九番姫は獣人王の最愛となる

すなぎ もりこ

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【番外編☆側近達の番物語☆フォルクス編】子ぎつねはお団子を食べて恋を知る

餅は焼かないで

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客で賑わう甘味屋が見えた。
フォルクスは肩で息をしながら通りの真ん中からサリエを探す。
程なくお盆を掲げた赤毛の雌が暖簾を掻き分けて姿を現した。
彼女は瞬時にフォルクスを見つけ、暫く静止した後、慌てて視線を逸らして給仕にあたる。
フォルクスは焦燥のまま早足でズンズンと近づいた。
サリエは縁台に座る客の横に少々乱暴にお盆を置くと、急いで踵を返す。
フォルクスは暖簾の向こうに消えそうになる赤い髪を追う。
そして、寸前でその手首を捕まえた。
足を止め、固まる背中に声を掛ける。

「サリエさん、お話があります」
「えっと…今、仕事中だから」
「直ぐに済みます」
「仕事が終わってからじゃ駄目なの?」
「それが困ったことに待てないんです。私自身がこの状況に当惑してますが」

サリエはそろそろと振り向いたが、視線は伏せたままだ。

「な、なにかしら…私、何かした?」
「サリエさんはここ数日私の事を避けてますね」
「そ、そんな事ないわよ」
「私が訪れても、店から出てきてくれません」
「たまたま忙しかったのよ。裏でお団子を捏ねてたの」
「団子ではなく、餅を捏ねていたのでは無いですか」
「は?」

サリエはその妙ちきりんな言葉に思わず顔を上げ、フォルクスをまじまじと見た。
数日ぶりに近くで見る透明に近いグレイの瞳、その美しさにフォルクスは見惚れる。

「尚且つその餅を焼いていたのではないですか」
「何を…ウチはお煎餅屋じゃないわよ!お煎餅が食べたいのならチェカのお店に通えば良いと思うわ」

フォルクスは勝ち誇ったように微笑んだ。
サリエはムッとして、顔をプイと背けた。

「フォル君はお団子に飽きたんでしょ。無理やり押し付けて悪かったわ」
「団子は大好物ですし、全く飽きてもいません。サリエさん、お餅は焼く必要は無いんです」

サリエは暫く眉を寄せて考え込んでいたが、言葉の意味に思い当たったらしく、カッと頬を赤らめた。

「フォル君、その言い回しは頂けないわ!」
「すいません」
「フォル君って、本当にそういうとこ残念よね?カッコ良いし、強いし、優しいし、とても素敵なの…に…」

サリエは真っ赤になって黙り込んだ。

「サリエさんも素敵です。私にとっては誰よりも」
「…嘘よ」
「私は気の利いた事は言えませんが、サリエさんに嘘をついたことはありません」

サリエは上目でフォルクスを窺う。
その恥ずかしげな表情に、胸がグワシッと鷲掴みされたような心地になり、フォルクスは息を止めた。

「そうかも」
「私もずっとお餅を焼いていました。サリエさんが他の雄と親しくしているのを見る度に。もうお餅はたくさんです」

サリエはグレイの瞳を潤ませ、淡い桃色の唇を震わせる。

「私はサリエさんとずっと並んでくっついていたい。甘いタレで絡まりたいんです。お団子のように」
「フォル君、その口説き文句は一般的には30点だけど…」

サリエは微笑んで、フォルクスにガバッと抱きついた。

「私的には100点よ!」


甘味屋に訪れていた客達が囃し立てる中、二人は抱き合い、甘く眼差しを絡める。
サリエの両親は顔を見合わせて微笑み合う。

王都名物お団子カップルの誕生の瞬間だった。
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