(完結)異世界から召喚したアンドロイドに婚約者を取られたけれど、言い寄ってくる魔導師が可愛い

コーヒーブレイク

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トカゲは苦手

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 気づかぬうちに、涙が頬を伝っている。

「いきなりこんな話をして、すみません。僕があさはかでした」

 ミゲルが、おろおろと頭を下げる。

 違うわ。ジルベール様の本性にショックを受けたわけではなく、自分がほとほと嫌になっただけよ。

「幻滅したでしょう? 七年前のわたくしと全く違って」

 ジュリアは背筋を伸ばし、口角を上げて、笑って見せた。どんなに辛くとも、苦しくても、伯爵令嬢たるもの、美しく微笑んでいなければ。

「幻滅なんてしていません! 僕は先ほど申しましたとおり、ジュリア様を七年前から――」

 そのとき、ミゲルの漆黒の髪に、何かが落ちた。ぽとりと、落ちた。
 それは、くねくねと、ミゲルの額をつたい、彼の顔へと降りてくる。一匹のトカゲだった。

「うわああああああああ」

 ミゲルは悲鳴を上げながらジュリアに思いっきり、抱きついた。

「ちょっと」

「とと、取って取って取って取ってくださーい!! 僕昔からトカゲだけはダメなんですー!」

「はあ?」

 こんなものが? ジュリアはミゲルの顔にへばりつくトカゲをつまむと、その辺にぽいっと捨てた。

「取ったわよ」

「ほんとですか? もういないですか? どこにもいませんか? 嘘じゃないですよね?」

 ミゲルはいい年して小さな子供のように、ジュリアにしがみつきながら喚いていた。しばらくして落ち着くと、我に返ったようで、ジュリアからそっと離れた。

「すみません……。子供のころ、いじめっ子たちに頭の上から大量のトカゲを浴びせられたのがトラウマで……」

 しおしおと、バツが悪そうに呟く。その白い顔は紅潮し、青い瞳には涙を浮かべて、今にもこぼれそうだった。ジュリアの方の涙はすっかり引っ込んでいた。

 ジュリアは三度みたび屋敷で昔飼っていた犬を思い出し、いい子いい子してあげたくなった。
 すごい魔力を持つ一級魔導師なのに、この子、な、なんて、可愛いらしいのかしら。
 ジュリアの胸は高鳴った。
 何かしら、この気持ち……。


「見つけたぞ! 一級魔導師、ミゲル!」

 と、突然、鋭い声が飛んだ。

 次の瞬間、どん、という音がしたかと思うと、ミゲルがその場に倒れた。

「ミ、ミゲル!?」

 ジュリアは慌てて、ミゲルを抱き起そうと、しゃがみ込む。すると、

「どうか罪人にはお手を触れぬよう。ジュリア伯爵令嬢」

 木立の間から一人の少年が、堂々とした振る舞いで現われた。まわりを数人の男性が守るように立っている。
 色素の薄い髪と、少女のような綺麗な顔立ち。

「シャルル殿下……」

 ジルベールの異母兄弟、テーラ国第二王子シャルルだった。
 
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