星の誓い〜異国の姫はアイスブルーの騎士に溺愛される〜

すなぎ もりこ

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11.舞踏会-2

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「カリーナ殿下をお連れしました」

侍女長が恭しく頭を下げた。
アルフレッドはカリーナの手を取ると口付け、夢見るような瞳でもって囁いた。
 
「一段と美しいね。他の男に見せたくないな」

カリーナは甘い言葉に動揺しながらも、横目でちらと侍女長を見た。
侍女長は呆気にとられた表情でアルフレッドを見上げていたが、我に返り、例の小箱の蓋を開けて掲げた。
 
「閣下、こちらを」 

アルフレッドは頷くと小箱から琥珀色の小さなピアスを取り出して右耳に付けた。 

(うん?) 

「いってらっしゃいませ」 

侍女長は、空になった箱を抱えたまま、再び頭を垂れた。
アルフレッドの腕に手を預けて会場へと向かう道すがら、カリーナは尋ねた。

「ねえ、そのピアス、私のとデザインが一緒なのね」 
「そう。気付いた?」

左に立つアルフレッドが魅惑的に微笑んで、左手をベールの下からくぐらせ、カリーナの右耳に触れた。
カリーナはその突然の振舞いに思わず身体を震わせてしまった。
 
「また!気安く触らないで!」

 カリーナはアルフレッドの手を掴んで押し返した。
アルフレッドは眉を下げて恨みがましそうに見てくる。
 
「これでももっと君に触れたいのを我慢しているのに」
「更に我慢しましょう」 
「カリーナが僕に触れるのは大歓迎だよ」 
「触らないし」
 
先方がざわついてきたところで、アルフレッドはカリーナの腰を掴んで向き合わせた。
 
「また……何?どうしたの?」

アルフレッドは身を屈め、左に顔を寄せて囁いた。 

「今夜僕らはパートナーの瞳の色を身に付けている。これはお互いを守るための防具の意味もあるんだ」 

カリーナははっとした。
カリーナのピアスとペンダントトップはネイビーブルー、アルフレッドのピアスは琥珀色だ。
 
「にも関わらず、図々しくも割り込んでくる者が現れたら…」 

カリーナは左を見た。
アルフレッドのネイビーブルー瞳が暗く光る。

「男であろうと女であろうと容赦しない」 

かなり物騒な台詞だが、カリーナは何故か胸が高鳴った。
夜空のような深い青の瞳から目が離せない。
アルフレッドは、元の位置に戻ると、カリーナに言葉を継いだ。

「なるべく僕の側を離れないで」 

カリーナは頷いた。

「わかったわ」 

入場したとたん、眩しい照明に目がチカチカし、次に人熱れに襲われた。
歩を進める毎に周囲の視線を浚っていく感覚を肌に感じる。
園遊会の時より閉鎖された空間では空気のざわめきがより伝わるようだ。

「視線で殺されそう」
 
カリーナが呟くと、アルフレッドは腕に置かれたカリーナの手にそっと自らの手を添えて囁いた。

「今は僕だけを意識して」 

カリーナは頷いて腕から伝わるアルフレッドの体温に集中した。
話し掛けたくてウズウズしている周囲の面々には目もくれず、2人はずんずんと進んでいく。

(何処に向かっているのかしら。このまま舞踏会が終わるまで、会場をぐるぐる回遊し続けるつもりだったりして)

それはそれで面白いな…
どうやらくだらない妄想に耽る余裕は出てきたようだ。
 
「バイオレット副騎士団長」

呼び止められてカリーナは我に返った。
隣から小さく舌打ちをする音が聞こえる。 

「宰相閣下。奥方もお久しぶりです」

さすがに目上からの声は無視するわけにはいかないわよねぇ。
カリーナは笑みを浮かべてアルフレッドに寄り添った。
それを皮切りに次々と話し掛けられることになったが、アルフレッドは常に必要最小限の会話で素っ気なく去ることを徹底した。
カリーナを隠すように前に出るので、カリーナは挨拶さえ出来ない。
仕方がないので去り際ににっこり笑って会釈するということを繰り返す内に疲労してきた。 
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