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第三十三話 まずは解放だろ?

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 食事が終わると満腹感からか子供達がうつらうつらし始める。
「もう限界っぽいな」
 土魔法で長屋作りの家をいくつか用意するとアンディとアンナ達に子供達を寝かせるように頼む。

「えっと、いいんですか?」
「何がだ?」
「あ、いや。こんな家まで用意してもらって」
「家じゃなきゃ、どこで寝るつもりだったんだ?」
「その辺の木の根元とか?」
「バカか。ほら、いいからお前も早く寝ろ! また、明日もアイツらの面倒を見なきゃいけないんだからな」
「は、はい。おやすみなさい!」
「ああ、おやすみ。さてと」

 アンディを見送り俺もそろそろ寝るかと、家を作り中に入るとフクとユキが着いてくる。それは分かるが、何故かミラとアンナも着いてくる。
「待て待て! なんでお前達まで入ってくるんだ?」
「え? 私達に言ってます? 私達はシンに従属するのだから当然のことですよね?」
「そうよ! 当たり前のことじゃない!」
「イヤイヤ、何が当たり前だよ。俺には何がなんだか分からないんだけど?」
 そう言って、アンナ達を家から追い出すと、隣に家を作り、ここで寝ろと言ってから家に戻る。

 残されたアンナとミラは「しょうがないわね」と言い残し用意された家に入る。

 朝になり、いつもと違う様子に少し怯え気味に子供達が家から出てくる。
 既に起きて朝食の準備をしていたアンナが子供達に気付き、顔を洗いましょうねと水場へ案内する。子供達は少し戸惑っていたが、少しずつ昨夜の様子を思い出し、自分達の境遇が少しだけ変わったことも思い出す。

「はい、これがタオルね」
「あ、ありがとう。お、おば「おば?」お姉ちゃん?」
「ふふふ、そうよ。お姉ちゃんでいいのよ」
 アンナがそう言って、子供の頭を撫でる。
「朝から、子供に気を使わせるんじゃないわよ」
「ひゃっ……」
「ミラ! 脅かさないでよ。子供が怖がっているじゃないの」
「さっきのアンナほどじゃないでしょ。ねえ?」
 ミラが子供に問い掛けるが、仮面から表情が読み取れる筈もなく、運悪く絡まれた子供は涙目でアンナに抱き着く。

「よしよし、怖かったわね」
 アンナが子供をあやしながら、ミラにシッシッとでも言うように手で追い払う。
「何よ! もう」

 昨夜、フクが作ったテーブルに座り、アンナとミラのやり取りを遠目で見ていた俺は対面に座っているアンディに話す。
「あの仮面を着けた少女がミラだ。あいつは訳ありで顔を隠している。出来れば詮索しないでやって欲しいし、子供達にも怖がらないように言っといてくれ」
「分かりました」
「アンナは分かるな」
「はい」
「で、俺に似た子供が、俺の弟でフク、側にいる白いのがユキだ。これだけ知っとけばいい」
「分かりました……」
 アンディに一通り説明したと思うが、アンディはまだ何か俺に聞きたいことがあるようだ。
「まだ何か聞きたいことでも?」
「……はい。あの……俺達も魔法を使えますか?」
「使えないのか?」
「分かりません。指導を受けたこともないですし、方法も分からないので……」
「ふ~ん、なら読み書きは出来るのか?」
「ええ。私と……あ、あそこにいる回りより少しだけ背が高い女の子が教えられました」
 寝起きで寝ぼけている子供達の相手をしている少女が目に入る。
 歳はアンディと同じくらいか、一つ二つ下だろうか。短く切り揃えられた髪に細い手足が今までの境遇の悪さを感じさせる。

「まあ、魔法は出来るか出来ないかで言えば出来るだろうな」
「本当ですか!」
 アンディが興奮した様子で椅子から立ち上がり、身を乗り出す。
「本当だ。だから、落ちつけ」
「あ、すみません」

 アンディが椅子に座り直したのを確認してから、アンディに質問する。
「これからの為に一応聞いておくが、戻りたいか?」
 俺の質問に対しアンディが身構える。

「イヤです! 絶対に戻りたくありません!」
「そこまで怒るってことは、捕まった訳じゃなく……売られたのか?」
「……はい。私達は、この街道をず~っと戻った先の小さな村で暮らしていましたが、今年は作物がいつものように実らず村の大人達が集まって相談した結果、僕達と奴隷商が持ってきた作物と交換されました」
 アンディが両の拳を膝の上でギュッと握り込む。

「じゃあ、戻るところはないんだな」
「はい。戻りたくありません」
「だが、小さいのは親元に帰りたいんじゃないのか?」
「はい。それは分かっています。だけど、戻ってもまた売られるだけです。あの小さな村じゃ変わることはありません」
「そうか。まあ、他の子はお前が面倒を見る約束だしな。俺には関係ない話だ」
「はい。それは十分に理解しています」
 アンディは俺の言うことを理解したようなので、話はこれまでにして朝食にする。
「アンナ、もう食べられる?」
「はい、今準備しますね」

 朝食を食べ終わったところで、皆に落ち着くまで数日はここに留まることを話す。
「私はいいわよ。特に急ぐことはないから」
「私だってないわよ」
「で、アンディ。その首の奴隷契約の首輪はどうすれば外せるんだ?」
「分かりません。あの商人もどうすることも出来ないと知っているから、このままにしたのだと思います」
「そうか。で、アリスはどうにか出来るのか?」
『やっと来たわね。こんなのこのアリスちゃんにお任せよ! じゃあ、手始めに……『解呪ディスペル』っと。これで取れるわよ』
「そうか。アンディ、ちょっと首輪を見るぞ」
「はい、どうぞ」
 アンディの首輪を障ると、そのままカチャンとアンディの首から外れ、地面へと落ちる。
「え? なんで? 何をしたんですか?」
「何って、奴隷契約の解除だけど」
「え~そんなことが……お願いします! 他の子達のもお願いします!」
「あ、心配はいらないよ。ほら」
「え?」
 俺の言葉に意味不明とでも言うような顔になるが、回りで子供達が自分の首を触りながら喜び泣き出す。

「え? どういうことです?」
「見たまんまだ」
「では、私達はもう……」
「ああ、奴隷ではない。アンディとその仲間だな」
「あ、ありがとうございます」
 アンディが額をテーブルに擦りつけるように俺に頭を下げる。

 こういうのは趣味じゃないんだけどな~
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