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21.諦めるな-1
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晩餐用の貴賓室に到着すると、フランツ王子とマルコは既に席についていた。
カリーナが招待へのお礼を述べて席についてふと横を見ると、フランツ王子がじっとカリーナを凝視している。
「フランツ王子、どうかされましたか?」
マルコがからかうように言った。
「フランツ王子はカリーナ姫に見惚れてらっしゃるんでしょう。ベールを取った貴女を見るのは初めてだから」
フランツ王子は頬染めて俯いた。
ここ数日はベールを被ることを止めていた。騎士の扮装をした時点で周囲には素顔を見られていたし、ベールをすることで逆に目立つことにも気付いていたからだ。
「いえ、思ったよりお若いのだな、と思って…お話していると、しっかりしていらっしゃるから」
フランツ王子は吃りながら言う。
「あら、がっかりさせてしまったかしら」
「いえ!寧ろたいへんお可愛らしくて、あの…見とれてしまいました」
フランツ王子は食い気味に否定し、更に真っ赤になってしまった。
カリーナもつられて照れ臭くなってしまった。
「本当に、ベールをしていただいて良かった。でないと、ライバルが増えて往生したでしょうからね」
マルコはまたもやカリーナの手を取ったので、カリーナは微笑みながら引き抜いた。
暫し、歓談しながら料理を楽しんだ。
「ミネシア国経由で帰国する予定なのですよ。茶葉の生産地を見学させていただこうと思いまして」
マルコとフランツ王子の一向は明朝に一緒に出立するらしい。
「ミネシアは温泉も豊富なんですよね。温泉街の賑わいも噂に聞きますわ。私も一度行ってみたいですね」
「美肌の効用もあるので、是非。温泉街のランプ通りは幻想的で好評なんです。おすすめします」
マルコが身体を寄せて囁く。
「それならば、カリーナ姫も一緒にどうです?温泉街には贅沢な宿泊施設もあると聞きますよ。そのあとは、我が国に来ていただけると嬉しいな」
フランツ王子がハラハラしながら見ている。
「私はガルシア国でまだすることがありますので、まだしばらくはこちらにお世話になるつもりです」
カリーナはきっぱりと言い切った。
マルコが笑みを消して眉を寄せた。
「…することとは?」
「詳しくは申し上げられません。ただ、私がガルシア国に来た本来の目的を果たすためだと申し上げておきますわ」
マルコは怪訝な表情でカリーナを見ている。
フランツ王子が唾を飲み込む音が聞こえた。
食事が終わり、暇の挨拶をするマルコをカリーナは呼び止めた。
フランツ王子は心配そうにカリーナを一寸見た後に気を利かせて部屋を出ていった。
「お話があります」
マルコは諦めたようにため息をついた。
「粗方予想はつきますが、聞きたくないな」
「縁談の申し出は、お断りさせていただきます」
マルコは、両手を額に当てて暫くそうしていたが、カリーナに向き合って尋ねた。
「理由をお聞かせいただいても?」
「私の望むものがわかったからです」
「それは私には与えられないものだと?」
カリーナは少し考えた後、首を振った。
「そうではなく、私は自分で掴みに行きたいんです。与えられたものを享受するだけじゃなく。もう、物分かりが良い振りをして、諦めるのは止めようと思います。逃げるのも」
マルコは腕を組んで椅子の背もたれに身体を預けた。
「そのお気持ちには賛同します。私もずっとそう思ってきましたから。…尚更惜しいですね。私達は良いパートナーになれると思うのだけど」
マルコは姿勢を正すと、手を差し出した。
「かといって、これ以上しつこくして貴女に嫌われるのも本意じゃありません。貴女にお会い出来て良かった。貴女の望みが叶うことを祈っています」
カリーナはマルコの手を握った。
長い睫毛に縁取られた瞳を細めて微笑むマルコは、やはり大人で魅力的だ。
周りの女性は放って置かないだろう。直ぐに良い人が見つかりそうである。
その時、背後でドアが開く音が聞こえた。
カリーナは振り返ろうとしたが、マルコに手をグイと引っ張られて叶わなかった。
それどころかマルコの胸に抱き込まれてしまった。
カリーナが招待へのお礼を述べて席についてふと横を見ると、フランツ王子がじっとカリーナを凝視している。
「フランツ王子、どうかされましたか?」
マルコがからかうように言った。
「フランツ王子はカリーナ姫に見惚れてらっしゃるんでしょう。ベールを取った貴女を見るのは初めてだから」
フランツ王子は頬染めて俯いた。
ここ数日はベールを被ることを止めていた。騎士の扮装をした時点で周囲には素顔を見られていたし、ベールをすることで逆に目立つことにも気付いていたからだ。
「いえ、思ったよりお若いのだな、と思って…お話していると、しっかりしていらっしゃるから」
フランツ王子は吃りながら言う。
「あら、がっかりさせてしまったかしら」
「いえ!寧ろたいへんお可愛らしくて、あの…見とれてしまいました」
フランツ王子は食い気味に否定し、更に真っ赤になってしまった。
カリーナもつられて照れ臭くなってしまった。
「本当に、ベールをしていただいて良かった。でないと、ライバルが増えて往生したでしょうからね」
マルコはまたもやカリーナの手を取ったので、カリーナは微笑みながら引き抜いた。
暫し、歓談しながら料理を楽しんだ。
「ミネシア国経由で帰国する予定なのですよ。茶葉の生産地を見学させていただこうと思いまして」
マルコとフランツ王子の一向は明朝に一緒に出立するらしい。
「ミネシアは温泉も豊富なんですよね。温泉街の賑わいも噂に聞きますわ。私も一度行ってみたいですね」
「美肌の効用もあるので、是非。温泉街のランプ通りは幻想的で好評なんです。おすすめします」
マルコが身体を寄せて囁く。
「それならば、カリーナ姫も一緒にどうです?温泉街には贅沢な宿泊施設もあると聞きますよ。そのあとは、我が国に来ていただけると嬉しいな」
フランツ王子がハラハラしながら見ている。
「私はガルシア国でまだすることがありますので、まだしばらくはこちらにお世話になるつもりです」
カリーナはきっぱりと言い切った。
マルコが笑みを消して眉を寄せた。
「…することとは?」
「詳しくは申し上げられません。ただ、私がガルシア国に来た本来の目的を果たすためだと申し上げておきますわ」
マルコは怪訝な表情でカリーナを見ている。
フランツ王子が唾を飲み込む音が聞こえた。
食事が終わり、暇の挨拶をするマルコをカリーナは呼び止めた。
フランツ王子は心配そうにカリーナを一寸見た後に気を利かせて部屋を出ていった。
「お話があります」
マルコは諦めたようにため息をついた。
「粗方予想はつきますが、聞きたくないな」
「縁談の申し出は、お断りさせていただきます」
マルコは、両手を額に当てて暫くそうしていたが、カリーナに向き合って尋ねた。
「理由をお聞かせいただいても?」
「私の望むものがわかったからです」
「それは私には与えられないものだと?」
カリーナは少し考えた後、首を振った。
「そうではなく、私は自分で掴みに行きたいんです。与えられたものを享受するだけじゃなく。もう、物分かりが良い振りをして、諦めるのは止めようと思います。逃げるのも」
マルコは腕を組んで椅子の背もたれに身体を預けた。
「そのお気持ちには賛同します。私もずっとそう思ってきましたから。…尚更惜しいですね。私達は良いパートナーになれると思うのだけど」
マルコは姿勢を正すと、手を差し出した。
「かといって、これ以上しつこくして貴女に嫌われるのも本意じゃありません。貴女にお会い出来て良かった。貴女の望みが叶うことを祈っています」
カリーナはマルコの手を握った。
長い睫毛に縁取られた瞳を細めて微笑むマルコは、やはり大人で魅力的だ。
周りの女性は放って置かないだろう。直ぐに良い人が見つかりそうである。
その時、背後でドアが開く音が聞こえた。
カリーナは振り返ろうとしたが、マルコに手をグイと引っ張られて叶わなかった。
それどころかマルコの胸に抱き込まれてしまった。
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