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18.知りたい-1

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翌朝、侍女長から、アルフレッドから数日護衛が出来ないという伝言を告げられた。
どこかへ出掛ける際には、ノーラかキースを護衛につける、とのことだった。
カリーナは考えた。
まさか、もう二度とアルフレッドはカリーナと会わないつもりなのだろうか。
だとしたら、何が理由なのだろう。
あの日のマルコとの会話がそうさせたのだろうか。
元々、アルフレッドによって、無理やり滞在させられている身だ。
負い目があるのはガルシアの方。
国王に申し出れば直ぐにでも帰国は叶うだろう。
でも、カリーナはそうするつもりはなかった。

(散々振り回しておいて、今更突き放すなんて良い度胸じゃないの)

昨晩のマルコの発言から生まれた疑問と、今朝のアルフレッドから距離を置かれた事実により、カリーナの導火線に火が付いた。
カリーナは、侍女長にガルシア国王への謁見を申し出た。
生誕祭の終了と共に来賓のほとんどは帰国する。
帰国前に国王との会談を望む声が殺到しているため、国王は多忙を極めているらしく、カリーナの謁見が叶うのは翌日の午後だと後程伝えられた。
結局、その日は出掛ける気になれず、終日部屋で過ごした。

夜、カリーナの部屋に花束が届けられた。
アルフレッドからだ。
カリーナの瞳の色と同じオレンジ色の花弁に銀葉の可愛い花だ。

「メルベの花です。花言葉は、『離れても君を想う』です。バイオレット殿自らご用意されたようです。想われていらっしゃいますわね、カリーナ殿下」

花を用意する余裕があるなら、少しでも顔を見せれば良いのに…
カリーナの拗ねた様子を見て、侍女長があらあらという表情で笑ったので、カリーナは、少し恥ずかしくなって俯いた。





翌日の午後、カリーナが案内されて執務室に入ると、机に向かって書類にサインをしていた若きガルシア国王はペンを止めて顔をあげた。
カリーナにソファーに座るように促すと、自らも向かいの席に移動した。

「私に話があるとのことだが、何か不都合な事でもあったかな?」

カリーナは背筋を伸ばしてニッコリ笑った。

「いいえ。皆さんに良くしていただいておりますし、色々な体験が出来て毎日楽しく過ごしております。すっかりガルシア王国が好きになりましたわ」
「それは良かった」

国王は目尻にシワを寄せて微笑んだ。
そして、一瞬視線を落とすと、うかがうように聞いた。

「アルフレッドは上手くやっているだろうか?あやつは優秀な男だが、女性の機微には疎くてね。貴女に失礼なことをしでかしていないかな?」
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