おむすび娘と縁切り侍

すなぎ もりこ

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紐をほどく

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花枝は手際よく巫女服を身につけると、もたもたしているモカを手伝ってくれる。

「紹介してくれてありがとね、モカ。皆良い人達ばかりだしバイト代も良いしさ」
「だったら良かった。皆も絶賛してたよ。花枝ちゃん目的の参拝者が増えそうだね」

モカは複雑な思いを抱えたまま、しかし、おくびにも出さず笑って答えた。
神社にとって花枝の雇用は正解だ。
有能だし人も寄せれる。
花枝を嫌う人間など見たことがないのだから。

「それはどうかな?イケメン神主ーズはともかく、私はそうでも無いでしょ」
「いやいや、美人巫女の破壊力よ。きっと今頃既にインスタに…」

モカは花枝が前に回してくれた帯を受け取り、結んだ。

「モカだってイケてるじゃん。私より似合うよ」
「マジで?普段着にしちゃう?」
「いける、いける」
「花枝ちゃん、着替えたら受付頼めるかな」
「はーい」

廊下から浅緋に呼び掛けられて花枝が返事をする。

「それにしても二人ともカッコ良いよね?モカはあの侍みたいな人と付き合ってるんでしょ」

侍…蒼士のことだな、これは。

「違うよ」

モカは即答した。

「そうなの?」
「花枝ちゃんの方が気が合うんじゃない?少しぶっきらぼうだけど真面目だし、何というか、少々暑苦しいほどの兄貴体質?」

あれ?これって誉めてないかな。

「…そんな風には見えなかったけどなぁ、真面目そうではあるけど普通に優しくて丁寧だったよ」
「それは浅緋さんの方じゃない?」
「あの人はちょっとチャラいよね」

うん。それは合ってる。

「蒼士さんって二面性があるのかな、ちょっと興味沸くな」

楽しげに笑みを浮かべる花枝を見て、一瞬、鼓動が跳ねた。
そうやって何気なく感じた興味がそのうちどんどんと膨らみ、意外な一面を見てときめいたり、思わせぶりな言葉に翻弄されちゃったりなんかして、気付けば恋に落ちているのだ。
…私のように。

控室に一人取り残されたモカは髪をとく。
バイトを始めた頃は肩までしかなかったのに随分と伸びてしまった。
巫女の髪形は垂髪(たれがみ)と呼ばれるひとつ結びが定番だ。
本当は本格的な夏に向けて軽くしたいが、巫女でいる限りは無理そうだ。
今までの経験上、そんなに遠くない未来に二人は惹かれ合い、モカは蒼士の専属をお役御免になるだろう。
しかし、割り切ったものだったとは言え、恋人と身体の関係があった人物が同じ職場にいるなど、いくら寛大な性格の花枝でも不快に思うに違いない。
蒼士との関係は絶対隠し通すつもりだが、巫女のバイトも早々に辞めようと思っていた。

何より、モカ自身がこれ以上傷つきたくなかった。

(辞めたら、ショートにして髪も染めよう…うん、それは、楽しみだな)

溜まっている有給休暇を消化して、神社仏閣巡りに出掛けるのも楽しそうだ。
有名な神社で縁結びの祈祷をしてもらったり?

モカは少し気分が軽くなり、真上に手を上げて伸びをした。
自慢じゃないが気分転換と発想の転換は得意だ。
それは、まともにざっくり切られて出血多量で死なないように、長年かけて取得したモカ特製の“鎧”なのだ。
来月には宮司さんが退院して復帰すると聞いている。
何とかそれまで持ちこたえて見せよう。
モカは拳を握り、決意するのだった。
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