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12.ダンスダンス-1
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少し落ち込んでいる隣の男に声をかけた。
「あの、せっかくだから一曲踊る?」
気持ちは疲れているが、身体を動かせば気分転換になるかもしれない。
実を言えばダンスは余り自信がない。
一通りはマナーとして学んだが、実践経験がほとんどないのだ。
「出席した手前、一曲は踊った方が良いと思うけど…カリーナは大丈夫なの?」
「少なくともダンスをしている間は、呼び止められないわよね。といっても自信はないから、失敗しそうになったら、魔術で何とかしてよ」
カリーナは人差し指をくるくる回した。
「そんな使い方をしたことないなぁ」
アルフレッドは苦笑いした。
もちろんカリーナも冗談のつもりだった。
アルフレッドとのダンスは思いの外楽しかった。他のペアらが大人しく身体を揺らしている傍らで、アルフレッドはカリーナを独楽を回すが如く、くるくるターンさせた。
一回やったところ、カリーナが面白がってねだったのだ。
そんなわけで当然の如く周囲の注目を浴びているのだが、ダンスに集中しているカリーナは全く気にならなかった。
カリーナのベールとドレスがターンする度に揺れる。
表情はベールではっきり見えないが、羽のように軽くステップを踏む異国の姫君は明らかに楽しそうで、見ているこっちまで笑顔になるほどなのだが、隣で姿勢も表情も崩さず姫を回し続ける騎士が異様に怖い。
曲の終盤に差し掛かった時、アルフレッドはカリーナを空中に放り投げた。
周囲から驚いた声や悲鳴が上がる。
カリーナは驚く間もなく身体を空中でクルクル回転させられ、3回転したところでスポッとアルフレッドの腕に収まった。
大歓声が鳴り響く中で、何が起きたのかわからないカリーナは呆けていた。
アルフレッドはカリーナを抱えたまま、猛スピードで走りだした。
階段を駆け上がり、着いたのは人気の無い宮殿の展望台だった。
アルフレッドはカリーナの腰を掴んで、そっと地面に下ろした。
「本当にやるとは思わなかった」
カリーナは目の前の男を見上げ、堪えきれずに吹き出した。
「君がやれって言ったんじゃないか」
アルフレッドは少し乱れた呼吸を整えながら嘯いている。
カリーナはひとしきり笑った後、その場でクルクル回り出した。
「あー、でも楽しかったな。あんなダンス初めて」
アルフレッドは手摺に凭れてその様子を眺めている。
「大誤算だよ。あんなに注目を集める予定じゃなかった」
カリーナは回転を止めてアルフレッドを見た。
「確かにまたご令嬢達の恨みを買ったかもしれないけど、私は良い思い出が出来て満足よ。こんなダンス、アルフレッドとじゃなきゃ二度と出来ないわ」
途端、急に吹いてきた風に背中を押されて運ばれた。
一回転して気付けば、再びアルフレッドの腕の中で背後から抱き締められていた。
「あの、せっかくだから一曲踊る?」
気持ちは疲れているが、身体を動かせば気分転換になるかもしれない。
実を言えばダンスは余り自信がない。
一通りはマナーとして学んだが、実践経験がほとんどないのだ。
「出席した手前、一曲は踊った方が良いと思うけど…カリーナは大丈夫なの?」
「少なくともダンスをしている間は、呼び止められないわよね。といっても自信はないから、失敗しそうになったら、魔術で何とかしてよ」
カリーナは人差し指をくるくる回した。
「そんな使い方をしたことないなぁ」
アルフレッドは苦笑いした。
もちろんカリーナも冗談のつもりだった。
アルフレッドとのダンスは思いの外楽しかった。他のペアらが大人しく身体を揺らしている傍らで、アルフレッドはカリーナを独楽を回すが如く、くるくるターンさせた。
一回やったところ、カリーナが面白がってねだったのだ。
そんなわけで当然の如く周囲の注目を浴びているのだが、ダンスに集中しているカリーナは全く気にならなかった。
カリーナのベールとドレスがターンする度に揺れる。
表情はベールではっきり見えないが、羽のように軽くステップを踏む異国の姫君は明らかに楽しそうで、見ているこっちまで笑顔になるほどなのだが、隣で姿勢も表情も崩さず姫を回し続ける騎士が異様に怖い。
曲の終盤に差し掛かった時、アルフレッドはカリーナを空中に放り投げた。
周囲から驚いた声や悲鳴が上がる。
カリーナは驚く間もなく身体を空中でクルクル回転させられ、3回転したところでスポッとアルフレッドの腕に収まった。
大歓声が鳴り響く中で、何が起きたのかわからないカリーナは呆けていた。
アルフレッドはカリーナを抱えたまま、猛スピードで走りだした。
階段を駆け上がり、着いたのは人気の無い宮殿の展望台だった。
アルフレッドはカリーナの腰を掴んで、そっと地面に下ろした。
「本当にやるとは思わなかった」
カリーナは目の前の男を見上げ、堪えきれずに吹き出した。
「君がやれって言ったんじゃないか」
アルフレッドは少し乱れた呼吸を整えながら嘯いている。
カリーナはひとしきり笑った後、その場でクルクル回り出した。
「あー、でも楽しかったな。あんなダンス初めて」
アルフレッドは手摺に凭れてその様子を眺めている。
「大誤算だよ。あんなに注目を集める予定じゃなかった」
カリーナは回転を止めてアルフレッドを見た。
「確かにまたご令嬢達の恨みを買ったかもしれないけど、私は良い思い出が出来て満足よ。こんなダンス、アルフレッドとじゃなきゃ二度と出来ないわ」
途端、急に吹いてきた風に背中を押されて運ばれた。
一回転して気付けば、再びアルフレッドの腕の中で背後から抱き締められていた。
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