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侍の純情
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モカは驚き、声を上げた。
「その頃から蒼士と私は縁で結ばれてたの?!」
蒼士はうっとりとした表情を浮かべてモカの頬を撫でた。
「浅緋に言われて俺も見たけど、綺麗に結ばれてたよ。色はまだ薄かったけど俺は確信したんだ。モカが運命の相手だって。…だけど」
何故か宮司さんにバレて、こっぴどく叱られたらしい。
そして、宮司さんは二人にきつく言い聞かせたそうだ。
“如何なる手出しもしてはならない、悪戯に他人の縁を視てその人生に干渉することは祭神様の意思にあらず”
そして、浮かれる蒼士に釘を刺した。
“お前とあのお嬢さんの縁はまだ機が熟していない。その時が来るまで待て”
「それで七年だぜ。七年間、ずっと待ち続けていたけど、一度もお前と会うことは叶わなかった。正直言ってもう縁が消えちまったんじゃないかって諦めかけてたんだ。でも、会社で“縁結びモカ神”って誰かが話しているのを偶然耳にして…唯一名前だけは知ってたから、お前の事だって確信したんだよ」
あの先輩につけられた変なあだ名…。
意外なところで役立ってたんだな。
「それで、普段敬遠してる飲み会に参加したんだね」
「そう。ところが、当日急な仕事のトラブル発生で対応に追われた。泣きそうだったよな、やっぱりまだ駄目なのかって。でも、諦めきれずに躍起になって仕事を片付けて駆けつけた」
そして、急いで会場の店に向かう蒼士と、一人あぶれて寂しく帰宅する途中のモカが出会った。
あの、地下鉄の出入り口で。
「直ぐわかった。やっと会えた、と思った」
あれが、そんなドラマチックな場面だったなんて…。
「絶対、離したくなかったけど、焦ったら駄目なのは解ってた。徐々に距離を縮めるつもりだったんだ。そっと、慎重に。…本当に、初っぱなからあんな事をするつもりはなかった」
「いきなりあのベロチュウ…凄かったね」
「ごめん」
蒼士は顔を覆った。
モカはその手をそっと外して、ぎゅっと握った。
「見つけてくれてありがとう、蒼士。待っててくれて、嬉しい」
「モカ…」
ずっと傍観者だった自分が、誰かに七年もの間想われていたなど思いもよらなかった。
「私ね、花枝ちゃんが現れて、それで思い込んじゃったんだ。蒼士と縁を結ぶために、私が呼び寄せたんだって」
「そんなことはあり得ない」
「ごめんね。だって、それまでそんなんばっかりだったんだもん」
蒼士はモカを再び抱き寄せた。
「俺こそ気付いてやれなくてごめん。あの後、伯母さんに説教されてやっと解ったんだ。浅緋と二人で反省した。そんで、伯父さんにもまた叱られて」
「そうらしいね。ごめんね、私が勝手に暴走しただけなのに」
「きちんと話してこい、って言われたんだ。期は充分満ちてるって」
慎重になるあまり臆病になり、言葉足らずになってしまった蒼士。
苦い経験から傷付く事を恐れて気持ちを告げられなかったモカ。
それでもこうして再会できたのは、やっぱり運命だから?
いや、それも勿論あるだろうが、蒼士が諦めずにモカに会いに来てくれなかったら、ここにこうして二人でいることは叶わなかっただろう。
「はっきり気持ちを告げないまま先に抱いちまったから、不安だったろう?」
「私もハッキリ自覚したのはあの後だったから良いんだよ。もうわかってるし、これからは信じるだけだもん」
モカは顔を上げて微笑んだ。
「また俺の専属になってくれんの?」
「当然だよ。そこは誰にも譲れないよ!」
蒼士の顔が近付き、モカの唇を優しく食んだ。
吐息が絡まり、何とも言えない幸福感が全身に押し寄せる。
「大好き、蒼士」
離れた唇を指でなぞりながら、溢れ出た素直な気持ちを囁く。
「馬鹿野郎、俺の方がもっと好きだ」
素直な愛の言葉の応酬で、二人は溶け合い、深く結びついていく。
「なあ、もっと実感したいんだけど」
蒼士の熱い掌がモカの背中から腰を官能的に撫でる。
「そう言えば私達って儀式の後しかシたことないね。…反動無しで、勃つの?」
「お前失礼だぞ、俺は至って健康な26歳の青年だ!」
「普通に盛ってると…」
「いつも盛ってる訳じゃねぇよ、猿扱いすんな」
蒼士はモカの胸元に顔を埋めた。
夏物の薄手のシャツ越しに熱い息が吹き掛けられ、モカは身を震わせた。
「なあ、抱かせて。もう俺、お前以外は無理なんだよ。こんな身体にしちまった責任取れよ」
モカはクスクスと笑った。
「おねだりなのか脅迫なのかどっちなの」
「どっちでも良いよ。なあ、今すぐ抱きたい」
モカは込み上げる愛しさのまま蒼士の頭を抱き締め、囁いた。
「私も。蒼士とシたい、今すぐ」
「その頃から蒼士と私は縁で結ばれてたの?!」
蒼士はうっとりとした表情を浮かべてモカの頬を撫でた。
「浅緋に言われて俺も見たけど、綺麗に結ばれてたよ。色はまだ薄かったけど俺は確信したんだ。モカが運命の相手だって。…だけど」
何故か宮司さんにバレて、こっぴどく叱られたらしい。
そして、宮司さんは二人にきつく言い聞かせたそうだ。
“如何なる手出しもしてはならない、悪戯に他人の縁を視てその人生に干渉することは祭神様の意思にあらず”
そして、浮かれる蒼士に釘を刺した。
“お前とあのお嬢さんの縁はまだ機が熟していない。その時が来るまで待て”
「それで七年だぜ。七年間、ずっと待ち続けていたけど、一度もお前と会うことは叶わなかった。正直言ってもう縁が消えちまったんじゃないかって諦めかけてたんだ。でも、会社で“縁結びモカ神”って誰かが話しているのを偶然耳にして…唯一名前だけは知ってたから、お前の事だって確信したんだよ」
あの先輩につけられた変なあだ名…。
意外なところで役立ってたんだな。
「それで、普段敬遠してる飲み会に参加したんだね」
「そう。ところが、当日急な仕事のトラブル発生で対応に追われた。泣きそうだったよな、やっぱりまだ駄目なのかって。でも、諦めきれずに躍起になって仕事を片付けて駆けつけた」
そして、急いで会場の店に向かう蒼士と、一人あぶれて寂しく帰宅する途中のモカが出会った。
あの、地下鉄の出入り口で。
「直ぐわかった。やっと会えた、と思った」
あれが、そんなドラマチックな場面だったなんて…。
「絶対、離したくなかったけど、焦ったら駄目なのは解ってた。徐々に距離を縮めるつもりだったんだ。そっと、慎重に。…本当に、初っぱなからあんな事をするつもりはなかった」
「いきなりあのベロチュウ…凄かったね」
「ごめん」
蒼士は顔を覆った。
モカはその手をそっと外して、ぎゅっと握った。
「見つけてくれてありがとう、蒼士。待っててくれて、嬉しい」
「モカ…」
ずっと傍観者だった自分が、誰かに七年もの間想われていたなど思いもよらなかった。
「私ね、花枝ちゃんが現れて、それで思い込んじゃったんだ。蒼士と縁を結ぶために、私が呼び寄せたんだって」
「そんなことはあり得ない」
「ごめんね。だって、それまでそんなんばっかりだったんだもん」
蒼士はモカを再び抱き寄せた。
「俺こそ気付いてやれなくてごめん。あの後、伯母さんに説教されてやっと解ったんだ。浅緋と二人で反省した。そんで、伯父さんにもまた叱られて」
「そうらしいね。ごめんね、私が勝手に暴走しただけなのに」
「きちんと話してこい、って言われたんだ。期は充分満ちてるって」
慎重になるあまり臆病になり、言葉足らずになってしまった蒼士。
苦い経験から傷付く事を恐れて気持ちを告げられなかったモカ。
それでもこうして再会できたのは、やっぱり運命だから?
いや、それも勿論あるだろうが、蒼士が諦めずにモカに会いに来てくれなかったら、ここにこうして二人でいることは叶わなかっただろう。
「はっきり気持ちを告げないまま先に抱いちまったから、不安だったろう?」
「私もハッキリ自覚したのはあの後だったから良いんだよ。もうわかってるし、これからは信じるだけだもん」
モカは顔を上げて微笑んだ。
「また俺の専属になってくれんの?」
「当然だよ。そこは誰にも譲れないよ!」
蒼士の顔が近付き、モカの唇を優しく食んだ。
吐息が絡まり、何とも言えない幸福感が全身に押し寄せる。
「大好き、蒼士」
離れた唇を指でなぞりながら、溢れ出た素直な気持ちを囁く。
「馬鹿野郎、俺の方がもっと好きだ」
素直な愛の言葉の応酬で、二人は溶け合い、深く結びついていく。
「なあ、もっと実感したいんだけど」
蒼士の熱い掌がモカの背中から腰を官能的に撫でる。
「そう言えば私達って儀式の後しかシたことないね。…反動無しで、勃つの?」
「お前失礼だぞ、俺は至って健康な26歳の青年だ!」
「普通に盛ってると…」
「いつも盛ってる訳じゃねぇよ、猿扱いすんな」
蒼士はモカの胸元に顔を埋めた。
夏物の薄手のシャツ越しに熱い息が吹き掛けられ、モカは身を震わせた。
「なあ、抱かせて。もう俺、お前以外は無理なんだよ。こんな身体にしちまった責任取れよ」
モカはクスクスと笑った。
「おねだりなのか脅迫なのかどっちなの」
「どっちでも良いよ。なあ、今すぐ抱きたい」
モカは込み上げる愛しさのまま蒼士の頭を抱き締め、囁いた。
「私も。蒼士とシたい、今すぐ」
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