九番姫は獣人王の最愛となる

すなぎ もりこ

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【番外編☆側近達の番物語☆フォルクス編】子ぎつねはお団子を食べて恋を知る

それが恋というものだ

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「どうした?やっと調子が出たかと思えばまた鬱々に逆戻りか?」

シメオンに顔をのぞきこまれ、フォルクスはツンと顔を逸らした。

「なんでもありません。放っておいて下さい」
「今日は団子を食いに行かないのか?」
「…そんな日もあります」

お昼の休憩時間に抜け出して甘味屋に通うという日課をつい先日再開したフォルクスだったが、今日は食事も取らずに仕事を続けている。

「サリエとまた喧嘩でもしたのか?」
「サリエさんと喧嘩をしたことなどありません」
「ついこの間まで頑なに避けていたじゃないか。最近は仲良さげだったから、てっきり仲直りをしたのかと思っていたぞ」
「…」
「なにかあったのか?」
「…」
「あったんだろ?」

フォルクスはチラリと視線を上げて主の顔を見た。
予想に反して、シメオンは至極真面目な表情で見下ろしている。
いつもの面白がるような雰囲気は感じない。

「お前がそんな風になるのは大抵サリエ絡みだ」

フォルクスは素直に認めた。
その通りだ。
彼女だけがいつも冷静であろうとするフォルクスの心を乱す。
そして、またしても理由はわからないのだ。
フォルクスは、ポツリと漏らした。

「…何故なんでしょう。サリエさんが突然よそよそしくなったのです。その前日まではとても親しくしてくれていたのに」
「ふぅん?その前日とやらに何があったのか話してみろ」

フォルクスはシメオンに説明を始めたが、その内、口が止まらなくなってしまう。
煎餅屋の娘の事ばかりかその前の下品な雄との一件や、デート、そして、その前後のモヤモヤまでも堰を切ったようにシメオンに話してしまった。

シメオンは全てを聞いた後、腕を組みつつ指で顎を掻いた。

「うーん、それはお前、アレだな」
「は?アレとはなんです?」

シメオンは苦笑いを浮かべてフォルクスを見る。

「煎餅ならぬ焼きもちだな」
「は?ヤキモチ?誰がだれに?!」
「サリエがお前と煎餅屋の娘の仲に嫉妬したんだよ。それでもって、お前はサリエとデートする雄にずっと嫉妬してたわけだな。つまり…」
「つまり…?」

フォルクスはゴクリと唾を呑んだ。
嫉妬…まさか自分がそんな感情を持つなど。
嫉妬とは、つまり、己が持たぬ物を他人が持っていることを羨むこと。

「自分が相手にとって一番になりたい、特別でいたいのにそうじゃなかったことに対して落胆したんだ。そして、そんな風に扱ってくれない相手に腹を立てた」
「そんな、理不尽な」

シメオンは眉を上げてニンマリと笑った。

「理不尽だよなぁ、しかし、それが恋というものだ」

フォルクスはシメオンの言葉を反芻する。

恋。

誰が誰に?

「ま、ホントのところ俺にも良くわからんがな」

そう、シメオンにも未だ番は見つかっておらず、見目麗しく精力盛んなこの王子は刹那的な付き合いを繰り返している。
だからして、その見解を鵜呑みにする訳には…

だが、サリエが本当にあの煎餅屋の娘に嫉妬していたのだとしたら?
それは、サリエがフォルクスの特別になりたいと望んでいるということで、つまり、恋をしている?

フォルクスはガタンッと音を鳴らして席を立つ。

「ちょっと外出させて頂きます」
「おー、行ってこい。もう今日は戻らなくて良いぞ」

間延びした声を背中で聞きながら、執務室の扉を開ける。

「なんなら明日から暫く休んでも良いぞ~」

廊下を追いかけてきた声に応えることもせず、フォルクスは駆け出していた。
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