おむすび娘と縁切り侍

すなぎ もりこ

文字の大きさ
33 / 35

侍の純情

しおりを挟む
モカは驚き、声を上げた。

「その頃から蒼士と私は縁で結ばれてたの?!」

蒼士はうっとりとした表情を浮かべてモカの頬を撫でた。

「浅緋に言われて俺も見たけど、綺麗に結ばれてたよ。色はまだ薄かったけど俺は確信したんだ。モカが運命の相手だって。…だけど」

何故か宮司さんにバレて、こっぴどく叱られたらしい。
そして、宮司さんは二人にきつく言い聞かせたそうだ。

“如何なる手出しもしてはならない、悪戯に他人の縁を視てその人生に干渉することは祭神様の意思にあらず”

そして、浮かれる蒼士に釘を刺した。

“お前とあのお嬢さんの縁はまだ機が熟していない。その時が来るまで待て”

「それで七年だぜ。七年間、ずっと待ち続けていたけど、一度もお前と会うことは叶わなかった。正直言ってもう縁が消えちまったんじゃないかって諦めかけてたんだ。でも、会社で“縁結びモカ神”って誰かが話しているのを偶然耳にして…唯一名前だけは知ってたから、お前の事だって確信したんだよ」

あの先輩につけられた変なあだ名…。
意外なところで役立ってたんだな。

「それで、普段敬遠してる飲み会に参加したんだね」
「そう。ところが、当日急な仕事のトラブル発生で対応に追われた。泣きそうだったよな、やっぱりまだ駄目なのかって。でも、諦めきれずに躍起になって仕事を片付けて駆けつけた」

そして、急いで会場の店に向かう蒼士と、一人あぶれて寂しく帰宅する途中のモカが出会った。
あの、地下鉄の出入り口で。

「直ぐわかった。やっと会えた、と思った」

あれが、そんなドラマチックな場面だったなんて…。

「絶対、離したくなかったけど、焦ったら駄目なのは解ってた。徐々に距離を縮めるつもりだったんだ。そっと、慎重に。…本当に、初っぱなからあんな事をするつもりはなかった」
「いきなりあのベロチュウ…凄かったね」
「ごめん」

蒼士は顔を覆った。
モカはその手をそっと外して、ぎゅっと握った。

「見つけてくれてありがとう、蒼士。待っててくれて、嬉しい」
「モカ…」

ずっと傍観者だった自分が、誰かに七年もの間想われていたなど思いもよらなかった。

「私ね、花枝ちゃんが現れて、それで思い込んじゃったんだ。蒼士と縁を結ぶために、私が呼び寄せたんだって」
「そんなことはあり得ない」
「ごめんね。だって、それまでそんなんばっかりだったんだもん」

蒼士はモカを再び抱き寄せた。

「俺こそ気付いてやれなくてごめん。あの後、伯母さんに説教されてやっと解ったんだ。浅緋と二人で反省した。そんで、伯父さんにもまた叱られて」
「そうらしいね。ごめんね、私が勝手に暴走しただけなのに」
「きちんと話してこい、って言われたんだ。期は充分満ちてるって」

慎重になるあまり臆病になり、言葉足らずになってしまった蒼士。
苦い経験から傷付く事を恐れて気持ちを告げられなかったモカ。
それでもこうして再会できたのは、やっぱり運命だから?

いや、それも勿論あるだろうが、蒼士が諦めずにモカに会いに来てくれなかったら、ここにこうして二人でいることは叶わなかっただろう。

「はっきり気持ちを告げないまま先に抱いちまったから、不安だったろう?」
「私もハッキリ自覚したのはあの後だったから良いんだよ。もうわかってるし、これからは信じるだけだもん」

モカは顔を上げて微笑んだ。

「また俺の専属になってくれんの?」
「当然だよ。そこは誰にも譲れないよ!」

蒼士の顔が近付き、モカの唇を優しく食んだ。
吐息が絡まり、何とも言えない幸福感が全身に押し寄せる。

「大好き、蒼士」

離れた唇を指でなぞりながら、溢れ出た素直な気持ちを囁く。

「馬鹿野郎、俺の方がもっと好きだ」

素直な愛の言葉の応酬で、二人は溶け合い、深く結びついていく。

「なあ、もっと実感したいんだけど」

蒼士の熱い掌がモカの背中から腰を官能的に撫でる。

「そう言えば私達って儀式の後しかシたことないね。…反動無しで、勃つの?」
「お前失礼だぞ、俺は至って健康な26歳の青年だ!」
「普通に盛ってると…」
「いつも盛ってる訳じゃねぇよ、猿扱いすんな」

蒼士はモカの胸元に顔を埋めた。
夏物の薄手のシャツ越しに熱い息が吹き掛けられ、モカは身を震わせた。

「なあ、抱かせて。もう俺、お前以外は無理なんだよ。こんな身体にしちまった責任取れよ」

モカはクスクスと笑った。

「おねだりなのか脅迫なのかどっちなの」
「どっちでも良いよ。なあ、今すぐ抱きたい」

モカは込み上げる愛しさのまま蒼士の頭を抱き締め、囁いた。

「私も。蒼士とシたい、今すぐ」
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

4番目の許婚候補

富樫 聖夜
恋愛
愛美は家出をした従姉妹の舞の代わりに結婚することになるかも、と突然告げられた。どうも昔からの約束で従姉妹の中から誰かが嫁に行かないといけないらしい。順番からいえば4番目の許婚候補なので、よもや自分に回ってくることはないと安堵した愛美だったが、偶然にも就職先は例の許婚がいる会社。所属部署も同じになってしまい、何だかいろいろバレないようにヒヤヒヤする日々を送るハメになる。おまけに関わらないように距離を置いて接していたのに例の許婚――佐伯彰人――がどういうわけか愛美に大接近。4番目の許婚候補だってバレた!? それとも――? ラブコメです。――――アルファポリス様より書籍化されました。本編削除済みです。

カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~

伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華 結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空 幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。 割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。 思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。 二人の結婚生活は一体どうなる?

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや

静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。 朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。 「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。 この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか? 甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!

一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~

椿蛍
恋愛
念願のデザイナーとして働き始めた私に、『家のためにお見合いしろ』と言い出した父と継母。 断りたかったけれど、病弱な妹を守るため、好きでもない相手と結婚することになってしまった……。 夢だったデザイナーの仕事を諦められない私――そんな私の前に現れたのは、有名な美女モデル、【リセ】だった。 パリで出会ったその美人モデル。 女性だと思っていたら――まさかの男!? 酔った勢いで一夜を共にしてしまう……。 けれど、彼の本当の姿はモデルではなく―― (モデル)御曹司×駆け出しデザイナー 【サクセスシンデレラストーリー!】 清中琉永(きよなかるな)新人デザイナー 麻王理世(あさおりせ)麻王グループ御曹司(モデル) 初出2021.11.26 改稿2023.10

皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる

若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ! 数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。 跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。 両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。 ――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう! エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。 彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。 ――結婚の約束、しただろう? 昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。 (わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?) 記憶がない。記憶にない。 姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない! 都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。 若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。 後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。 (そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?) ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。 エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。 だから。 この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し? 弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに? ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。

処理中です...