56 / 135
第三章 幻想世界
第3話 フェイの受難①
しおりを挟む
ノルンたちによる学園襲撃から数時間後、別空間に存在する宮殿内にある玉座の前で、ふてくされた顔で膝をつくフェイの姿があった。
「今回は……予定が狂っただけなんです!」
「そうか。なぜ壊滅及ぼす雷砲を使わなければならなかった?」
「それについては……」
玉座に座る創造主の鋭い指摘がフェイに突き刺さる。痛いところを突かれ、思わず言葉に詰まってしまう。先ほどから話題を背けようと試みるがどんどん墓穴を掘ってしまい、最終的に押し黙る事しかできなくなっていた。
「お前は相変わらずだが……まあいい。計画通り事は進んだ。よって今回は不問とする」
「ありがとうございます」
「下がってよい。次は同じ過ちは許さぬぞ」
安堵の表情を浮かべ、足早にその場を後にするフェイ。思わず創造主から大きなため息が漏れた時、まるでタイミングを見計らったかのように室内へ声が響く。
「アイツはまだまだですね。反省するようなヤツではないですよ」
「わかっておる。お前こそ計画は順調だろうな?」
「ええ、もちろんですよ。気になることがありましたので敵情視察をしておきました。なかなか面白いことになっていますね。例の少年がどこまで成長してくるか楽しみです」
「我が計画を悟られるわけにはいかぬ。引き続き気を抜くな、ファースト」
「御意。虫けらが嗅ぎまわっているようですが、予定通りに進んでおります。次回はお顔を見て良き報告を致しましょう」
室内に響いていた声が消えていく。再び圧倒的な静寂が広っていく。その場にスッと立ち上がる創造主。
「すべてが順調に進んでおる。今度は邪魔させぬぞ、忌まわしき裁定者」
誰もいない玉座のある室内に高笑いが響き渡った。
創造主との面談を終え、不満たらたらの表情のまま悪態をつくフェイ。苛立ちを隠せず、柱に向かい雷撃を飛ばしてみるが、傷はおろか焦げ跡すらつかない。
「クソ! 上手くいくはずだったのに……なんで僕の邪魔ばかりするんだ、人間のくせに!」
「全く、あなたは何も反省していませんね。少しは大人になったらどうなんですか?」
雷撃を撃った柱の陰からノルンが姿を現す。回廊の暗さから表情を読み取ることはできないが全身から漂うオーラは怒りに満ちており、思わず後ずさりしてしまう。
「ふ、ふん。今回はたまたま予定が狂っただけだ! 僕は悪くない!」
「そうですか、全く反省の意思はないと……もう一度聞きます。どうしてあのような大技を使用する必要があったのでしょうか?」
「人間に圧倒的な力の差を見せつけてやらないといけないだろ?」
「失敗していては示しがつかないことくらいわかりますよね?」
完膚なきまでの正論だった。本来の目的は足止めであり、大技を出して本気で戦う必要はなかった。しかし、フェイの脳裏に刻み込まれた屈辱の記憶が冷静さを奪った。
「お、お前に言われるようなことでもない!」
「やれやれですね。だから、自分が置かれている状況が分かっていないのですよ」
フェイが次の言葉を発しようとした時、何者かに背後から蹴り飛ばされた。通常であれば受け流せるほどの威力だが、冷静さを欠いた精神状態かつ無防備な背後からの一撃になすすべなく壁際まで吹き飛ばされる。
「この程度の攻撃も防げないのですか。私が後ろに立っていたことすら気が付いていないとは、情けないですね」
「アビー、もう大丈夫ですよ」
ハッと見上げた先にいたのは氷のように冷たく心底軽蔑した視線で見下ろしているノルン、狂気に満ちた目で薄ら笑いを浮かべるアビーである。手にはしっかりとポイズニングダガー・スコルピオがにぎられている。
「ノルンお姉様、これはお仕置きが必要なのではありませんか?」
「そうですね。このバカにはキツイのが必要です。さあ、連れていきますよ」
「はい、ノルンお姉さま。大人しくしていないと怪我だけではすみませんよ?」
威勢のよさは完全に鳴りを潜め、項垂れ歩いていくフェイ。
その後、宮殿中にフェイの大絶叫が響き渡る。
どれほどの時間が経ったか定かではないが、解放されたフェイが子犬のようにプルプルと部屋の隅で怯えている。
いったい二人から何をされたのか……真相は闇の中である。
「次はこの程度ではすみませんからね?」
「もう少し楽しみたかったのですが、残念ですわ」
「あら? お楽しみは始まったばかりですよ」
満足げな笑みを浮かべ、暗闇の広がる廊下を並んで歩く二人。
妖精たちが仕掛ける次の計画は静かに進み始めていた。
「今回は……予定が狂っただけなんです!」
「そうか。なぜ壊滅及ぼす雷砲を使わなければならなかった?」
「それについては……」
玉座に座る創造主の鋭い指摘がフェイに突き刺さる。痛いところを突かれ、思わず言葉に詰まってしまう。先ほどから話題を背けようと試みるがどんどん墓穴を掘ってしまい、最終的に押し黙る事しかできなくなっていた。
「お前は相変わらずだが……まあいい。計画通り事は進んだ。よって今回は不問とする」
「ありがとうございます」
「下がってよい。次は同じ過ちは許さぬぞ」
安堵の表情を浮かべ、足早にその場を後にするフェイ。思わず創造主から大きなため息が漏れた時、まるでタイミングを見計らったかのように室内へ声が響く。
「アイツはまだまだですね。反省するようなヤツではないですよ」
「わかっておる。お前こそ計画は順調だろうな?」
「ええ、もちろんですよ。気になることがありましたので敵情視察をしておきました。なかなか面白いことになっていますね。例の少年がどこまで成長してくるか楽しみです」
「我が計画を悟られるわけにはいかぬ。引き続き気を抜くな、ファースト」
「御意。虫けらが嗅ぎまわっているようですが、予定通りに進んでおります。次回はお顔を見て良き報告を致しましょう」
室内に響いていた声が消えていく。再び圧倒的な静寂が広っていく。その場にスッと立ち上がる創造主。
「すべてが順調に進んでおる。今度は邪魔させぬぞ、忌まわしき裁定者」
誰もいない玉座のある室内に高笑いが響き渡った。
創造主との面談を終え、不満たらたらの表情のまま悪態をつくフェイ。苛立ちを隠せず、柱に向かい雷撃を飛ばしてみるが、傷はおろか焦げ跡すらつかない。
「クソ! 上手くいくはずだったのに……なんで僕の邪魔ばかりするんだ、人間のくせに!」
「全く、あなたは何も反省していませんね。少しは大人になったらどうなんですか?」
雷撃を撃った柱の陰からノルンが姿を現す。回廊の暗さから表情を読み取ることはできないが全身から漂うオーラは怒りに満ちており、思わず後ずさりしてしまう。
「ふ、ふん。今回はたまたま予定が狂っただけだ! 僕は悪くない!」
「そうですか、全く反省の意思はないと……もう一度聞きます。どうしてあのような大技を使用する必要があったのでしょうか?」
「人間に圧倒的な力の差を見せつけてやらないといけないだろ?」
「失敗していては示しがつかないことくらいわかりますよね?」
完膚なきまでの正論だった。本来の目的は足止めであり、大技を出して本気で戦う必要はなかった。しかし、フェイの脳裏に刻み込まれた屈辱の記憶が冷静さを奪った。
「お、お前に言われるようなことでもない!」
「やれやれですね。だから、自分が置かれている状況が分かっていないのですよ」
フェイが次の言葉を発しようとした時、何者かに背後から蹴り飛ばされた。通常であれば受け流せるほどの威力だが、冷静さを欠いた精神状態かつ無防備な背後からの一撃になすすべなく壁際まで吹き飛ばされる。
「この程度の攻撃も防げないのですか。私が後ろに立っていたことすら気が付いていないとは、情けないですね」
「アビー、もう大丈夫ですよ」
ハッと見上げた先にいたのは氷のように冷たく心底軽蔑した視線で見下ろしているノルン、狂気に満ちた目で薄ら笑いを浮かべるアビーである。手にはしっかりとポイズニングダガー・スコルピオがにぎられている。
「ノルンお姉様、これはお仕置きが必要なのではありませんか?」
「そうですね。このバカにはキツイのが必要です。さあ、連れていきますよ」
「はい、ノルンお姉さま。大人しくしていないと怪我だけではすみませんよ?」
威勢のよさは完全に鳴りを潜め、項垂れ歩いていくフェイ。
その後、宮殿中にフェイの大絶叫が響き渡る。
どれほどの時間が経ったか定かではないが、解放されたフェイが子犬のようにプルプルと部屋の隅で怯えている。
いったい二人から何をされたのか……真相は闇の中である。
「次はこの程度ではすみませんからね?」
「もう少し楽しみたかったのですが、残念ですわ」
「あら? お楽しみは始まったばかりですよ」
満足げな笑みを浮かべ、暗闇の広がる廊下を並んで歩く二人。
妖精たちが仕掛ける次の計画は静かに進み始めていた。
応援ありがとうございます!
2
お気に入りに追加
35
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる