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第三十九話 襲ってくるそうです

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 それから、子供達が急変するまでたいした時間は必要としなかった。
 アンディが何かを言わなくても、いつの間にか村の子供達と仲良くなり、いつの間にか魔法を撃ち合うほど仲良くなっていた。
「え? どゆこと?」
「だから、言ったでしょ。知りませんよって」
「でも、お前……いくらなんでもこれは」
「それは俺も思います。でも、俺と一緒にいた子供達だって、最初は何も出来なかったのに、あのフクと一緒に遊んでいる内にああなりましたよ?」
 アンディが指を差す方向には楽しそうに魔法を撃ち合う子供達の姿があった。そして、それを心配そうに頼もしそうに見る親達。
 その親の一人が俺達に近寄ってくる。さっきの代表者の男だ。
「なあ、あれはどういうことだ? 確か、魔法は選ばれたヤツにしか扱えないはずだぞ」
 そう言って村の子供達を指差しながら言う。
「あ、それは勘違いですよ。俺だって、習ってそれほど時間は経っていませんが、ほら。この通り」
 そう言ってアンディが指に炎を灯し、男に見せる。
「あ、アンタは魔道士か?」
「いいえ。俺は元奴隷です。そこのシンに助けられ拾われました」
「そうか。それは済まなかった……ん? なら、お前に魔法を教えたのは……お前なのか?」
「ええ、一応そうなりますね」
 照れ隠しで頭を掻きながらそう言ったけど、その後はなんとなく想像出来る。
「頼む。このまま村から出て行ってくれ!」
「あ~やっぱり、俺の修行はツライよ……って、え? 出て行けって?」
「ああ、そうだ。魔法なんて厄介ごとの種でしかない。頼むから出て行ってくれ!」
「出て行けと言うなら出て行くけどさ。あれはどうするの?」
「あれ?」
「そ、あれ」
 魔法で遊ぶ村の子供達を指す。
「あれはしょうがない」
「確かにね。でも、このまま中途半端な状態で放ってしまうとどうなるか分からないよ」
「なんだ! 脅すつもりか!」
「別に脅しじゃないよ。このまま、自分なりに魔法を考えて使う子も出てくるだろうとは思うけど、ちゃんとした使い方を覚える前にああやって遊びを覚えてしまうと止めることは難しいよ。それにその内に魔力を暴走させる子も出てくるだろうな。そうなった時に誰がどうやって止めるつもりだ?」
「そ、それは俺達でなんとか」
「なんとかか。なら、今、遊んでいるあの中に飛び込んでいけるか?」
「あれに? いや、あれはいくらなんでも無理だろ」
「ん? 聞き間違いか? さっきお前は自分達で止めると言ってただろ?」
「ぐっ……それは……」
「分かったのなら、魔法と俺達を受け入れて下さい」
 男に軽く頭を下げる俺の横でアンディも深く頭を下げる。
 男は逡巡してから「分かった」と言う。
「ただし、言ったからにはちゃんと基礎と魔力暴走時の対応方法など、ちゃんと仕込んでもらうぞ」
「ああ、それなら大丈夫。なあ、アンディ」
「は、はい」
 アンディが釣られて返事するが、多分頭のなかでは俺を罵っていることだろう。頑張れアンディ。

「子供達のことはそれでいいとしてだ。この村では何を抱えているんだ?」
「ったく。子供達のことはもう諦める。俺もあとで習わせてもらうし。それで……この村の問題だったな。実はな……」
 村の代表の男、ガインが話してくれたのは、この世界ではよくある話らしい。いわゆる盗賊の類がこの村に狙いを付け先遣隊と思われる連中がやって来たが、その時は村の男連中でなんとか撃退出来た。だけど、その後にもしかしたら自分達はとんでもないことをしてしまったんじゃないかと不安になり立て籠もっていたところに俺達が変な馬車で近付いて来たものだから、過敏に反応してしまったらしい。
「そうか、理由は分かった。それで、その連中はいつ頃来る予定なんだ?」
「明日の晩」
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