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いくじなし
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いったい浅緋と蒼士は何をしたのだろう。
モカが関わっていることは間違いないようだが、まったく思い付かない。
気になるし確かめたかったが、宮司はあの会話以降一切詳細を語ろうとしなかった。
暗に“蒼士か浅緋に直接訊け”と言われているようだった。
モカはペットボトル片手にスマートフォンをじっと見つめる。
蒼士と浅緋の連絡先は登録済みだ。
直接訊けばきっと二人とも教えてくれるだろう。
しかし、かける勇気がない。
いずれ巫女を辞めようとは思っていたが、あのように衝動的に行動したのは間違いだったと、モカは今更ながら反省していた。
きっと二人は責任を感じ、思い悩んだはずだ。
しかも宮司からも叱られて…
ハアアアアア…
モカは大きなため息をついて項垂れた。
(子どもなのは私だ。蒼士も浅緋さんも花枝ちゃんも誰一人として悪くないのに、何もしていないのに、勝手に拗ねて八つ当たりしてしまった…)
穴があったら入りたい。
いっそ埋めてくれ。
ペットボトルを頭に乗せて唸るモカは、背後から肩をポンポンと叩かれて、振り向いた。
「なにそれ、ストレッチ?」
「そんなとこです。なんすか先輩、私忙しいんですけど」
「全然そう見えないけどな。言っとくけど休憩時間過ぎてっからな」
「ハイハイ、戻りますよ、すみませんでしたぁ」
「悪いね、見つけちゃって。いやさ、玉森に話があって探してたんだよ。前言ってた紹介の話さ、来週の金曜日どうかと思って」
モカは、ぼんやりと先輩を見た。
「はぁ、そう言えばそんな話ありましたっけね」
先輩は顔を歪める。
「本当に冷めてるね、玉森は。季節は夏だぞ!燃えろ!熱くなれ!」
「やめてください先輩、暑苦しいです」
モカは先輩に肩を抱かれながら、いまいち盛り上がれない気持ちを持て余す。
正直いってそれどころではない。
ふと、以前蒼士に言われた言葉が蘇る。
“今度から男と会うときは教えろ”
お前は男を見る目がない、とも言ったなあ。
だったら、お前はどうなんだって話だよね。
男を見る目がない私に好きになられてしまったということは、蒼士はたいしたことない男だということで。
そうだ、私のような変な女に手を出した時点でおかしな男だということで、つまり、どちらとも変…
隣に座る先輩が手に持っていたメニューを置いて、テーブルの上でぶるぶる震えるスマートフォンを拾い上げた。
(しまった、また延々とくだらないことを考えてしまった)
モカは蒼士に関する思考を慌てて打ち切る。
結局、蒼士と浅緋に連絡が取れないまま、あっという間に一週間が経ってしまった。
モカは小さくため息をつく。
そのくせ、ついつい蒼士のことを考えたり妄想したりしてしまうのだ。
会えなくなれば色あせるものと思ったのに、やたらと鮮やかに思い出す。
あれか、想像の中で補正しつつ復元するから美化されて、こう…
モカはぼんやりしつつ、テーブルの上に置かれていた鶏の形をしたマスコットを掴んで弄ぶ。
本日の会場である洋風焼き鳥店のキャラクターだというが、やたらと能天気な顔をしている。
お前、仲間がしこたま食われてんだぞ。
つうか、なんだ?洋風焼き鳥って…
「ねえ玉森、来るはずだった彼氏の後輩が急病で無理になったって」
先輩から告げられ、モカは苦笑いをする。
この、不自然なほどに突如訪れるハプニング、久しぶりだ。
自身の恋愛運の無さは未だ健在らしい。
「じゃあ、先輩のおごりで一杯飲んで帰りますか」
「それがさ、交代要員が見つかったらしいわよ。ツイてるわ玉森!ほら、前話したじゃない、急な仕事で来れなかったイケメン…」
モカが関わっていることは間違いないようだが、まったく思い付かない。
気になるし確かめたかったが、宮司はあの会話以降一切詳細を語ろうとしなかった。
暗に“蒼士か浅緋に直接訊け”と言われているようだった。
モカはペットボトル片手にスマートフォンをじっと見つめる。
蒼士と浅緋の連絡先は登録済みだ。
直接訊けばきっと二人とも教えてくれるだろう。
しかし、かける勇気がない。
いずれ巫女を辞めようとは思っていたが、あのように衝動的に行動したのは間違いだったと、モカは今更ながら反省していた。
きっと二人は責任を感じ、思い悩んだはずだ。
しかも宮司からも叱られて…
ハアアアアア…
モカは大きなため息をついて項垂れた。
(子どもなのは私だ。蒼士も浅緋さんも花枝ちゃんも誰一人として悪くないのに、何もしていないのに、勝手に拗ねて八つ当たりしてしまった…)
穴があったら入りたい。
いっそ埋めてくれ。
ペットボトルを頭に乗せて唸るモカは、背後から肩をポンポンと叩かれて、振り向いた。
「なにそれ、ストレッチ?」
「そんなとこです。なんすか先輩、私忙しいんですけど」
「全然そう見えないけどな。言っとくけど休憩時間過ぎてっからな」
「ハイハイ、戻りますよ、すみませんでしたぁ」
「悪いね、見つけちゃって。いやさ、玉森に話があって探してたんだよ。前言ってた紹介の話さ、来週の金曜日どうかと思って」
モカは、ぼんやりと先輩を見た。
「はぁ、そう言えばそんな話ありましたっけね」
先輩は顔を歪める。
「本当に冷めてるね、玉森は。季節は夏だぞ!燃えろ!熱くなれ!」
「やめてください先輩、暑苦しいです」
モカは先輩に肩を抱かれながら、いまいち盛り上がれない気持ちを持て余す。
正直いってそれどころではない。
ふと、以前蒼士に言われた言葉が蘇る。
“今度から男と会うときは教えろ”
お前は男を見る目がない、とも言ったなあ。
だったら、お前はどうなんだって話だよね。
男を見る目がない私に好きになられてしまったということは、蒼士はたいしたことない男だということで。
そうだ、私のような変な女に手を出した時点でおかしな男だということで、つまり、どちらとも変…
隣に座る先輩が手に持っていたメニューを置いて、テーブルの上でぶるぶる震えるスマートフォンを拾い上げた。
(しまった、また延々とくだらないことを考えてしまった)
モカは蒼士に関する思考を慌てて打ち切る。
結局、蒼士と浅緋に連絡が取れないまま、あっという間に一週間が経ってしまった。
モカは小さくため息をつく。
そのくせ、ついつい蒼士のことを考えたり妄想したりしてしまうのだ。
会えなくなれば色あせるものと思ったのに、やたらと鮮やかに思い出す。
あれか、想像の中で補正しつつ復元するから美化されて、こう…
モカはぼんやりしつつ、テーブルの上に置かれていた鶏の形をしたマスコットを掴んで弄ぶ。
本日の会場である洋風焼き鳥店のキャラクターだというが、やたらと能天気な顔をしている。
お前、仲間がしこたま食われてんだぞ。
つうか、なんだ?洋風焼き鳥って…
「ねえ玉森、来るはずだった彼氏の後輩が急病で無理になったって」
先輩から告げられ、モカは苦笑いをする。
この、不自然なほどに突如訪れるハプニング、久しぶりだ。
自身の恋愛運の無さは未だ健在らしい。
「じゃあ、先輩のおごりで一杯飲んで帰りますか」
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