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第五話 もうそろそろ、いいんじゃない?

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 あれから、約一月。
 淋しさから出した弟(仮)と一緒に組み手をしたり魔法を撃ち合ったりと何となく強くはなれた気がする。
「って思うんだけど、どう?」
『どうって?』
「いや、だからさ。そろそろ結界の外に出て試してみてもいいんじゃないのかな~とか思ったり?」
『ああ、そう言えばそうだったね~』
「何?そのやる気のなさは」
『いやいや、君の記憶は素晴らしい!整理しながら見てるんだけど、もう可笑しくて悲しくて二度見三度見は当たり前で、今はもうすぐ二桁に突入するところでさ、だからもういいかな?』
「ああ、邪魔しちゃったね。じゃあまた後で……ってならないから!」
『チッ!』
「だから、俺達は出られるのか?って聞いてんだろ」
『もう十分だよ。シンだけなら心配だったけど、そこの弟(仮)君の加入が大きかったね。おめでとう!パチパチパチ』
「なあ、兄ちゃん俺のおかげって本当?」
「ああ、お前のおかげだ。って、え~お前アリスとの会話が聞こえるの?」
「うん、最初っから聞こえてるよ。どうしたの?」
「アリス、どういうこと?」
『どういうことも何もシンの分身なんだから、シンが覚えたスキルも魔法も全部使えるわよ。ちなみに無限倉庫インベントリは共有可能ね』
「え~何で今まで黙ってたの?」
「『知っていると思ってた』」
「あ~もう!それで、まさか称号までコピーされるの?」
『それはない。さすがに可哀想だし』
「そうか、称号は可哀想なものなんだ」
『そ、そうよだから隠蔽してあげてるでしょ?』
「あ~そうだな、その恥ずかしい称号はお前が付けているけどな」

「なあ兄ちゃん、話は終わった?」
「何だ弟(仮)、まあ終わったけど何か用か?」
「俺の名前なんだけどいつまでも空白で、種族が「弟(仮)」ってなってるんだけど」
「(何だよ種族「弟』って。)そうなの?」
『そうよ、だって分身なんだもの』
「それにさ、いつまでも『弟(仮)』って呼ばれるのも何か嫌でさ」
「『自我の目覚め!反乱が起きる……』」
「いや、反乱なんて面倒だからしないし。いいから名前をくれよ」
「『しないんかい!』」
「しないよ、いいから名前!」
「分かった。じゃ『ジロウ』」
「却下、安直だし何か家系な感じがする」
「そうか、家系みたいか。って……え?お前俺の記憶も読めるの?」
「何言ってんの」
「そうか、そうだよな。んなわけないよな」
「分身なんだから、読む読まないじゃなく共有してるんだから当たり前でしょ」
「共有?」
「そ、共有」
「俺が覚えていることは……」
「当然、知っているし」
「俺が見てきたことは……」
「当然、くっきりと。あの時のJKパンツもまだはっきりくっきり残っているし」
「何それ!羨ましい……じゃない!なら、俺の恥ずかしい記憶も当然……」
「もちろん、色々と揃っているよ。思い出してみる?何がいい?」
「いや、捨ててくれ。外に出さないでくれ!」
「まあ、俺には消せないけどね」
「そんな~」
「いいから、名前をちょうだいよ」
「何だよ、もう自分で付けなよ」
「名付けは当人じゃだめなんだよ。知らなかったの?」
「知らない。それに何でお前が知ってるの?」
「アリスが教えてくれたけど?」
「あんの野郎!」
『野郎じゃない設定なんですけどね~』
「……」
『あれ、無視ですか?』
「アリス、うるさい!」
『あ、弟(仮)君まで』

「ほら、兄ちゃん。うるさいのが黙っている内に名前付けてよ。ほら!」
「まあ、待て。『セカンド』」
「却下」
「『コピオ』」
「却下、名前とも思えないセンスなし」
「『イチロウ』」
「ダメ、そもそも一番じゃないし」
「『タロウ』」
「普通」
「『ニバン』」
「ん~もう一声!」
「お、いい感じだったか。なら『フク』」
「フク……フクねえ。ん、いい!気に入った。俺は『フク』。あ、ステータスに載った。ありがとうな兄ちゃん!」
『ねえいいの?「フク」って「複製」の「フク」なんでしょ?』
「(ば、ばかあいつにも聞こえてるんだろ。なんでバラすんだよ。折角気に入ったって言ってるのに。)」
『ああ、今はシンにだけチャンネル開いているから、フクには聞こえてないわよ。安心して』
「(へぇそんなことも出来るんだ。)」
『そうよ、見直した?』
「(いや、別に)」
『何でよ!そこは嘘でも素直に賞賛するところじゃないの?』
「(いや、何も賞賛すべきところがないだろ?)」
『そんな、アリスちゃんが可哀想!』
「(もう自分で言うなよ。はいはい、それでこれで出られるんだな。)」
『もうオープンにしたから小声じゃなくてもいいわよ。ねえフク』
「何?アリス」
『随分気に入ったようね。名前を呼ばれるのが嬉しくてしょうがないって感じだわ』
「そ、そんなことはないよ。それで何なの?」
「そろそろ、ここから出ようかって相談だな」
「ええ!いいの!こっから出てもいいの?」
「ああ、俺とフクが一緒なら、出るのも難しくはないだろうって、言うからさ」
「じゃ出よう!すぐ出よう!」
「ま、待て!今から出るとすぐに夜になる。出るなら明日の朝だ」
「え~そんな~」
「お前もすぐにやられたくはないだろう?」
「え?」
「え?」
「何で俺がそんなことを気にしなくちゃいけないの?」
「何でって、魔物にやられたら死ぬだろ?怖くないのか?」
「え?そうなのアリス」
『ん~死ぬっていうか消滅はするけど、すぐに分身ドッペルゲンガースキルで元通りになるわよ』
「じゃ死ぬ心配をするのは俺だけなの?」
「『何言ってるの!』」
「兄ちゃんが死ねば俺もアリスもどうなるか分からないんだから死ぬことはダメだぞ」
「え~俺だけ死なないように頑張れってこと?」
「大丈夫、そこは俺とアリスで簡単には死ねないように頑張るからさ」
「それって拷問の時に使う言葉だから……不安だ……」
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