍シェーラを追放したいま、どこにいるか所在がわからないでいるからだ。
・・・・・・この後シルバー王国は確実に国力を落としていくのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
時間をさかのぼる。
大将軍シェーラはシルバー王国を追放されたあと王国を身一つで出た。
そして国境沿いの山のふもとに辿り着いたとき、シェーラ、いや、シェラは
「すべて上手くいった。これでようやく麗しきご主人様を迎えに行くことができますわ」
と微笑みながらつぶやいた。しかしこのつぶやきは誰の耳にも入ることは無く消えていく。
シェラはシルバー王国を振り返ることなくはプラチナ帝国のほうへ歩いていった。
第1部 終わり
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