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スピンオフ:【マルコの初恋】柔らかな感触と劣情(18R)

リズデの思い人

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この雰囲気から口説くのはとてつもなく難しい、と内心頭を抱えていた。
お堅い女史を相手にする場合、有効なのは意外性の演出だったりするのだが、気心を知られたリズデ相手にそれが通用するとは思えない。
そこでふと、先日の会話を思い出した。

「それでも、リズデは恋をしたんだろう?」

マルコが思わず口からでた問いかけに、リズデは一瞬動きを止めた。

「そんなこと言いましたっけ?」

視線を不自然に逸らしてグラスに手を伸ばした。

「やけに、恋する心情に詳しかっただろ。それに関しちゃ、リズデが俺より先輩だ。詳しく教えてくれよ」
「参考にはなりませんよ。…私の想いは一方通行なので」

リズデは、目を伏せた。
長い睫が目下に影をつくる。
とたんにマルコは目の前が昏くなり、胸が締め付けられた。
同時に激しい嫉妬の炎が立ち上る。
やはり、想いを寄せる男がいるのだ。
リズデにこんな顔をさせる男が憎らしい。

「どんな男だ?何故、一方通行だと思うんだ?」

リズデは息をついた。
目の前に色鮮やかなフルーツタルトが乗せられたデザートの皿が運ばれてきたが、手を付けずに下を向いている。

「とても魅力的な大人の男性ですよ。私など眼中にないんです」

そう言ったとたん、ネガティブな感情をふりきるようにデザートを口に放り込み出した。

「そいつはリズデの変装していない姿を知っているのか?」

リズデはモグモグ咀嚼しながら頷いた。
そこまでリズデが心を許しているということか…

「まさか、既婚者ではないよな?」
「独身です。恋人は大勢いるようですが」

はあ?そんな不誠実な男にリズデをくれてなどやるものか。
マルコはもう、じっと座っていられなくなり、デザートを平らげようとするリズデに向かって言った。

「出るぞ!」

リズデは、突然のマルコの行動に驚いて顔を上げた。
残ったデザートを見て僅かに逡巡した後、フォークをテーブルの上に戻すと、慌ててマルコの後を追ってきた。

「ボス?いきなりどうしたんです」

船着き場に面した通りは人で賑わっている。
水上にデッキを張り出した造りのバーが並ぶ街は、涼しい海風の吹く中でも熱気を失わない。
マルコもなかなか冷静になれず、悶々と考えながら歩く内についつい早足になり、リズデが遅れていることに気づかなかった。

「離してください」

後方から聞こえた声に我に返った。
マルコが振り返るとリズデが男に絡まれている。
その手首を掴まれているのを見てマルコの頭に血が上った。
駆け戻り、男の手を引き剥がした。

「私の連れに無礼な行為は止めて貰おう」

突然現れた美形の紳士に凄まれて男はたじろいだ。
尚も男の胸倉を掴みそうになったマルコだが、リズデがマルコの腕を引っ張ったので何とか堪えた。
注目を浴びる中、マルコはリズデの腕を掴むと引きずるように連れ去った。
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