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第三章 運動会なんだよ
第九話 盛り上がったのよ
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『いよいよ、本日最後の競技となりました! 全学年での対抗リレーです!』
一人の教員が大声で会場全体に響き渡る様に言えば、会場全体がワァッと盛り上がる。
「これで終わりかぁ~」
「アビー、残念そうね」
「残念? あ、そっか。僕は残念なんだ。そっか、残念ってこういう気持ちなんだ」
「あれ? なんだか不思議そうね」
「不思議……うん、そうかも。でも、そっか。今日みたいな楽しいことが終わることが悲しくなったんだけど、これが残念な気持ちなんだね。ふふふ」
「変なの」
「変かな?」
「変だよ」
「でも、これで今日が終わるんだよ。皆は残念には思わないの?」
「そうね。こんなに楽しいことが終わるのは確かにそう思うけど」
「けど?」
「だって、今日これだけ楽しいことがあったんなら、明日はもっと楽しいことがあるかもって思わない?」
「あ!」
メアリー達と話してアビーは自分が今、運動会が終わってしまうことを悲しく思い、それが残念な気持ちなんだということが分かった。
今までは楽しいことがあっても直ぐに体調が悪くなりベッドに縛り着けられる闘病生活だった。だからなのか、こうして運動会が終わりそうになり改めて楽しかった今日一日が終わってしまうことを悲しいと思うと同時に胸の中に湧き上がってくる感情がどうしても分からなかったのだけど、メアリーに言われたことでこれがそうなのかと腑に落ちる。
「ほら、まだ終わった訳じゃないでしょ。アビーには最後の役目があるじゃない」
「うん! 頑張るね」
「「「勝つのよ!」」」
「任せて!」
アビーは鼻息も荒くリレーの最終走者として並んでいると、ケビンの兄であるビリーが話しかけてくる。
「本当にお前が走るのか?」
「うん、そうだよ。よろしくね」
「あ、ああ。だけどよぉ」
「僕は負けないよ」
「分かったよ。俺に負けたからって泣くなよ」
「泣く? 僕が? ふふふ」
「なんだよ」
「絶対に僕が勝つから!」
「まだ言うか。はいはい、分かったよ。ま、走れば分かるさ」
ビリーはアビーとは話にならないとばかりに肩を竦めると自分の待機場所へと戻る。
「勝つのは僕だから!」
「「「……」」」
他の子供達はアビーとビリーのやり取りを黙って見ていたが、鼻息の荒いアビーを見て「まさかね」と思うが、それを確信することは出来ない。
「あ! そう言えば……」と一人の子が山の上から走って通っている女の子がいたことを思い出し、回りの子に言うが「そんなバカな」と相手にはしてくれなかった。
「ほら、始まるぞ」
「うん!」
最初の走者がスタートラインに並べられ『用意、スタート!』の掛け声と共に走り出す。
「行っけぇ!」
「負けるなぁ!」
「走れ、走れ!」
最終競技ということもあり、見学している保護者の面々も興奮しているのか声援する声も段々と大きくなる。
「あなた、ほら! アビーよ」
「ああ、そうだな。って、これじゃアビーが最後じゃないか! おいおい、どうした!」
マークが見ていたのは最終走者であるアビーにバトンを渡す走者は最後尾を走っていたのだ。誰もがこのままじゃ負けは確定だなと思っていた。
だけど、ケビンやメアリー達は両拳を握りしめアビーに対し声援を送っていた。
「よし! アビー、ここからが見せ場よ!」
「そうよ! このくらいならハンデよ」
「いっちゃえ!」
「うん!」
アビーもメアリー達の声援を聞き、足に力を込める。他の子達が次々にバトンを受け取り走り出すが、アビーは余裕のある表情でバトンを受け取る。
「ハァハァ……ゴメン……」
「いいよ。任せて!」
アビーはバトンを受け取ると正面を見据え、ビュンと音がしそうな勢いで走り出す。
「ふん、アイツも運が悪かったな。あんなに遅れたんじゃもうムリだろうな」
「何が?」
「何がって……おぉ!」
余裕を持って先頭を走っていたビリーの横にはいつの間にかアビーが並んで走っていた。そして、アビーはビリーの少しだけ驚いた顔を見られて満足したのか「じゃ、お先に」とビリーに手を振り更に勢いよく走り出す。
「な! ちょ「待たないよ~」……」
アビーはそのまま、ビリー達を置き去りにしトップでゴールテープを切るとメアリー達に向かってVサインをする。
すると、メアリー達は手に手を取り合って飛び上がりはしゃぎ出す。
「負けちまったな」
「うん、勝ったよ」
「……その、悪かったな」
「え?」
「なんだよ。だから、お前を疑って悪かったって……謝っているんだけどな」
「あ~そのこと」
「そのことって、俺が謝っているんだぞ」
「ふふふ、いいの。だって勝ったのは僕だから!」
「だな。ケビンの言うことも信じてやればよかったな」
「だから、言っただろ」
「「ケビン!」」
ビリーとアビーの前にケビンが現れ、そう言えばその後ろからはメアリー達が現れる。
「やったね、アビー!」
「格好良かったわよ!」
「やっぱり、速いわね」
「ふふふ、ありがとう」
女の子達が集まりキャッキャしているのを黙って見ていたケビンに対しビリーが言う。
「そんな羨ましいのならお前も中に入ればいいだろ」
「バカ! 出来る訳ないだろ!」
「そうなのか?」
「そうなの! それより、ほら集まっているから」
「ああ、そうだな」
ケビンはアビー達に皆が集まりだしていることを伝え、自分も他の子達と一緒に整列する。
閉会式でアビーは発案者として、そして一番競技を盛り上げた者として皆の前で表彰されると少し照れながら、その賞状を受け取れば盛大な拍手に包まれながらメアリー達の元へと戻る。
メアリー達も自分のことの様に喜び、それぞれでアビーを褒め称えると迎えに来た親と一緒に帰宅する。
アビーもジュディに呼ばれ、一緒に帰宅するがまだ興奮が冷めないせいかジュディ達に対し身振り手振りで今日の出来事をずっと話していた。
「俺達も見ていたってのに……」
「そういうこと言うなよ」
「マークのそういうところよねぇ~はぁ~」
「悪かったよ」
アビーの話はお風呂に入っても食事を済ませても途切れることはなく、やっと話が終わったと思った時にはアビーはゴードンの腕に抱かれたまま、スゥスゥと寝息を立てていた。
アビーはその夜、久々に日本の両親の夢を見た。だが、それはアビーが期待していた内容ではなかった。
一人の教員が大声で会場全体に響き渡る様に言えば、会場全体がワァッと盛り上がる。
「これで終わりかぁ~」
「アビー、残念そうね」
「残念? あ、そっか。僕は残念なんだ。そっか、残念ってこういう気持ちなんだ」
「あれ? なんだか不思議そうね」
「不思議……うん、そうかも。でも、そっか。今日みたいな楽しいことが終わることが悲しくなったんだけど、これが残念な気持ちなんだね。ふふふ」
「変なの」
「変かな?」
「変だよ」
「でも、これで今日が終わるんだよ。皆は残念には思わないの?」
「そうね。こんなに楽しいことが終わるのは確かにそう思うけど」
「けど?」
「だって、今日これだけ楽しいことがあったんなら、明日はもっと楽しいことがあるかもって思わない?」
「あ!」
メアリー達と話してアビーは自分が今、運動会が終わってしまうことを悲しく思い、それが残念な気持ちなんだということが分かった。
今までは楽しいことがあっても直ぐに体調が悪くなりベッドに縛り着けられる闘病生活だった。だからなのか、こうして運動会が終わりそうになり改めて楽しかった今日一日が終わってしまうことを悲しいと思うと同時に胸の中に湧き上がってくる感情がどうしても分からなかったのだけど、メアリーに言われたことでこれがそうなのかと腑に落ちる。
「ほら、まだ終わった訳じゃないでしょ。アビーには最後の役目があるじゃない」
「うん! 頑張るね」
「「「勝つのよ!」」」
「任せて!」
アビーは鼻息も荒くリレーの最終走者として並んでいると、ケビンの兄であるビリーが話しかけてくる。
「本当にお前が走るのか?」
「うん、そうだよ。よろしくね」
「あ、ああ。だけどよぉ」
「僕は負けないよ」
「分かったよ。俺に負けたからって泣くなよ」
「泣く? 僕が? ふふふ」
「なんだよ」
「絶対に僕が勝つから!」
「まだ言うか。はいはい、分かったよ。ま、走れば分かるさ」
ビリーはアビーとは話にならないとばかりに肩を竦めると自分の待機場所へと戻る。
「勝つのは僕だから!」
「「「……」」」
他の子供達はアビーとビリーのやり取りを黙って見ていたが、鼻息の荒いアビーを見て「まさかね」と思うが、それを確信することは出来ない。
「あ! そう言えば……」と一人の子が山の上から走って通っている女の子がいたことを思い出し、回りの子に言うが「そんなバカな」と相手にはしてくれなかった。
「ほら、始まるぞ」
「うん!」
最初の走者がスタートラインに並べられ『用意、スタート!』の掛け声と共に走り出す。
「行っけぇ!」
「負けるなぁ!」
「走れ、走れ!」
最終競技ということもあり、見学している保護者の面々も興奮しているのか声援する声も段々と大きくなる。
「あなた、ほら! アビーよ」
「ああ、そうだな。って、これじゃアビーが最後じゃないか! おいおい、どうした!」
マークが見ていたのは最終走者であるアビーにバトンを渡す走者は最後尾を走っていたのだ。誰もがこのままじゃ負けは確定だなと思っていた。
だけど、ケビンやメアリー達は両拳を握りしめアビーに対し声援を送っていた。
「よし! アビー、ここからが見せ場よ!」
「そうよ! このくらいならハンデよ」
「いっちゃえ!」
「うん!」
アビーもメアリー達の声援を聞き、足に力を込める。他の子達が次々にバトンを受け取り走り出すが、アビーは余裕のある表情でバトンを受け取る。
「ハァハァ……ゴメン……」
「いいよ。任せて!」
アビーはバトンを受け取ると正面を見据え、ビュンと音がしそうな勢いで走り出す。
「ふん、アイツも運が悪かったな。あんなに遅れたんじゃもうムリだろうな」
「何が?」
「何がって……おぉ!」
余裕を持って先頭を走っていたビリーの横にはいつの間にかアビーが並んで走っていた。そして、アビーはビリーの少しだけ驚いた顔を見られて満足したのか「じゃ、お先に」とビリーに手を振り更に勢いよく走り出す。
「な! ちょ「待たないよ~」……」
アビーはそのまま、ビリー達を置き去りにしトップでゴールテープを切るとメアリー達に向かってVサインをする。
すると、メアリー達は手に手を取り合って飛び上がりはしゃぎ出す。
「負けちまったな」
「うん、勝ったよ」
「……その、悪かったな」
「え?」
「なんだよ。だから、お前を疑って悪かったって……謝っているんだけどな」
「あ~そのこと」
「そのことって、俺が謝っているんだぞ」
「ふふふ、いいの。だって勝ったのは僕だから!」
「だな。ケビンの言うことも信じてやればよかったな」
「だから、言っただろ」
「「ケビン!」」
ビリーとアビーの前にケビンが現れ、そう言えばその後ろからはメアリー達が現れる。
「やったね、アビー!」
「格好良かったわよ!」
「やっぱり、速いわね」
「ふふふ、ありがとう」
女の子達が集まりキャッキャしているのを黙って見ていたケビンに対しビリーが言う。
「そんな羨ましいのならお前も中に入ればいいだろ」
「バカ! 出来る訳ないだろ!」
「そうなのか?」
「そうなの! それより、ほら集まっているから」
「ああ、そうだな」
ケビンはアビー達に皆が集まりだしていることを伝え、自分も他の子達と一緒に整列する。
閉会式でアビーは発案者として、そして一番競技を盛り上げた者として皆の前で表彰されると少し照れながら、その賞状を受け取れば盛大な拍手に包まれながらメアリー達の元へと戻る。
メアリー達も自分のことの様に喜び、それぞれでアビーを褒め称えると迎えに来た親と一緒に帰宅する。
アビーもジュディに呼ばれ、一緒に帰宅するがまだ興奮が冷めないせいかジュディ達に対し身振り手振りで今日の出来事をずっと話していた。
「俺達も見ていたってのに……」
「そういうこと言うなよ」
「マークのそういうところよねぇ~はぁ~」
「悪かったよ」
アビーの話はお風呂に入っても食事を済ませても途切れることはなく、やっと話が終わったと思った時にはアビーはゴードンの腕に抱かれたまま、スゥスゥと寝息を立てていた。
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