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スピンオフ:【マルコの初恋】柔らかな感触と劣情(18R)

抑えきれない感情

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「ボス、痛いです」

人気も少ない通りにさしかかったところでリズデが訴えた。
マルコは、はっとして腕を離す。

「大丈夫ですか?何だか今夜のボスはおかしいですよ」

マルコはリズデを振り返る。
マルコが付き合わせたせいで、息が少し乱れ、頬が紅潮している。
エメラルドグリーンの大きな瞳が潤んで見える。
今すぐ掻き抱きたい衝動に駆られて、マルコは後ずさった。

…無理だ。

マルコは、悟った。
今まで女達に使ってきたテクニックなど何一つ通用しない。
いや、使えないのだ。感情を抑えきれない。偽れない。

「リズデ、俺は今、恋をしている」

リズデは、マルコの突然の告白にポカンとして暫く呆けていたが、戸惑いながらも言葉を返した。

「ああ、なるほど…。さすがのボスでも恋の前では感情の抑制が効かなくなるものなのですね…。勉強になります。…といっても、ちょっと極端すぎやしませんか?仕事に支障がでそうで心配です」
「別れた後から直ぐ会いたくなるし、始終彼女のことを考えてしまう」
「え?はぁ…」
「目で追ってしまうし、耳は声を拾ってしまう」
「へぇ…」
「話す言葉ひとつ、仕草ひとつひとつが気になってしようがない」

リズデは両手を組み合わせてゴクリと唾を飲み込んだ。

「それは紛れもなく恋ですね」
「どうすれば良いと思う?」

マルコは街道脇のベンチに腰掛けると両手で顔を覆う。
指の隙間から正面に立つリズデを上目遣いでそっとうかがった。
リズデは一瞬、唇を噛んで何かに耐えるような表情をした。
マルコの胸が高鳴る。
そうだ…。リズデの想い人が俺ということもあり得るじゃないか。
週末のほとんどはルビーと過ごし、夜は始終マルコと飲む、という生活を過ごしているはずのリズデに、男の入り込む隙などあるか?
魅力的な大人で恋人がたくさんいる…まさにマルコに当てはまる。
客観的に見て、最低だが。

「すみません、ボス。それは協力も助言も出来ません。私では力不足ですし…」

リズデは言い淀んでいる。
俺に好意を持っているから協力したくないのか?
幸せな妄想に心を沸き立たせるマルコだったが、次のリズデの告白で一気に冷えた。

「先日は、予定はないと言いましたが、実は、近い内に実家に戻るつもりなのです」

「は?」
「養父母と実父母から、王都で勤務するならば5年のみ、後は、領地に戻って図書館で働くようにという条件を出されておりまして。…なので、もう、ボスには付き合えません。誰か他の面倒見役を探して下さい」
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