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ジュリアの心
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家に戻ったジュリアは、当主である父親の命令で、半ば監禁状態にあった。
理由はジュリアが「王太子殿下に婚約破棄された恥さらし」だからだ。
父親だけでなく、家族全員が、婚約破棄されたのはジュリアに非がある、と一方的に責め立てた。
(わたくしが正式にジルベール殿下の婚約者に決まったときは、さすがジュリアだと、あれだけ賞賛してくれていたのに……)
昼食後、ジュリアは自室のソファに腰かけ、メイドが出してくれた紅茶もそのままに、ぼんやりとしていた。
今日だけではなく、ここ数日はずっとこうして過ごしていた。もう貴族の女子学校に行く意味もないと父親は考えているようで、ジュリアは自分とは今までなんだったのかと何度も自問した。
(王太子の婚約者、という肩書が消えたら、一気にお荷物あつかい。お母様は次の貰い手を早く探さないと、と躍起になっている。まるでわたくしの人生が終わったかのよう)
結局自分の価値は「王太子の婚約者」というただ一点だったのだ。その考えにどうしても帰結してしまい、ジュリアはそのたびに涙をこぼした。
(わたくしってば、泣き虫になったわね……)
――ジュリア様、ジュリア様、聞こえますか。窓の下をご覧になって下さい――。
突然頭の中に声がして、ジュリアははっとした。今のは何?
――ジュリア様、僕です、ミゲルです――。
ミゲル? 誰だったかしら。ああ、あの、アンドロイドを召喚したという、一級魔導師の。
ジュリアは膝の上で拳を震わせた。
(そうよ、もとはといえば、あの魔導師が余計なことしたせいよ。そうでなければ、ジルベール殿下はわたくしと結婚して……)
――ジュリア様、お願いです、お部屋の窓の下をご覧になって下さい――。
「ああもう! うるさい!」
なんなの? この頭の中に直接響く声は! 窓の下? いいわ、見てやろうじゃない。
ジュリアは部屋の窓を開けて、身を乗り出し、見下ろした。そこには、一人の見慣れない青年が立っていた。
塗りつぶしたような漆黒の髪に、白い肌が際立っている。質素な服装をしていた。
「貴方、どなた? ここはうちの屋敷の敷地内よ。どうやって入ったの?」
ジュリアは青年に叫んだ。青年は口元に人差し指をあてる仕草をした。
――僕は、先日お会いした、一級魔導師のミゲルです。まわりの者に気がつかれますから、どうか静かにしてください――。
また声が頭の中に響いた。宥めるような優しい声で、不思議と不快ではなかった。
――ジュリア様、貴方にどうしても、お話したいことがあります。二人きりで、話せませんか――。
(彼がミゲル魔導師? 二人っきりで話すなんて、どうやって)
ジュリアは困惑して、後ろに二歩ほど下がった。
――今、そちらに迎えに上がります――。
「え?」
気がついたら、ミゲル魔導師が、ジュリアの目の前に立っていた。
理由はジュリアが「王太子殿下に婚約破棄された恥さらし」だからだ。
父親だけでなく、家族全員が、婚約破棄されたのはジュリアに非がある、と一方的に責め立てた。
(わたくしが正式にジルベール殿下の婚約者に決まったときは、さすがジュリアだと、あれだけ賞賛してくれていたのに……)
昼食後、ジュリアは自室のソファに腰かけ、メイドが出してくれた紅茶もそのままに、ぼんやりとしていた。
今日だけではなく、ここ数日はずっとこうして過ごしていた。もう貴族の女子学校に行く意味もないと父親は考えているようで、ジュリアは自分とは今までなんだったのかと何度も自問した。
(王太子の婚約者、という肩書が消えたら、一気にお荷物あつかい。お母様は次の貰い手を早く探さないと、と躍起になっている。まるでわたくしの人生が終わったかのよう)
結局自分の価値は「王太子の婚約者」というただ一点だったのだ。その考えにどうしても帰結してしまい、ジュリアはそのたびに涙をこぼした。
(わたくしってば、泣き虫になったわね……)
――ジュリア様、ジュリア様、聞こえますか。窓の下をご覧になって下さい――。
突然頭の中に声がして、ジュリアははっとした。今のは何?
――ジュリア様、僕です、ミゲルです――。
ミゲル? 誰だったかしら。ああ、あの、アンドロイドを召喚したという、一級魔導師の。
ジュリアは膝の上で拳を震わせた。
(そうよ、もとはといえば、あの魔導師が余計なことしたせいよ。そうでなければ、ジルベール殿下はわたくしと結婚して……)
――ジュリア様、お願いです、お部屋の窓の下をご覧になって下さい――。
「ああもう! うるさい!」
なんなの? この頭の中に直接響く声は! 窓の下? いいわ、見てやろうじゃない。
ジュリアは部屋の窓を開けて、身を乗り出し、見下ろした。そこには、一人の見慣れない青年が立っていた。
塗りつぶしたような漆黒の髪に、白い肌が際立っている。質素な服装をしていた。
「貴方、どなた? ここはうちの屋敷の敷地内よ。どうやって入ったの?」
ジュリアは青年に叫んだ。青年は口元に人差し指をあてる仕草をした。
――僕は、先日お会いした、一級魔導師のミゲルです。まわりの者に気がつかれますから、どうか静かにしてください――。
また声が頭の中に響いた。宥めるような優しい声で、不思議と不快ではなかった。
――ジュリア様、貴方にどうしても、お話したいことがあります。二人きりで、話せませんか――。
(彼がミゲル魔導師? 二人っきりで話すなんて、どうやって)
ジュリアは困惑して、後ろに二歩ほど下がった。
――今、そちらに迎えに上がります――。
「え?」
気がついたら、ミゲル魔導師が、ジュリアの目の前に立っていた。
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