おむすび娘と縁切り侍

すなぎ もりこ

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神社とJK

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バイトは順調に回を重ね、モカは神社の面々ともすっかり打ち解けた。
といっても、神社に常駐するのは、奥様と防犯も兼ねて住み込んでいる浅緋だけだ。
昔から勤めている禰宜ねぎ権禰宜ごんねぎの二人は他の神社と掛け持ちしているらしく、土日は交代で現れる。
平日に行われる縁切り以外の祈祷は、彼らが担当しているそうで、土日は補助に徹している。
そして、蒼士は週末のみ車で通っている。

2ヶ月を過ぎる頃には、祈祷の合間に受付や掃除、昼食作りも担当するようになっていた。

「モカちゃんの握るおむすびって、なんでこんなに美味しいのかしら」
「両親直伝なんで。私の得意料理です!」

モカは胸を張る。

「『ボム』は有名だよねぇ、うちの娘も登校前に良く買うそうでね、タダで食べれるなんてズルいって言われたよ」

禰宜さんが人の良い顔を緩める。

「具もバラエティーに富んでるし、これと味噌汁さえあれば三食いけるよ」

浅緋は残り少ないおむすびに手を伸ばすが、その手を蒼士に掴まれる。

「お前、何個食う気だよ、それは俺が狙ってたんだよ」
「お前こそ両手に持つのは反則だろ」
「タラコの卵焼きのはまだ食ってねぇもん、それ旨いから寄越せ」
「嫌だね。早いもん勝ちだ」

大人気なくおむすびを奪いあう二人を見ながら、モカは苦笑いする。

「小腹が空いた時の為に幾つか作り置きしとくよ。まだ具も残ってるし」
「マジで?やった」

蒼士と浅緋はモグモグ口を動かしながら顔を見合わせて喜んでいる。
モカも昆布のおにぎりを掴み、お味噌汁の入ったお椀に口をつけたところで、スマートフォンの着信音が鳴った。
取り出して画面を見ると、1ヶ月前にメッセージを送ってきた元カレの名前が表示されている。
モカは迷ったが、立ち上がって居間を出た。
襖を閉めて、廊下を歩きながら電話に出た。

「……はい」
『モカ?玉森モカさんですか?』

懐かしい声が聞こえてきた。
少し緊張したように強ばっているが、かつてのモカの彼氏、小海 祐(たすく)に間違いない。

「そうだけど、祐だよね?どうしたの、いきなり」
『うん、急に驚いたよね?あの、どうしてるかなって、それだけなんだけど』
「あ、そうなんだ。元気だよ、祐は?」
『うん、俺も。県外で就職したんだけど、今度こっちに戻ってくることになってさ』
「へえ、そうなんだね」
『…それでさ、モカ…』
「おい、もうそろそろ行くぞ」

肩を掴まれ、振り向くと、いつの間にか背後に蒼士が立って見下ろしていた。

「祐、ごめん、今ちょっと手が離せなくて。またこっちからかけるから」

モカは通話を切って、蒼士と共に廊下を戻る。

「…わりいな、休みの日に付き合わせて」

蒼士がボソリと言う。

「何なのいまさら。それにね、ここ最近の休日はお店の手伝いをするくらいしか予定がなかったの。おデートも遊ぶ人もいない寂しい人間だったんです!」
「今の電話の相手は違うのかよ」
「違うよ、昔の知り合いで元……」

モカは言葉を切った。
元カレなんて言う必要はないか。

「高校の同級生だよ」
「ふぅん…高校の時のねぇ…なあ、お前ってN高だよな、この近くの」
「そうだけど」

モカは怪訝そうに蒼士を見た。

「良く参拝に来てただろ、分社の方に」
「この先の?その通りだけど何で知ってるの?!」
「ちょうどあの頃、俺達もこの神社に良く来てたんだよ。分社は俺の管轄でさ、ここと裏で繋がってる道があってさ、そこから清掃に通ってたんだ」
「ええっ?!人いたの?あそこの神社」
「いたよ。まあ、普段は無人なんだけどな。あの頃は結構いたぞ。お前は遂に気づかなかったけど」

蒼士は少し拗ねたような表情で、控えの間の襖に手を掛けた。

「声を掛けてくれれば良かったのに」
「いや、一心不乱に祈ってる女子高生が怖くて」

モカは蒼士の背中を叩いた。
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