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19.再会-1

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翌日の朝、カリーナはノーラに先導されて魔道騎士棟の渡り廊下を歩いていた。
ふとノーラが振り返り、カリーナを手招きした。

「こちらから騎士の訓練がご覧いただけます。副団長もいらっしゃいますよ」

カリーナは渡り廊下の手摺から下を見下ろした。
訓練着の騎士達が2人1組で剣を振るっている。
数百人はいる中で、しかも3階の高さからは顔の判別は難しいが、アルフレッドのことはすぐ見付ける事ができた。
体格の良い騎士達の中にあって細身の彼は、しかし、誰よりも俊敏で空を駆けるように剣を振るい、5、6人を相手に次々と薙ぎ倒していく。
カリーナは思わず見惚れた。

「さすがにお強いですね。あれで魔術は一切使っていらっしゃらないのですから…」

傍らのノーラも羨望の眼差しで見つめている。
更に奥に目をやると、明らかにゴデュラ団長と思われる人物が、枝を払うかのように、騎士を吹っ飛ばしていた。
両脇に折り重なるように騎士の山が出来あがっている。

「あれはゴリラです」

ノーラは真顔で言い切った。


渡り廊下の正面にある螺旋階段を登りきると重厚な扉が現れた。
ノーラが扉に刻まれた魔方陣に掌を重ねると、ゼンマイを巻くような音をたてて扉がゆっくり開いた。
カリーナは息を飲んだ。
真っ青な空の中に浮かんだ真っ白な通路。
両手を広げた程の道幅に、腰ほどの高さの繊細なアイアンの手摺が付いている。
前方に見える塔は遠く、靄がかっている。
ノーラがカリーナの後ろに下がった。

「ここから先はカリーナ様お一人でお進みください」
カリーナは目を見開いたまま、ノーラを振り返る。
「私は立ち入りを許されておりませんので…」

ノーラは申し訳なさそうに眉を下げた。


高い所は苦手ではないが、さすがに足がスースーして喉元がきゅっとなる。
下を見下ろすが何も見えないのは、ここが魔術によって切り離された空間だからなのだろうか。
魔術にはとんと詳しくないカリーナにはわからない。
とりあえず、前を見据えて歩いた。
冷や汗をかきながらたどり着いた扉の前には小さな黒板がかけられていた。
風でカタカタ揺れているそれに白い文字で書かれている文字をたどる。
そういえば国王が言っていた。部屋に入るまでがたいへんだと。

『ボナパルトの愛読書の名前は何か?』

カリーナは、息を飲んだ。
胸がドキドキ高鳴る。
国王はこうも言っていた。
カリーナなら大丈夫だろうと。
カリーナは、黒板に紐で結わえてあったチョークを手にとって、震える手で余白に書き込む。
そう、カリーナにはこの謎が解ける。
ボナパルトは隠れ里の村長の名前、
彼の愛読書は『超・レイチェル天文解読書入門編』だ。
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