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初代龍姫と東の果ての国

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 現状を憂いた龍は現状を変えようと、とある少女と契約し事態の収集に努めたのである。白とも銀とも取れる美しい髪と、宝石のような赤い瞳を持つ彼女は鬼や吸血鬼と呼ばれ忌み嫌われていた。しかし、そんな彼女は何より自然を愛していた。だが、龍により壊される自然を想い哀しみに暮れていた。

 そんな時、彼女の前に一匹の龍が現われる。龍と少女は互いに同意し、本来ならばあり得ないが龍は龍魂と化し少女の中へと入って行く。すると、少女の美しい髪は何色ともいえない龍と同じ色へと変化する。ルビーのような瞳は、サファイアのような色と変わっていく。

 辺りには変化した彼女の髪色と同じ覇気が渦巻き、まるで天まで昇るかのような光の柱がそびえ立つ。光が収まり、中から現われた少女は派手な修練着から龍と同じ色のワンピース型のドレスへと変貌していた。そして、その両眼には管轄院の紋章にもなっているアイビーと一匹の龍からなる龍紋が刻まれる。

 そう、この瞬間こそ初めての龍姫の誕生である。それから、初代龍姫は数多といる暴れ狂う龍達を鎮て周ったのだ。龍魂だけなったとはいえ、龍の持つ力は凄まじく天変地異は治まらなかった。その為、初代龍姫と龍の祖といわれる幻神龍は己の生命を糧とし国全体に術を施したのである。

 数多の龍魂を輪廻転生の輪に乗せ、ある一定期間を置き無作為に選び出した五つの龍魂をその時代の少女へと宿したのだ。少女達が龍姫となり、龍達の変わりに代理戦争させる事により天変地異を納めたのである。これこそ、初代龍姫の伝説にして今に続く継承の儀の物語である。


 食事を食べ終え、部屋の広縁で星空を眺めているとクロツツジが声を掛けてくる。

「綺麗ですね、まるで継承の儀や世俗の争い等ないように思えますね。ワタシも最初は自身が龍姫である事について悩みました。管轄院で様々な教育と公務をする内にその憂いは晴れましたが」

「クロツツジーーー 」

「昔のワタシのように、龍姫について考える事があるのであれば東の果ての国は外せません。ただ、杞憂に終われば良いのですが貴方のお連れの方に重々気を付けるようにして下さい」

「コシにーーー ?」

「彼女が使う刀の技、特に蒼気を纏うは東の龍殺しの技そのモノなのです。無論、邪推に過ぎませんがーーー 」

「多分大丈夫だと思うよ。今までも危ない時は命懸けで助けてくれたし」

「そうですね、ただくれぐれもお気をつけを。キンカモミジと旅をしてくれた、せめてものお礼とでもしておいて下さい」


 翌日、駄々をこねるキンカモミジを引き摺りながらクロツツジは管轄院へと帰って行った。
 その後、数週間の間水星屋に滞在し湯治と覇気の鍛錬行った。内なる龍に覇気の練り方を聞き、それを実践するという毎日ーーー。

「白龍、覇龍化して枢車を使う事は出来る ?」

(今回の我が龍姫はまさに異端、蒼気に武器とはーーー。だが、闘気等を纏わせても龍姫はおろか蒼気にも通用せぬ。我が龍姫が覇気を糸に纏わせ、扱う事が出来るならばあるいは)

 龍癒庵で様々な鍛錬を練っていると、水星屋に滞在する最終日となっていた。勿論、次に目指すのは東の果ての国だ。

「まぁ、ボクにとっては里帰りになるんだけどね」

「そういえば、そうだったわね。どんなところなの東の果ての国って ?」

「お米と海産物が有名なところだよ。海ほど大きい湖に囲まれた場所で、桜っていう綺麗な木があるかなぁ~」

「シズイノクニからは結構離れてるのよね ?」

「うん、ルガンワス使わなかったら1ヶ月くらいかな ? 使うんだったら、それでも半月は掛かるよーーー」

 東の果ての国、オズカシの遙か東のそのまた先にある国。極地過ぎて訪れる人もあまりおらず、神秘的な国と表現されるくらいだ。

「シラユリ殿、東の果ての国へ行かれると聞き及んでおりましたので、勝手ながら金星を手配しております」

「金星ーーー ?」

「はい。我ら水星が療養を司るならば、金星は移動や武装さらには屋敷すら用意する事に長けた七天にございます。何でも空を飛ぶ移動手段を最近開発したと聞き及んでおります」


 数日後、水星屋に大量な荷物を荷車に乗せた小柄な女性がやって来た。金色の髪が肩に掛かり、作務衣の様な出で立ちとはミスマッチである。

「いやいや、お久ぶりッス。リンさん調子はどうッスか ?」

「ぼちぼちだよ。それより、こちらが白龍の龍姫様、シラユリ殿よ」

「どもども、お初にお目に掛かるっス。オイラ七天が一人、金星のソッチっス。以後お見知り置きをっス !」


 翌日、支度を終えた私達は龍癒庵のさらに上へと山登りをしていた。なんでも、まだ地上から直に空中へ舞い上がる技術はないらしく、ある一定の高度が必要だという。

「いやいや、いずれは地上から飛べる技術を研究中っスけど、まだまだ実用的じゃないっスね。ご面倒をお掛けして申し訳ないっス !」

「ううん、最短での移動手段を提示して貰えただけでも助かるよ」

「うんうん、我ながら故郷ふるさとは変なとこにあるからねぇ~」

龍癒庵がある山の天辺まで来ると、ソッチが荷物を組み立て大きな紙飛行機のようなモノを組み上げる。

「鉄製で造った空を飛ぶ滑空機っス。その名も名付けて鉄鳥てつどりっス !!」

「そのまんまじゃん !?」

余りにも捻りのない名前に、コシが素てツッコミを入れてしまっている。

「性能は確かなんで安心して欲しいっス ! さぁさぁ、乗り込んだらいよいよ出発っス」

 全員が乗り込むとソッチがペダルを漕ぎ出し、断崖絶壁へと向かって行く。崖から鉄鳥が離れると、緩やかに空を滑空して行くのだった。
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