九番姫は獣人王の最愛となる

すなぎ もりこ

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【番外編☆側近達の番物語☆フォルクス編】子ぎつねはお団子を食べて恋を知る

エピローグ②

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レッサードがフォルクスのデスクに寄りかかり、肩を竦めた。

「誤解を解くためにも、もう少しばかり国交に力を注いでも良いと思ってはいる。アナベルは反対しているが」
「王妃様は人でありながら相当な獣人贔屓ですからね。人間の方がよっぽど野蛮であるとお考えのようです」

フォルクスはクスクスと笑う。

獣人国の王は、圧倒的な力を持つ者が就任すると定められている。
血筋は優遇されるが、絶対ではない。
遡れば、歴代の君主の半数が平民の出だ。
五大村から選出される側近は、君主を支えると共にその圧政を防ぐ役割も担う。
獣人国を治めるに相応しくないと判断すれば、自らが仕える王を粛清する権利も与えられているのだ。
王政ではあるが、獣人国の根底にあるのは民主の思想だ。

「国内で争えば民は苦しむ。他に方法はなかったのかね」
「背景には利権がある。一生の贅沢と傅かれる立場にしがみつく業突張り同士の醜い争いです。それを国民のためと主張する」

シメオンは頬杖を付き、遠くを見るようにアメジストの瞳を細める。

「権力は心を狂わせる。いつか俺の目が曇り要らぬ牙を剥くことがあれば、遠慮なくお前らが喉笛を噛み切ってくれ」

側近達は一瞬シメオンに視線を向けて黙り込んだが、フォルクスが漏らした笑い声をきっかけに頬を緩めた。

「そんな事、万が一にも無いとは思いますが、まず王妃様が許しませんよ」
「アナベル様がシメオン様のしっぽを引っこ抜くさ」
「首輪をつけられる」
「正直さ、王妃様に顎をこちょこちょされるだけで鼻を鳴らして甘えるシメオン様が、歴代最強の王だなんて最近信じられないんだよね」

側近たちに口々に揶揄われ、シメオンはムゥと口を引き結んだ。

フォルクスは立ち上がると、シメオンの前に進み出た。

「貴方がそうならない為に私達がいるのです。敬愛する主よ。私達は貴方が獣人国の歴史に残る名君になると信じている。最後まで名君の側近としてお仕えさせて頂けますよう…それが、私共の望みです」

他の側近たちも背後に横一列に並び、揃って胸に手を当てた。
シメオンは背筋を伸ばし、頼もしい部下一人一人に目を向ける。
彼等はシメオンにとって親友であり、家族でもある。
心より信頼し、背中を預ける事ができる存在だ。
この優秀な側近たち無くしては名君と呼ばれる事は成し得ないに違いない。
そして、アナベルとマリオン。
愛する者の存在が、シメオンに涸れることのない力を与えてくれる。
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