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第1話 開業宣言は突然に!

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「サンガン、お前玩具おもちゃ屋になれ」
「え!」
「ガンツさん、ちょっと乱暴だよ」
「そうだよ、父さん。いきなり何言ってんの!」

 僕の名前はサンガン。

 今、父さんガンツからいきなり突拍子もないことを宣言され戸惑うが、そういやこういうヒトだったなと思い出す。

 少し前まではドワーフの里で母さんアンジェと僕達家族で同居していたが、ここ数年顔を見せなかった父さんが急に帰って来たと思ったら、知らない人族の子供と一緒にいたから、もしかしてと思ったけど全然そんなことはなく全くの杞憂だったんだけど、そこからは急激に全てが変わった。

 本当にアッという間だった。

 いや、正確に言えば『あっ!』と驚く暇もなく気が付けば父さんはケイン君と一緒にドワーフタウンと呼ばれる大きな街を作り、気付けば父さん達夫婦で住む家をケイン君が「あっ!」という間に作り、僕達家族が住める集合住宅まで「あっ!」という間に作ってしまった。

 そして僕はドワーフタウンにある父さんの工房の経理を任され今日も働いていた。

 それなのに父さんに呼び出されたと思ったらいきなり『玩具屋になれ!』と言われれば驚くしかない。

 父さんの隣にいるケイン君も呆れ気味に父さんを宥める。

 でも、ケイン君が「そんな言い方じゃダメだって。ちゃんと筋道立てて話さないと」と言われ「え?」としか言えない。

「ちょっと、待って。ケイン君、それってもう決まっていることなの?」
「うん、そう。あれ、知らなかった?」
「いや、聞いてないし」
「だから、さっき言っただろうが!」
「そんなついさっきのことじゃないか! 知らないのも当たり前だ!」
「相変わらず細けぇなぁ~」
「細かいとか、そういうことじゃないでしょ! 大体、母さんはなんて言ってるの!」
「アンジェか」
「そうだよ! 母さんなら「いいんじゃない……って」……え?」

 僕は家族で一番の常識人で父さんが唯一敵わない母さんの名を出してみるが、父さんの口から聞きたくない言葉が聞こえた。

「え? 母さんがホントに?」
「ああ。だから、一応アンジェに言ったら、『いいんじゃない』って言ってたぞ。やるやらないは本人の意思だけど、言うだけは言ってみればってな」
「あ~そういうことね」
「そういうことだ。だから、やれ」
「だから、ガンツさん。そうじゃないでしょ」
「なんだよ、ケインまで。どうせやらせるんだからいいじゃねえか」

 母さんならそう言うだろうなとホッと胸を撫で下ろすが、父さんの暴走を止めようとしているケイン君に父さんが「どうせやらせるんだから」と言ったのを聞いて驚く。

「ちょっと待ってよ。どうしてそんな話になっているの? 大体、玩具屋って言うけど何を売るのさ!」
「お、やる気になったか?」
「……ち、違うよ。ただ断るにしてもちゃんと理解してから断りたいだけだからね」
「またまたぁ」
「くっ……」

 やってしまった……父さんは僕が玩具に興味があるのは知っている。

 僕は小さい頃に父さんの工房に入り浸っては、端材や道具を使って自分なりに積み木みたいな物を作っては遊んでいた。

 父さんはそのことを思い出したのだろう。

 僕達のことは何年も放っておいたのに、そういうのは覚えているんだなと少しだけ胸が熱くなるが……今は流されちゃいけないと気を引き締める。

「とにかく、いきなり玩具屋になれと言われても僕にも家族がいるんだから、先行きが不安なことはしたくない。それにするならするで無責任なことはしたくない。だから、先ずはちゃんと説明して欲しい」
「うん、やっぱりガンツさんの息子さんだね」
「ケイン、お前何歳いくつだよ……まるで孫を見るジジイの目線だぞ」
「そ、そうかな。そんなことよりさ、ほら説明しないと」
「ああ、そうだな。こいつの気が変わらない内に……よっと」

 父さんはテーブルの下に用意してあった木箱をテーブルにドンと置くと「最初に売るのはこれだ!」と言う。

「これって……もしかして鉄道模型」
「ああ、そうだ。だがな、今走っているのはこれが原型だぞ」
「え? ナニソレ。普通は本物から模型を作るんじゃないの?」
「まあ、普通はな。そこはほら、ケインだからな」
「ああ、ケイン君だからねぇ」
「いや、それで納得するのはおかしいでしょ」
「「だって、ケイン(君)だし」」
「えぇ~」

 父さんが出した箱の中には列車の模型とレールらしき物が乱雑に入っていた。

 僕はそれを見て思わず口角の端が上がるのが分かる。

 そんな僕を見て父さんは、今ドワーフタウンと領都を結んでいる鉄道の原型は模型これなんだと言うから驚くが「ケインだから」と言われれば納得するしかない。

「まあ、いいから先ずは触って実際に遊んで見ろ」
「いや、遊べって……僕だってもういい歳なんだけど」
「ふふふ、歳なんか関係ないと思うよ。だって、ガンツさんやガンボさんだって」
「あ、こら!」
「え?」

 父さんは僕に箱の中の玩具で遊んで見ろというが、僕だって子供がいるいい歳した大人なんだからと断ればケイン君が思い出し笑いをしながら「実はね」と父さんがガンボさんと一緒になって鉄道模型を工房の床一面に繋いだレールを走らせ、それを眺めながらお酒を呑んでいたと話してくれた。

「ま、そういう訳で大人だからとか言わずにちょっと遊んでみてよ」
「断言する! お前も絶対にハマるから!」
「えぇ~」

 父さんに断言されるが、実は僕もそう思っている。

 実はさっきからウズウズしているのがバレないか不安でしょうがない。
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