おむすび娘と縁切り侍

すなぎ もりこ

文字の大きさ
14 / 35

お節介侍

しおりを挟む
「玉森、彼氏がさ、あんたに友達を紹介してくれるって言うんだけど、どうする?」

月曜日、先輩が更衣室でモカに囁いてきた。

「出来立てホヤホヤの彼氏さんがですか?あの眼鏡スーツ」
「そうそう、どう?もちろん奢りよ」
「……いつですか?今週はちょっと予定があるんですけど」

モカは先輩と並んで更衣室を出る。

「向こうの予定も聞かなきゃならないし、決まったら言うわ。職場の後輩なんだってさ、結構イケメンだってよ、期待しときな」

先輩はニマニマ笑いながら自分の席についた。
彼氏の紹介だと言うし、ここは先輩の顔を立てておくべきだろう。
期待など全くしていないが、少なくともそれだけの少人数ならあからさまな縁結び事象は起こらないような気がするし。
翌日のバイトに響かないようにしないとなぁ、と考えながら、席についてパソコンを立ち上げた。
鞄の中のスマートフォンをふと見る。

蒼士はまた連絡すると言ったが、いつになるんだろう。
…そう言えば。

モカは思い出した。
元カレの祐からの電話のことを。
またこちらから掛け直す、と言ったきりになっている。
祐の様子から察するに、何となくモカの望んでいない内容であるような気はしていた。
しかし、無視をするのも気持ち悪い。

面倒な事は早く済ました方が良いな…

モカは終業後、祐に連絡することを決めた。


祐は久しぶりに会って話したい、と言う。
モカはのらりくらりと交わしていたが、最終的に押しきられ、結局、木曜日に会う約束をしてしまった。
ここ最近の出来事を改めて思い返すとこのパターンばかりである。
どうやら自分は押しに弱いらしい。

これは改善すべき点だよなぁ…

モカはスマートフォンを握ったまま夜空を見上げた。
そして、その直後に蒼士から着信が入った。

『おう、モカか』

いつも通りの横柄な声を聞いて何故かホッとする。

「そうだよ、日にち決まった?」
『木曜日どうよ』

モカは額に手を当てた。
重なっちゃったかぁ…
正直、祐の方を断りたいくらいだが。

「それがさ、木曜日は急用ができて。他の曜日じゃ駄目?」
『ん~、だったら水曜日かなぁ』
「悪いね、何だか気が重い用事で行きたくないんだけど、断れなくて」
『何だよ、どうした?』

モカは少し迷ったが、思い切って祐の事を説明した。
蒼士は僅かに黙った後に言った。

『どこで会うか教えろ。見てやるから』
「見る?」

モカの胸がざわめいた。

『お前には滅多に変な縁は寄ってこないと思うけど、もしもの事もあるだろ』
「祐と悪縁が繋がってないか見るの?」

モカは襟元を掴んで身体を強ばらせた。

『心配すんな。念のためだよ』
「過保護すぎない?」
『お前は既に田出呂神社の大切な巫女なんだよ。それに、守ってやるって言ったろーが』

モカは瞬きをした。
蒼士の言葉とはにわかに信じがたい。
少なくとも面と向かっては絶対言わない台詞だ。
…だが、嬉しい。

「ありがとう、蒼士」

素直にお礼を言うと、蒼士は、おう、と返事した。
照れている様子が目に浮かび、モカは顔をほころばせた。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

4番目の許婚候補

富樫 聖夜
恋愛
愛美は家出をした従姉妹の舞の代わりに結婚することになるかも、と突然告げられた。どうも昔からの約束で従姉妹の中から誰かが嫁に行かないといけないらしい。順番からいえば4番目の許婚候補なので、よもや自分に回ってくることはないと安堵した愛美だったが、偶然にも就職先は例の許婚がいる会社。所属部署も同じになってしまい、何だかいろいろバレないようにヒヤヒヤする日々を送るハメになる。おまけに関わらないように距離を置いて接していたのに例の許婚――佐伯彰人――がどういうわけか愛美に大接近。4番目の許婚候補だってバレた!? それとも――? ラブコメです。――――アルファポリス様より書籍化されました。本編削除済みです。

カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~

伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華 結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空 幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。 割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。 思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。 二人の結婚生活は一体どうなる?

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~

椿蛍
恋愛
念願のデザイナーとして働き始めた私に、『家のためにお見合いしろ』と言い出した父と継母。 断りたかったけれど、病弱な妹を守るため、好きでもない相手と結婚することになってしまった……。 夢だったデザイナーの仕事を諦められない私――そんな私の前に現れたのは、有名な美女モデル、【リセ】だった。 パリで出会ったその美人モデル。 女性だと思っていたら――まさかの男!? 酔った勢いで一夜を共にしてしまう……。 けれど、彼の本当の姿はモデルではなく―― (モデル)御曹司×駆け出しデザイナー 【サクセスシンデレラストーリー!】 清中琉永(きよなかるな)新人デザイナー 麻王理世(あさおりせ)麻王グループ御曹司(モデル) 初出2021.11.26 改稿2023.10

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる

若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ! 数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。 跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。 両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。 ――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう! エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。 彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。 ――結婚の約束、しただろう? 昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。 (わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?) 記憶がない。記憶にない。 姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない! 都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。 若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。 後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。 (そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?) ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。 エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。 だから。 この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し? 弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに? ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。

処理中です...