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引き寄せられ、唇を合わせた。
ギヴのもう一方の手が、オレの顎を優しく固定する。その骨張った硬い指先に何故か体が震えた。
もう一度、と言ったのに、ギヴのキスはさっきまでのキスとは全然違う。
口の中にギヴの舌が入り込んで舐め上げていく。
「・・・んぅっ」
上顎を舐められて、思わず声を漏らした。
「ん、んっ、・・っ、ギヴ、っ・・!」
顔を振ってなんとかはずれた唇は、すぐにまた塞がれる。息が苦しい。ギヴの舌がオレの舌を絡め取り、すする。
力が抜けた手はギヴを押し返すことができなかった。
「もっと教えてください、ラド。──コレは?どうしたらいいですか?」
手を取られ、ギヴの股間に当てられた。──そこは、芯をもち、膨らんでいた。
「な!」
布越しとはいえ熱い、生々しい感覚に、とっさに逃げようと体を浮かせると、そのまま三人掛けのソファの上に押し倒された。
「・・・あ、・・らないっ。・・・知、らない・・っ」
「知らないんですか?いつもはどんなふうにしてるんです?」
「──ば、ばかっ!離せ、よ、・・離せ、ってば」
オレに覆い被さりながら、ギヴが荒い息を吐く。いつもの紳士然としたギヴじゃなかった。
──怖い。
「おーい。夕食の時間だべ~」
ドアの外からノックの音とテムの声。
そうだった。もうすぐ夕食だと言われていたのだった。
「・・・くっ」
ギヴがドアを睨みつけた。
どうやらギヴも忘れていたらしい。
「・・・あ、あの、すぐに行くよ。先に行ってて」
「おけ。でもなんか困ったことがあるなら大声で教えろよ。俺達は耳がいいからな」
今度はトールの声だ。
「──わざとか・・?」
ドアを睨みつけながら、不敵にギヴが嗤う。綺麗な顔が歪み、魔王のように凄みがある。見たことないけど。
「・・・ギヴ、・・夕食だって」
「──ええ。・・・すいませんでした。少し、箍が外れてしまいました。怖がらせてしまいましたね、すいません」
「だ、大丈夫。オレも男だし」
──男だから何だというのか。よくわからない返答をしてしまった。本当はギヴが怖くてたまらなかった。体格の差も、思ったよりずっとあった。
抱き起こされ、そっと頭を撫でられる。
家に帰ったらエンに男同士の閨ごとを聞こう。ギヴの様子からするとキス以上のことがあるみたいだ。そして、リベンジだ。なんといってもオレのほうが三つも歳上なんだから。
「では、行きましょうか」
ふう、と一つ息を吐き、ギヴが立ち上がった。右手を取られ、エスコートされながらオレもソファから立ち上がる。
このギヴのエスコート癖はどうにかならないものか。
すっかり慣れてしまった自分が、さっきとはまた違う意味で怖いんだけど。
夕食はテーブルに大皿料理がいくつも並び、各自で取り分けて食べるスタイルだった。
給仕は付かず、飲み物も自分たちで注ぎ合う。
ラベルの貼られていない赤ワインの瓶を見て、もしかして、と思った。
「気の利いた手土産をありがとう。今宵はボジョレーを楽しませてもらうよ」
村長の言葉に、ギヴがそっと目配せをくれる。そうか、手土産の一つにうちの領のワインを選んでくれていたのか。
「今年はぶどうの出来が良かったものですから。お口に合うと嬉しいのですが」
5人で乾杯をし、食事にうつる。料理はどれも素晴らしく美味しかった。ボジョレーも、さっぱりした風味がどの料理にもよく合っている。
食事の途中で焼き立てのステーキやチーズフォンデュが出てきた。
「ご馳走ですね!ギヴから聞いていましたが、どれもとても美味しいです」
「ほっほっ、その言葉がなによりですじゃ」
「ラブラドライト、食事が終わったら俺たちと露天風呂はどうだい?」
「ちいっと登ったところに温泉が湧いているんだべ。今日は天気がいいから、満天の星を見ながら入れるべ」
トールとテムが誘ってくれた。
「露天風呂だね!ギヴから聞いてるよ。ぜひ行ってみたい!」
「それで、そこの山小屋でみんなで雑魚寝するってのはどうだい?藁にシーツを掛けてベッドにしてさ」
「楽しそうだね!ぜひ・・・」
──カチャン。
カトラリーとお皿が立てる音にギヴの方を見る。
「失礼しました」
「気にしないでおくれ」
謝るギヴに村長が鷹揚に応えた。
食事中に立てる音はマナー違反だけども、そもそもこれだけわいわい話しているのだ、カトラリーが立てる音などどれほどでもない。ただ、今まで一度もギヴが粗相をしたところを見たことがなかったから、少し違和感を感じた。
「──いだだ」
「すまない、足が当たってしまったようだ」
ギヴがテムに謝るが、相当痛かったようで、テムが涙目でテーブルに隠れた足をさすっている。テーブルの下で何があった?
「おい、ギベオン。テムに八つ当たりはよせ。俺たちはいつだって宝石の下僕なのさ」
「・・・やはり、わざとか」
──魔王再び。
不敵に微笑むギヴが怖かった。
「ギ、ギヴ?露天風呂、イヤだった?楽しそうだよ?・・ね?」
「・・・ええ。貴方は意外にもアウトドア好きでしたね」
はぁ、と大きく息を吐かれた。
ギヴのもう一方の手が、オレの顎を優しく固定する。その骨張った硬い指先に何故か体が震えた。
もう一度、と言ったのに、ギヴのキスはさっきまでのキスとは全然違う。
口の中にギヴの舌が入り込んで舐め上げていく。
「・・・んぅっ」
上顎を舐められて、思わず声を漏らした。
「ん、んっ、・・っ、ギヴ、っ・・!」
顔を振ってなんとかはずれた唇は、すぐにまた塞がれる。息が苦しい。ギヴの舌がオレの舌を絡め取り、すする。
力が抜けた手はギヴを押し返すことができなかった。
「もっと教えてください、ラド。──コレは?どうしたらいいですか?」
手を取られ、ギヴの股間に当てられた。──そこは、芯をもち、膨らんでいた。
「な!」
布越しとはいえ熱い、生々しい感覚に、とっさに逃げようと体を浮かせると、そのまま三人掛けのソファの上に押し倒された。
「・・・あ、・・らないっ。・・・知、らない・・っ」
「知らないんですか?いつもはどんなふうにしてるんです?」
「──ば、ばかっ!離せ、よ、・・離せ、ってば」
オレに覆い被さりながら、ギヴが荒い息を吐く。いつもの紳士然としたギヴじゃなかった。
──怖い。
「おーい。夕食の時間だべ~」
ドアの外からノックの音とテムの声。
そうだった。もうすぐ夕食だと言われていたのだった。
「・・・くっ」
ギヴがドアを睨みつけた。
どうやらギヴも忘れていたらしい。
「・・・あ、あの、すぐに行くよ。先に行ってて」
「おけ。でもなんか困ったことがあるなら大声で教えろよ。俺達は耳がいいからな」
今度はトールの声だ。
「──わざとか・・?」
ドアを睨みつけながら、不敵にギヴが嗤う。綺麗な顔が歪み、魔王のように凄みがある。見たことないけど。
「・・・ギヴ、・・夕食だって」
「──ええ。・・・すいませんでした。少し、箍が外れてしまいました。怖がらせてしまいましたね、すいません」
「だ、大丈夫。オレも男だし」
──男だから何だというのか。よくわからない返答をしてしまった。本当はギヴが怖くてたまらなかった。体格の差も、思ったよりずっとあった。
抱き起こされ、そっと頭を撫でられる。
家に帰ったらエンに男同士の閨ごとを聞こう。ギヴの様子からするとキス以上のことがあるみたいだ。そして、リベンジだ。なんといってもオレのほうが三つも歳上なんだから。
「では、行きましょうか」
ふう、と一つ息を吐き、ギヴが立ち上がった。右手を取られ、エスコートされながらオレもソファから立ち上がる。
このギヴのエスコート癖はどうにかならないものか。
すっかり慣れてしまった自分が、さっきとはまた違う意味で怖いんだけど。
夕食はテーブルに大皿料理がいくつも並び、各自で取り分けて食べるスタイルだった。
給仕は付かず、飲み物も自分たちで注ぎ合う。
ラベルの貼られていない赤ワインの瓶を見て、もしかして、と思った。
「気の利いた手土産をありがとう。今宵はボジョレーを楽しませてもらうよ」
村長の言葉に、ギヴがそっと目配せをくれる。そうか、手土産の一つにうちの領のワインを選んでくれていたのか。
「今年はぶどうの出来が良かったものですから。お口に合うと嬉しいのですが」
5人で乾杯をし、食事にうつる。料理はどれも素晴らしく美味しかった。ボジョレーも、さっぱりした風味がどの料理にもよく合っている。
食事の途中で焼き立てのステーキやチーズフォンデュが出てきた。
「ご馳走ですね!ギヴから聞いていましたが、どれもとても美味しいです」
「ほっほっ、その言葉がなによりですじゃ」
「ラブラドライト、食事が終わったら俺たちと露天風呂はどうだい?」
「ちいっと登ったところに温泉が湧いているんだべ。今日は天気がいいから、満天の星を見ながら入れるべ」
トールとテムが誘ってくれた。
「露天風呂だね!ギヴから聞いてるよ。ぜひ行ってみたい!」
「それで、そこの山小屋でみんなで雑魚寝するってのはどうだい?藁にシーツを掛けてベッドにしてさ」
「楽しそうだね!ぜひ・・・」
──カチャン。
カトラリーとお皿が立てる音にギヴの方を見る。
「失礼しました」
「気にしないでおくれ」
謝るギヴに村長が鷹揚に応えた。
食事中に立てる音はマナー違反だけども、そもそもこれだけわいわい話しているのだ、カトラリーが立てる音などどれほどでもない。ただ、今まで一度もギヴが粗相をしたところを見たことがなかったから、少し違和感を感じた。
「──いだだ」
「すまない、足が当たってしまったようだ」
ギヴがテムに謝るが、相当痛かったようで、テムが涙目でテーブルに隠れた足をさすっている。テーブルの下で何があった?
「おい、ギベオン。テムに八つ当たりはよせ。俺たちはいつだって宝石の下僕なのさ」
「・・・やはり、わざとか」
──魔王再び。
不敵に微笑むギヴが怖かった。
「ギ、ギヴ?露天風呂、イヤだった?楽しそうだよ?・・ね?」
「・・・ええ。貴方は意外にもアウトドア好きでしたね」
はぁ、と大きく息を吐かれた。
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