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第2部 プラチナ帝国公爵領編
第11話
しおりを挟む「イオニア、ただいま戻りましてございます」
転移魔法で姿を現したイオニアは僕の顔をみてにこやかな笑みを浮かべあいさつをした。
「おかえりイオニア。あちらは大丈夫だったかい。アプリコット公爵さまはぶじだったろうか」
と僕は聞いた。
「はい。すべて元通りにしてまいりましたので無事なはずでございます。それよりも5分もお側を離れてしまったことをお詫びしたく、どうかこの愚かでのろまなわたくしめに罰をお与えくださいませ」
と顔を伏せて僕にいう。
いやいや、たった5分じゃない。とか公爵を助けに行ってくれといったのは僕だしとかそもそもなんで罰を与えてないといけないのかとか。
あいかわらずツッコミどころが多すぎてキャパオーバーしてしまいしばらく僕は呆けてしまった。
僕が何か言わないと話が進まないので、
「もう、いいから顔を上げて普通にしてよ。あと、イオニア、よくやってくれた。ありがとう」
とイオニアに労いの言葉をかけた。
さて、もうここの用事は済んだはずだ。
帝都に向かい、公爵様やクリムソン様に事の次第を報告するまでが仕事だと思い、僕は帝都に向かう準備をした。
僕と従者3人は一路、帝都にむけて出発した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
内務省長官タンジェリン・マゼンタ公爵である。
あの悪夢のような襲撃の日から数日が経った。
プラチナ帝国とシルバー王国の停戦協定は無事に調印され、同盟国同士となった。
皇帝宮の大広間で要人たちが一同にあつまったなかでおきた邪神なるものの襲撃は失敗におわったが首謀者を見つけ出さなければならない。
いま、その捜索がおわりあらかた捕縛を終えたところだ。
今回のことで6大公爵のうち“黄”と“青”が反対派としてこの一連の騒動を計画し、あわよくば皇帝を殺害し帝国を乗っ取ろうとしていたことが明るみに出た。
実際に大魔導士イオニーア様がいなければ間違いなくあの場にいた者たち全員の命はなかったであろう。
あの邪神は“黄”の公爵家が長年封印の管理をしてきた魔物であった。
それをパンジー・マリーゴールドが封印を解きあの場に呼び出したということがわかったのだ。
パンジー・マリーゴールドは取り調べでも抵抗することなく淡々と自分のしたことを話したらしい。
もともと協定に興味がなかったこと。
“青”の公爵から計画に加担してほしい旨の依頼があったこと。
最初は断ったが、研究の予算を削られるかもしれないと思ったこと。
そして大魔導士イオニーア様がすでに我が国にいないことを聞いてショックだったこと。
しかし邪神を復活させれば大魔導士イオニーア様が私たちを助けるため姿を見せてくれるかもしれないと思ったこと。
これらのことを話したとか。
また今回の調査で驚いたことは、反対派は大魔導士イオニーア様がこの国からいなくなっていたことを知っていて計画をしたということだ。
常識で考えれば大魔導士イオニーア様がいないと戦争で勝てないから同盟を結ぼうと考えるはずだが、“青”の公爵は逆に皇帝の座を奪う好機ととらえたそうだ。
“青”の公爵は現皇帝の叔父、つまり、先代皇帝陛下の弟にあたる。
自分たちにも皇帝の座につく資格があると思っていたそうだ。
愚かなことだ。
そして大魔導士イオニーア様がかつて封印し、“黄”の公爵家に封印の管理を任せていた邪神を利用することを考えたのだろう。
“黄”の公爵パンジー・マリーゴールドのイオニーア様への思いを利用して・・・・・。
あのあと、大魔導士イオニーア様の捜索をこころみたが、転移魔法を使ったのでどこへ移動したかはつかめなかった。
「わしらは、やはり見捨てられたのかもしれぬな・・・。」
誰に・・・という言葉は言えない。
この事件の全容をあばく調査をしていた内務省長官タンジェリン・マゼンタ“赤”の公爵は、やりきれない思いが胸に充満し、吐き出したくなる気持ちを抑えるのであった。
そこへ、一人の騎士爵がエボニー砦の伝令をもってきたという知らせが入った。
「騎士爵が伝令・・・・?」
伝令は重要ではあるが通常は平民の兵士が任務にあたる。長時間を速く移動する必要があるため重労働にあたるからだ。
「それだけ重要な知らせをもってきたのか??」
内務省長官タンジェリン・マゼンタはひとり疑問に思うのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
内務省長官タンジェリン・マゼンタをまえにして意気揚々と報告をする者がいる。
「自分はエボニー砦の守将フロスティ・ジャスパー騎士爵と申すもの、重要な内容なので自ら帝都に報告に来た次第であります」
「エボニー砦はシルバー王国から5000もの大軍で奇襲をうけたため全滅いたしました。私も最後まで敵と戦い砦を枕に果てる所存でございましたが、事の次第を報告する義務があると勇敢なる部下にさとされ、身を切り刻む思いで伝令に参った次第であります」
内務省長官タンジェリン・マゼンタは目を細め、
「ほう・・・・興味深い報告だ・・・・・。エボニー砦については今朝がた別の伝令から報告を受けている」
「エボニー砦の勝利という報告をな」
と静かに言った言葉にフロスティ・ジャスパー騎士爵は目を見開いて驚いた。
「そんな馬鹿な!!何かの間違いです!5000ですよ。500の兵士で太刀打ちできるものではありません。誤報ですよ」
と目を向いて叫ぶが、内務省長官タンジェリン・マゼンタはそれに答えず、
「うむ。詳しいことはわからない。精査して事に当たらねばな。兵士の中にはうれしくて錯乱しているものもいるようで、かの大将軍シェーラが現れたというものまでいるとか」
「はあ?あのシルバー王国のですか??」
「それぐらい現場は混乱しているのだろう。劇的な大勝利にな。本来なら守将にあたるものがその混乱を鎮めるべきだと思うがな」
と軽く皮肉を言われ、フロスティ・ジャスパー騎士爵は心の中でヤバイと感じた。
そのとき、別のものからの伝令がとどいた。
「いま、アプリコット様の家臣でエボニー砦で勝利に導いたというものが戻られました。お会いになりますか」
それを聞いてフロスティ・ジャスパー騎士爵はまた驚いている。
「会おう。通してくれ。会わせたいものもいるし」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
僕は3人の従者とともに帝都の宮殿に入り、所属と来訪の目的を伝えた。
すぐさま、この国の内政を取り仕切っている内務省長官タンジェリン・マゼンタ公爵のいる執務室へ案内された。
ちょうどそのときアプリコット公爵の嫡男であるクリムソン様も執務室に入ってきた。
「クリムソン様、おいいつけの件、無事に任務を終えましてございます」
と言うとクリムソン様は笑顔で、
「うん。このたびのことは聞いている。よくやってくれた。アプリコット家としても帝国に大きな貸しをつくることができた。よくやった」
とほめてくれた。そのとき、一人の男が大きな声で僕に問いただした。
「おまえは何の権限でエボニー砦の指揮をとったのだ。これは立派な軍法違反だ。わしはだれにも指揮権をゆずっておらんぞ!!!!」
その場にいる僕をふくめて全員が一斉に発言した人物のほうへ振り向く。
「私はエボニー砦の守将をプラチナ帝国軍から任命されている者だ。故にわししかあの砦の兵士を指揮することは許されておらん」
とフロスティ・ジャスパー騎士爵は前半は僕にむかって忌々しげな表情でいい、
「これはプラチナ帝国軍軍法に明記されていることでございますよね。ね」
と媚びるような表情で内務省長官タンジェリン・マゼンタ公爵に向かって言った。
さらに、
「もしやあれか・・・・・あのことか・・・・あれをもってわしから指揮権を譲られたと勘違いしておるのか?」
と意地悪い顔で僕に言い放つ。
「あのとき、おまえはわしにアプリコット公爵の命令で動いている証拠としてアプリコット家の紋章をこれみよがしに見せびらかし、わしを従わせようとしたな」
「公爵の権威をかさにきて、守将たるわしにすらこのような振る舞いをするものがこの砦にいたら、勝てる戦いも勝てなくなると判断しわしは帝都へやむなく報告に行ったのだ」
フロスティ・ジャスパー騎士爵はタンジェリン・マゼンタ公爵に向きなおして
「さきほど私めが伝えた伝令の内容はですな、エボニー砦の軍としての秩序はまるで5000の大軍に奇襲をうけて全滅したようなもの。とそう言いたかったのでございますな。ウハハハハハ」
と自分を正当化する主張を平然と吐いていた。
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