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第3部 プラチナ帝国魔法学園編
第18話
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その人が娼婦になったのはいまから5年前、エメラルド子爵家の兄弟が10歳をむかえる直前だった。
当時、奥方付きの侍女だったが、奥方から難癖をつけられ罰として娼館で働くように強制されたのだとか。
そのことを根に持った彼女は自分が知っている奥方のとんでもない秘密を主人であるゴドー・エメラルド子爵に知らせたんだそうだ。
その秘密とは、双子はゴドー・エメラルド子爵の種ではなく、奥方が当時結婚前の婚約中のときに浮気した相手の種だという。
そのときから侍女をしていた彼女は奥方の浮気の手引きまでしていたから間違いないそうだ。
しかもその相手はゴドー・エメラルド子爵が魔法学園時代にライバル視してどうしても成績で勝てなかった平民なんだとか。
子爵はその相手を相当憎んでいた。その平民はのちに子爵に殺されている。
娼婦である彼女は目を細めてニヤニヤしながら、
「メアリーは2階に上がったら部屋に誰もいなかったと言ってただろう。あれは嘘さ」
「本当は喧嘩の一部始終を見ていてあまりにも醜い自分勝手さに腹を立てた使用人たちが当主と奥方と双子の兄の3人を殺したのさ」
「あまりにも罪深い所業に、部屋には誰もいなかったことにしようと使用人全員で口裏あわせをしたのさ」
とさげすむように言い捨てた。
「難を逃れたのは弟のほうだけさ。毒を飲まされてはいたが、すぐに解毒剤を飲んでいたので命は助かっているはずだ」
「だけど、あの毒はエメラルド子爵家に代々伝わる秘伝の毒で不要な記憶を喪失させることのできる薬らしくてね」
「エメラルド家の始祖が当時の主人から特別に授かったものだとか。奥方は知らなかったようだけど、あたしは旦那様の幼なじみだから知ってたんだよ」
「だから5年を過ぎた今。弟のほうが生きていてもまだ記憶が戻っていない可能性はある」
彼女は僕の目をじっくりみながら言った。
僕はその娼婦にお礼をいって娼館をあとにした。
はっきり言って気分が悪い。いやな夢を見た後のようだ。
もしかしたら僕がエメラルド子爵家の双子の弟のほうだったかもしれない。
だが種はエメラルド子爵家のものではない。
まあ気にしないでおこう。どちらにせよ。貴族の血ではない。
しかし、貴族の醜い面ばかりを見てしまったように思う。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
後日、またアクアマリン伯爵の嫡男である貴族が僕に接触してきた。
あの後の結果を聞きに来たのだろう。
僕は正直に聞いたことを話した。
聞いたほうもショックをうけていた。そして気持ち悪がっていた。
「すまない。私は君がエメラルド子爵家の跡取りの弟だと思い込んでいた。そして学園にもそれを申し入れてしまっていた。本当にすまないことをした。もしかしたら君は学園にいられなくなるかもしれない」
そう言って頭を下げた。
「エメラルド子爵家はプラチナ帝国の第一騎士団が動いて処分した案件なのだ。第一騎士団は皇帝陛下直属だ。おそらく陛下はすべて知っていた。つまり、家の乗っ取りが行われようとしていたと判断されたのだ」
「エメラルド子爵家は爵位こそ低いがプラチナ帝国の草創期から続く最古参の家で名門中の名門だ。それだけに皇帝陛下は帝国の醜聞となることを恐れ秘密裡にもみ消したのだろう」
「行方不明の弟も捜索していたかもしれない。君が双子の弟であるという証拠はどこもないが、私は早とちりをして学園と帝国の内務省に通報してしまった」
つまり醜聞であるエメラルド子爵家に連なるものは日の当たるところにいてほしくないということなのだろう。それを聞いた僕は、
「構いませんよ。僕自身、いまだエメラルド子爵家の者かどうかわかりませんし、記憶喪失かどうかの自覚もありません」
「ですがそんなことはどうでもいいのです。そして学園にも未練はありません。どうせ、途中で退学しようと考えていたところです」
そう言って現状を受け入れた。
僕はまた、クビになったのだ。
これで4回目か。クビになるのは。
そう考えた瞬間、僕の脳裏にはナスの顔がうかんだ。
次にガーネットの顔がうかびノワールの顔が浮かんだ。
キャロット様の顔がうかびパステル嬢の顔がうかび、シャトルーズ嬢の顔が浮かんだ。
みんな笑顔だ。
そっか。なんだかんだで僕は学園生活を楽しんでいたのかもしれない。
今までクビになったときはこんな風に顔が浮かんだことは無かったものな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
後日、学園長から正式に退学の書類を受け取り、僕は魔法学園を退学した。
学生寮の荷物を片付け、正門を出て、すこし脇に入る。
人通りが無くなったころを見計らって僕は、姿勢を正し学園の建物のほうに身体を折り曲げ頭を下げて別れの挨拶をした。
「この半年間本当にお世話になりました」
こういう事はきちんとやらないと僕は気持ちが悪い。どんな状況でもあいさつはきちんと済ませておきたい。
またクビになったけど、以前のときよりもショックは少ない。
多分納得しているんだろう。
これからどうしようかな。まずは、商会ギルドへ行って報告するのが先かな。
あまり貴族の依頼は受けていないがそれなりに依頼は受けたはず。
そう思いついた僕は商業ギルドへ向かっていった。
そして・・・・・・・
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
魔法学園の平民棟では授業の時間であるにもかかわらず生徒全員が窓のほうをむき、遠くのほうで一人の少年が校門から立ち去る姿を見送っていた。
教師も同様に窓の外に目を向けている。
平民の「ギルド屋」が退学し魔法学園を去ることになったと聞いたからだ。
せめてみんなで教室から見送ろうということになったのである。
彼が見送りなどということを喜ばないことはわかっている。
だけど彼が「ギルド屋」として数々の貴族の依頼を受けその信頼を得ていることをみんなは知っていた。
そのおかげで貴族の学生から平民の学生へのあたりは弱くなっていったから。
それに彼はノワールとガーネットの2大学園美女と仲が良い。妬ましくはあるが憧れでもあった。
そして彼は横暴な貴族に対し、果敢に立ち向かい、ときには恩を売り、存在感を示してきた。
「底辺」だ「腰抜け」だとは言っても彼の存在は平民の学生の希望だったのである。
教室内で彼を惜しむ声が響く。
「「ギルド屋」、いままで本当にお世話になった。お前のことは忘れない」
「またなーーー」
「元気でねーー」
「嘘よーーー。なんで辞めるのーーー!!」
別れを惜しむ声が教室に響いていたことを「ギルド屋」の少年は知らないまま学園を去った。
第3部本編 終わり
当時、奥方付きの侍女だったが、奥方から難癖をつけられ罰として娼館で働くように強制されたのだとか。
そのことを根に持った彼女は自分が知っている奥方のとんでもない秘密を主人であるゴドー・エメラルド子爵に知らせたんだそうだ。
その秘密とは、双子はゴドー・エメラルド子爵の種ではなく、奥方が当時結婚前の婚約中のときに浮気した相手の種だという。
そのときから侍女をしていた彼女は奥方の浮気の手引きまでしていたから間違いないそうだ。
しかもその相手はゴドー・エメラルド子爵が魔法学園時代にライバル視してどうしても成績で勝てなかった平民なんだとか。
子爵はその相手を相当憎んでいた。その平民はのちに子爵に殺されている。
娼婦である彼女は目を細めてニヤニヤしながら、
「メアリーは2階に上がったら部屋に誰もいなかったと言ってただろう。あれは嘘さ」
「本当は喧嘩の一部始終を見ていてあまりにも醜い自分勝手さに腹を立てた使用人たちが当主と奥方と双子の兄の3人を殺したのさ」
「あまりにも罪深い所業に、部屋には誰もいなかったことにしようと使用人全員で口裏あわせをしたのさ」
とさげすむように言い捨てた。
「難を逃れたのは弟のほうだけさ。毒を飲まされてはいたが、すぐに解毒剤を飲んでいたので命は助かっているはずだ」
「だけど、あの毒はエメラルド子爵家に代々伝わる秘伝の毒で不要な記憶を喪失させることのできる薬らしくてね」
「エメラルド家の始祖が当時の主人から特別に授かったものだとか。奥方は知らなかったようだけど、あたしは旦那様の幼なじみだから知ってたんだよ」
「だから5年を過ぎた今。弟のほうが生きていてもまだ記憶が戻っていない可能性はある」
彼女は僕の目をじっくりみながら言った。
僕はその娼婦にお礼をいって娼館をあとにした。
はっきり言って気分が悪い。いやな夢を見た後のようだ。
もしかしたら僕がエメラルド子爵家の双子の弟のほうだったかもしれない。
だが種はエメラルド子爵家のものではない。
まあ気にしないでおこう。どちらにせよ。貴族の血ではない。
しかし、貴族の醜い面ばかりを見てしまったように思う。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
後日、またアクアマリン伯爵の嫡男である貴族が僕に接触してきた。
あの後の結果を聞きに来たのだろう。
僕は正直に聞いたことを話した。
聞いたほうもショックをうけていた。そして気持ち悪がっていた。
「すまない。私は君がエメラルド子爵家の跡取りの弟だと思い込んでいた。そして学園にもそれを申し入れてしまっていた。本当にすまないことをした。もしかしたら君は学園にいられなくなるかもしれない」
そう言って頭を下げた。
「エメラルド子爵家はプラチナ帝国の第一騎士団が動いて処分した案件なのだ。第一騎士団は皇帝陛下直属だ。おそらく陛下はすべて知っていた。つまり、家の乗っ取りが行われようとしていたと判断されたのだ」
「エメラルド子爵家は爵位こそ低いがプラチナ帝国の草創期から続く最古参の家で名門中の名門だ。それだけに皇帝陛下は帝国の醜聞となることを恐れ秘密裡にもみ消したのだろう」
「行方不明の弟も捜索していたかもしれない。君が双子の弟であるという証拠はどこもないが、私は早とちりをして学園と帝国の内務省に通報してしまった」
つまり醜聞であるエメラルド子爵家に連なるものは日の当たるところにいてほしくないということなのだろう。それを聞いた僕は、
「構いませんよ。僕自身、いまだエメラルド子爵家の者かどうかわかりませんし、記憶喪失かどうかの自覚もありません」
「ですがそんなことはどうでもいいのです。そして学園にも未練はありません。どうせ、途中で退学しようと考えていたところです」
そう言って現状を受け入れた。
僕はまた、クビになったのだ。
これで4回目か。クビになるのは。
そう考えた瞬間、僕の脳裏にはナスの顔がうかんだ。
次にガーネットの顔がうかびノワールの顔が浮かんだ。
キャロット様の顔がうかびパステル嬢の顔がうかび、シャトルーズ嬢の顔が浮かんだ。
みんな笑顔だ。
そっか。なんだかんだで僕は学園生活を楽しんでいたのかもしれない。
今までクビになったときはこんな風に顔が浮かんだことは無かったものな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
後日、学園長から正式に退学の書類を受け取り、僕は魔法学園を退学した。
学生寮の荷物を片付け、正門を出て、すこし脇に入る。
人通りが無くなったころを見計らって僕は、姿勢を正し学園の建物のほうに身体を折り曲げ頭を下げて別れの挨拶をした。
「この半年間本当にお世話になりました」
こういう事はきちんとやらないと僕は気持ちが悪い。どんな状況でもあいさつはきちんと済ませておきたい。
またクビになったけど、以前のときよりもショックは少ない。
多分納得しているんだろう。
これからどうしようかな。まずは、商会ギルドへ行って報告するのが先かな。
あまり貴族の依頼は受けていないがそれなりに依頼は受けたはず。
そう思いついた僕は商業ギルドへ向かっていった。
そして・・・・・・・
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
魔法学園の平民棟では授業の時間であるにもかかわらず生徒全員が窓のほうをむき、遠くのほうで一人の少年が校門から立ち去る姿を見送っていた。
教師も同様に窓の外に目を向けている。
平民の「ギルド屋」が退学し魔法学園を去ることになったと聞いたからだ。
せめてみんなで教室から見送ろうということになったのである。
彼が見送りなどということを喜ばないことはわかっている。
だけど彼が「ギルド屋」として数々の貴族の依頼を受けその信頼を得ていることをみんなは知っていた。
そのおかげで貴族の学生から平民の学生へのあたりは弱くなっていったから。
それに彼はノワールとガーネットの2大学園美女と仲が良い。妬ましくはあるが憧れでもあった。
そして彼は横暴な貴族に対し、果敢に立ち向かい、ときには恩を売り、存在感を示してきた。
「底辺」だ「腰抜け」だとは言っても彼の存在は平民の学生の希望だったのである。
教室内で彼を惜しむ声が響く。
「「ギルド屋」、いままで本当にお世話になった。お前のことは忘れない」
「またなーーー」
「元気でねーー」
「嘘よーーー。なんで辞めるのーーー!!」
別れを惜しむ声が教室に響いていたことを「ギルド屋」の少年は知らないまま学園を去った。
第3部本編 終わり
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