24 / 61
第2部 プラチナ帝国公爵領編
第11話
しおりを挟む「イオニア、ただいま戻りましてございます」
転移魔法で姿を現したイオニアは僕の顔をみてにこやかな笑みを浮かべあいさつをした。
「おかえりイオニア。あちらは大丈夫だったかい。アプリコット公爵さまはぶじだったろうか」
と僕は聞いた。
「はい。すべて元通りにしてまいりましたので無事なはずでございます。それよりも5分もお側を離れてしまったことをお詫びしたく、どうかこの愚かでのろまなわたくしめに罰をお与えくださいませ」
と顔を伏せて僕にいう。
いやいや、たった5分じゃない。とか公爵を助けに行ってくれといったのは僕だしとかそもそもなんで罰を与えてないといけないのかとか。
あいかわらずツッコミどころが多すぎてキャパオーバーしてしまいしばらく僕は呆けてしまった。
僕が何か言わないと話が進まないので、
「もう、いいから顔を上げて普通にしてよ。あと、イオニア、よくやってくれた。ありがとう」
とイオニアに労いの言葉をかけた。
さて、もうここの用事は済んだはずだ。
帝都に向かい、公爵様やクリムソン様に事の次第を報告するまでが仕事だと思い、僕は帝都に向かう準備をした。
僕と従者3人は一路、帝都にむけて出発した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
内務省長官タンジェリン・マゼンタ公爵である。
あの悪夢のような襲撃の日から数日が経った。
プラチナ帝国とシルバー王国の停戦協定は無事に調印され、同盟国同士となった。
皇帝宮の大広間で要人たちが一同にあつまったなかでおきた邪神なるものの襲撃は失敗におわったが首謀者を見つけ出さなければならない。
いま、その捜索がおわりあらかた捕縛を終えたところだ。
今回のことで6大公爵のうち“黄”と“青”が反対派としてこの一連の騒動を計画し、あわよくば皇帝を殺害し帝国を乗っ取ろうとしていたことが明るみに出た。
実際に大魔導士イオニーア様がいなければ間違いなくあの場にいた者たち全員の命はなかったであろう。
あの邪神は“黄”の公爵家が長年封印の管理をしてきた魔物であった。
それをパンジー・マリーゴールドが封印を解きあの場に呼び出したということがわかったのだ。
パンジー・マリーゴールドは取り調べでも抵抗することなく淡々と自分のしたことを話したらしい。
もともと協定に興味がなかったこと。
“青”の公爵から計画に加担してほしい旨の依頼があったこと。
最初は断ったが、研究の予算を削られるかもしれないと思ったこと。
そして大魔導士イオニーア様がすでに我が国にいないことを聞いてショックだったこと。
しかし邪神を復活させれば大魔導士イオニーア様が私たちを助けるため姿を見せてくれるかもしれないと思ったこと。
これらのことを話したとか。
また今回の調査で驚いたことは、反対派は大魔導士イオニーア様がこの国からいなくなっていたことを知っていて計画をしたということだ。
常識で考えれば大魔導士イオニーア様がいないと戦争で勝てないから同盟を結ぼうと考えるはずだが、“青”の公爵は逆に皇帝の座を奪う好機ととらえたそうだ。
“青”の公爵は現皇帝の叔父、つまり、先代皇帝陛下の弟にあたる。
自分たちにも皇帝の座につく資格があると思っていたそうだ。
愚かなことだ。
そして大魔導士イオニーア様がかつて封印し、“黄”の公爵家に封印の管理を任せていた邪神を利用することを考えたのだろう。
“黄”の公爵パンジー・マリーゴールドのイオニーア様への思いを利用して・・・・・。
あのあと、大魔導士イオニーア様の捜索をこころみたが、転移魔法を使ったのでどこへ移動したかはつかめなかった。
「わしらは、やはり見捨てられたのかもしれぬな・・・。」
誰に・・・という言葉は言えない。
この事件の全容をあばく調査をしていた内務省長官タンジェリン・マゼンタ“赤”の公爵は、やりきれない思いが胸に充満し、吐き出したくなる気持ちを抑えるのであった。
そこへ、一人の騎士爵がエボニー砦の伝令をもってきたという知らせが入った。
「騎士爵が伝令・・・・?」
伝令は重要ではあるが通常は平民の兵士が任務にあたる。長時間を速く移動する必要があるため重労働にあたるからだ。
「それだけ重要な知らせをもってきたのか??」
内務省長官タンジェリン・マゼンタはひとり疑問に思うのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
内務省長官タンジェリン・マゼンタをまえにして意気揚々と報告をする者がいる。
「自分はエボニー砦の守将フロスティ・ジャスパー騎士爵と申すもの、重要な内容なので自ら帝都に報告に来た次第であります」
「エボニー砦はシルバー王国から5000もの大軍で奇襲をうけたため全滅いたしました。私も最後まで敵と戦い砦を枕に果てる所存でございましたが、事の次第を報告する義務があると勇敢なる部下にさとされ、身を切り刻む思いで伝令に参った次第であります」
内務省長官タンジェリン・マゼンタは目を細め、
「ほう・・・・興味深い報告だ・・・・・。エボニー砦については今朝がた別の伝令から報告を受けている」
「エボニー砦の勝利という報告をな」
と静かに言った言葉にフロスティ・ジャスパー騎士爵は目を見開いて驚いた。
「そんな馬鹿な!!何かの間違いです!5000ですよ。500の兵士で太刀打ちできるものではありません。誤報ですよ」
と目を向いて叫ぶが、内務省長官タンジェリン・マゼンタはそれに答えず、
「うむ。詳しいことはわからない。精査して事に当たらねばな。兵士の中にはうれしくて錯乱しているものもいるようで、かの大将軍シェーラが現れたというものまでいるとか」
「はあ?あのシルバー王国のですか??」
「それぐらい現場は混乱しているのだろう。劇的な大勝利にな。本来なら守将にあたるものがその混乱を鎮めるべきだと思うがな」
と軽く皮肉を言われ、フロスティ・ジャスパー騎士爵は心の中でヤバイと感じた。
そのとき、別のものからの伝令がとどいた。
「いま、アプリコット様の家臣でエボニー砦で勝利に導いたというものが戻られました。お会いになりますか」
それを聞いてフロスティ・ジャスパー騎士爵はまた驚いている。
「会おう。通してくれ。会わせたいものもいるし」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
僕は3人の従者とともに帝都の宮殿に入り、所属と来訪の目的を伝えた。
すぐさま、この国の内政を取り仕切っている内務省長官タンジェリン・マゼンタ公爵のいる執務室へ案内された。
ちょうどそのときアプリコット公爵の嫡男であるクリムソン様も執務室に入ってきた。
「クリムソン様、おいいつけの件、無事に任務を終えましてございます」
と言うとクリムソン様は笑顔で、
「うん。このたびのことは聞いている。よくやってくれた。アプリコット家としても帝国に大きな貸しをつくることができた。よくやった」
とほめてくれた。そのとき、一人の男が大きな声で僕に問いただした。
「おまえは何の権限でエボニー砦の指揮をとったのだ。これは立派な軍法違反だ。わしはだれにも指揮権をゆずっておらんぞ!!!!」
その場にいる僕をふくめて全員が一斉に発言した人物のほうへ振り向く。
「私はエボニー砦の守将をプラチナ帝国軍から任命されている者だ。故にわししかあの砦の兵士を指揮することは許されておらん」
とフロスティ・ジャスパー騎士爵は前半は僕にむかって忌々しげな表情でいい、
「これはプラチナ帝国軍軍法に明記されていることでございますよね。ね」
と媚びるような表情で内務省長官タンジェリン・マゼンタ公爵に向かって言った。
さらに、
「もしやあれか・・・・・あのことか・・・・あれをもってわしから指揮権を譲られたと勘違いしておるのか?」
と意地悪い顔で僕に言い放つ。
「あのとき、おまえはわしにアプリコット公爵の命令で動いている証拠としてアプリコット家の紋章をこれみよがしに見せびらかし、わしを従わせようとしたな」
「公爵の権威をかさにきて、守将たるわしにすらこのような振る舞いをするものがこの砦にいたら、勝てる戦いも勝てなくなると判断しわしは帝都へやむなく報告に行ったのだ」
フロスティ・ジャスパー騎士爵はタンジェリン・マゼンタ公爵に向きなおして
「さきほど私めが伝えた伝令の内容はですな、エボニー砦の軍としての秩序はまるで5000の大軍に奇襲をうけて全滅したようなもの。とそう言いたかったのでございますな。ウハハハハハ」
と自分を正当化する主張を平然と吐いていた。
64
あなたにおすすめの小説
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜
くまみ
ファンタジー
前世は空手部主将の「ゴリラ」男。転生先は……筋力Eのひ弱な少年治癒士!?
「資質がなんだ!俺の拳は魔法を超える!……と、思うけど……汗」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は五里羅門(ごり・らもん) 35歳独身男だ。硬派すぎて女が寄り付かず。強すぎる空手愛と鍛え抜かれた肉体のせいで不本意ながら通称「ゴリラ」と呼ばれていた。
仕事帰りにダンプに跳ねられた俺が目覚めると、そこは異世界だった。だが転生した姿は前世とは真逆。
病弱で華奢。戦闘力最低と言われる職業の「治癒士」(ヒーラー)適正の10歳の少年・ノエル。
「俺は戦闘狂だぞ!このひ弱な体じゃ、戦えねぇ!
「華奢でひ弱な体では、空手技を繰り出すのは夢のまた夢……」
魔力と資質が全てのこの世界。努力では超えられない「資質の壁」が立ちふさがる。
だが、空手馬鹿の俺の魂は諦めることを知らなかった。
「魔法が使えなきゃ、技で制す!治癒士が最強になっちゃいけないなんて誰が決めた?」
これは魔法の常識を「空手の技」で叩き壊す、一人の少年の異世界武勇伝。
伝説の騎士、美少女魔術師、そして謎の切り株(?)を巻き込み、ノエルの規格外の挑戦が今始まる!
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる