85 / 95
スピンオフ:【マルコの初恋】柔らかな感触と劣情(18R)
恋とはかくも…
しおりを挟む
マルコは、ベンチから立ちあがり、リズデに駆け寄ると背後から抱き締めた。
リズデは身を固くしている。
「駄目だ」
「…そういうの、止めていただけませんか?最近、ボスの距離感がおかしいです。ちゃんと部下と上司の適切な距離というものを守って下さい」
リズデはふりほどこうともがいている。
「離したくない」
リズデは、ため息をついて力を抜いた。
「悪酔いしたんですかね?そんなに飲んでなかったと思うんですが…」
「何処にも行かせない。お前は俺の側にいるんだ」
「それは、在職強要ですよ」
「リズデのことが好きだ」
リズデは、胸の上に回されたマルコの腕をポンポン叩いた。
「ハイハイ、わかりました。そういうのは、その恋するお相手にどうぞ」
「俺はお前に恋している」
「ハイ…は?」
マルコはリズデの腰を持って向かい合わせ、その両手を掴んで自身の胸元に引き寄せた。
瞳を合わせて真剣に伝わるように願う。
「リズデのことが好きだ」
リズデはエメラルドグリーンの瞳で瞬きせずにマルコを見ている。
「えっと…ちょっと待って下さい…いつからそんなことに?」
「自覚したのは最近だ」
「…やっぱり、私のこの外見ですか」
リズデはちょっと傷ついたかというように小首を傾げて目を伏せた。
「いや、そうじゃなくて、きっかけは、リズデが襲われたあの夜だ」
マルコは、その先を話すことに少し躊躇した。
恋の始まりとしては、余りに不純だろうか。
「リズデの腕に触れて、欲情した」
リズデは再び固まった。
目を見開いてマルコを見つめ、その後、真っ赤に顔を染めた。
「そ、それは恋なのでしょうか?考え難いですが、そういう対象ってだけでは…」
それだけなら、こんな独占欲に支配されないだろう。
それに、身体だけではない、リズデの全てを欲していると自信を持って言える。
「リズデ、俺のものになってくれ」
リズデは顔を反らした。
「ボス、私は他の遊び慣れた女性達とは違うんです。ボスに満足していただけないと思います。まず、衝動的にそういったことは出来ません」
「お前で遊ぶつもりはない」
マルコは必死で訴えた。
どう言えば伝わるだろう。
どうすれば、この娘が手に入るのだろう。
「初めてなんだ。この先もずっと一緒にいたいと望むのは」
これまで刹那的に恋愛を楽しんできた身だから我ながらにわかに信じ難いが、これほどまで誰かに執着し、未来まで手に入れたいと思ったのは初めてだ。
リズデはその言葉に少なからず動揺したようだ。
「もし、リズデが他の誰かを好きだというなら、奪うまでだ」
マルコの手の中でリズデの手がびくりと震えた。
やがてリズデは決意したように顔を上げ、マルコの目を真っ直ぐに見た。
「わかりました。…では、奪って下さい。ずっと不誠実なヴォクシー閣下に恋していた私を、私に恋する貴方が」
マルコはリズデを抱き寄せた。
胸から沸き上がる感情が、身体中を満たしていく。
踊り出したいほどの高揚感だ。
その素晴らしい現象には、もう既に名前がついている。
マルコは初めて理解した。
恋とはかくも素晴らしいものであると。
リズデは身を固くしている。
「駄目だ」
「…そういうの、止めていただけませんか?最近、ボスの距離感がおかしいです。ちゃんと部下と上司の適切な距離というものを守って下さい」
リズデはふりほどこうともがいている。
「離したくない」
リズデは、ため息をついて力を抜いた。
「悪酔いしたんですかね?そんなに飲んでなかったと思うんですが…」
「何処にも行かせない。お前は俺の側にいるんだ」
「それは、在職強要ですよ」
「リズデのことが好きだ」
リズデは、胸の上に回されたマルコの腕をポンポン叩いた。
「ハイハイ、わかりました。そういうのは、その恋するお相手にどうぞ」
「俺はお前に恋している」
「ハイ…は?」
マルコはリズデの腰を持って向かい合わせ、その両手を掴んで自身の胸元に引き寄せた。
瞳を合わせて真剣に伝わるように願う。
「リズデのことが好きだ」
リズデはエメラルドグリーンの瞳で瞬きせずにマルコを見ている。
「えっと…ちょっと待って下さい…いつからそんなことに?」
「自覚したのは最近だ」
「…やっぱり、私のこの外見ですか」
リズデはちょっと傷ついたかというように小首を傾げて目を伏せた。
「いや、そうじゃなくて、きっかけは、リズデが襲われたあの夜だ」
マルコは、その先を話すことに少し躊躇した。
恋の始まりとしては、余りに不純だろうか。
「リズデの腕に触れて、欲情した」
リズデは再び固まった。
目を見開いてマルコを見つめ、その後、真っ赤に顔を染めた。
「そ、それは恋なのでしょうか?考え難いですが、そういう対象ってだけでは…」
それだけなら、こんな独占欲に支配されないだろう。
それに、身体だけではない、リズデの全てを欲していると自信を持って言える。
「リズデ、俺のものになってくれ」
リズデは顔を反らした。
「ボス、私は他の遊び慣れた女性達とは違うんです。ボスに満足していただけないと思います。まず、衝動的にそういったことは出来ません」
「お前で遊ぶつもりはない」
マルコは必死で訴えた。
どう言えば伝わるだろう。
どうすれば、この娘が手に入るのだろう。
「初めてなんだ。この先もずっと一緒にいたいと望むのは」
これまで刹那的に恋愛を楽しんできた身だから我ながらにわかに信じ難いが、これほどまで誰かに執着し、未来まで手に入れたいと思ったのは初めてだ。
リズデはその言葉に少なからず動揺したようだ。
「もし、リズデが他の誰かを好きだというなら、奪うまでだ」
マルコの手の中でリズデの手がびくりと震えた。
やがてリズデは決意したように顔を上げ、マルコの目を真っ直ぐに見た。
「わかりました。…では、奪って下さい。ずっと不誠実なヴォクシー閣下に恋していた私を、私に恋する貴方が」
マルコはリズデを抱き寄せた。
胸から沸き上がる感情が、身体中を満たしていく。
踊り出したいほどの高揚感だ。
その素晴らしい現象には、もう既に名前がついている。
マルコは初めて理解した。
恋とはかくも素晴らしいものであると。
0
あなたにおすすめの小説
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
王妃は涙を流さない〜ただあなたを守りたかっただけでした〜
矢野りと
恋愛
理不尽な理由を掲げて大国に攻め入った母国は、数カ月後には敗戦国となった。
王政を廃するか、それとも王妃を人質として差し出すかと大国は選択を迫ってくる。
『…本当にすまない、ジュンリヤ』
『謝らないで、覚悟はできています』
敗戦後、王位を継いだばかりの夫には私を守るだけの力はなかった。
――たった三年間の別れ…。
三年後に帰国した私を待っていたのは国王である夫の変わらない眼差し。……とその隣で微笑む側妃だった。
『王妃様、シャンナアンナと申します』
もう私の居場所はなくなっていた…。
※設定はゆるいです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。
彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。
そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。
幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。
そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?
愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください
無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる