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第三章 遺跡の役目

第7話 中毒者が出たんだけど

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「そうか。あそこの遺跡が……」
『はい』
「分かった。報告ご苦労だった。また、なにか進展があれば報告するように」
『はっ』

「魔の森の暴走は失敗したか……まあ、いい。他に手がないわけでもない」

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ギルマス達が帰った後に『人化』スキルと『隠蔽』スキルが必要だという話になりソルトが、それぞれのスキルを付与した魔石を用意する。
「サクラにも『念話』『収納』『隠蔽』を付与したのを渡すから、『白虎』を隠蔽スキルで『人族』にしてね」
「私に嘘を付けと?」
「うん。そうだよ。そうしないと一緒にいられないしね」
「そうか。旦那様がそう言うのなら、しょうがないな」
「ありがとう。じゃ、エリス。加工をお願いするね」
「分かったわ」

『あ……』
「どうしたの。リリス?」
『いえ、今、使えないのかと……』
「ふふふ、ごめんね。でも、急いで加工するから」
『すみません。すぐに使えると思っていたので』
「あら? そんなに『人化』スキルが欲しかったの?」
『ええ。だって、それさえあればお兄様と……』
「俺がどうしたの?」
「『なんでもありません!』」
「なんだよ……呼ばれた気がしたから、聞いたのに」

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

魔石をエリスに渡し、加工を頼んだソルトは厨房へと向かう。
「ちょっと、いいかな?」
「なに、ソルト君」
ソルトは、無限倉庫からトカゲの尻尾部分を取りだして、ティアに渡す。
「これは?」
「あ、名前は聞くのを忘れたけど、でっかいトカゲの肉だね。皮は使いたいから、捨てないでね」
「でっかい……ですか。なら、旦那達に皮を剥いでもらいますか。それで、ご希望のメニューは?」
「もちろん、唐揚げでお願いします」
「カラアゲですか?」
「あれ? 教えてなかった?」
「ええ、まだ教えて貰ってないです」
「そしたらさ、もう少し出すから、チキンカツじゃないね。トカゲカツもお願いね」
ソルトは無限倉庫からさらにトカゲの肉を取りだしティアに渡す。
「唐揚げの作り方は、皮を剥いでからでいいよね。じゃ、その前にお風呂に行こうっと」

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ソルトは風呂に入りながら、チキンカツならぬトカゲカツに想いを馳せる。
「ここは、タルタルソースの出番だろ。卵はちょっと怖いけど、蛇の卵が残っているからいいとして、漬物だよな。ピクルスかなにかあればいいけど、なかったらマヨネーズでもいいか。唐揚げに着けても美味しいはずだしね」

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

風呂から上がったソルトは、そのまま厨房に向かう。
「ティアさん、どう?」
「今、皮を剥ぎ終わったところです。そのまま、加工してもいいですか?」
「ああ、お願いできる?」
「分かりました。では、旦那達にそう言っておきます」
「うん、頼むね」

ソルトはティア達に肉の切り方を指導し、唐揚げの作り方を教える。
「これだけですか?」
「うん。基本はね。あとはお好みで漬け込んだり、砂糖をまぶしたり色々アレンジが出来るから試してみてね」
「分かりました。では、早速揚げてからの味見といきましょうか」
「二度揚げを忘れないでね」
「はい」
「じゃ、俺はマヨを作ろうかな。ミディ、手伝ってくれる?」
「はい、いいですよ。でも、マヨってなんですか?」
「マヨはマヨネーズのことね。卵とお酢と油で出来る最高の調味料なんだ」
「それは、興味がそそられますね」
「でしょ!」
無限倉庫から蛇の卵を取り出し、テーブルの上に並べるソルトにミディが問いかける。
「ソルト君。これはなんの卵かな?」
「これ? 蛇だよ」
「蛇ですか……」
「ダメだった?」
「いえ、卵は貴重だし、問題はないんだけど……好みが……ね」
「ああ、なるほどね。じゃ、材料は秘密でお願いね」
「そうね。そうしましょう」

ミディと一緒にマヨネーズを作り、味見をする。
「うん、いいね。上出来! ね、ミディ。ミディ?」
ふと、ミディを見ると味見の筈が、ボウルを抱えてスプーンで掬って舐めていた。
「ミディ! ストップ! ボウルを置いて!」
「ソルト……君、どうしよう止められないの!」
ソルトに注意され止まっていたスプーンがまた動き出す。
「え、ちょ、ちょっとミディ! ティア! サリュ! 手伝って!」
「「どうしました?」」
「お願いだから、ミディを止めて!」
「え、ミディを?」
ティアがミディの方を見るとボウルを抱えて、スプーンでなにかを掬って一心不乱という感じで口の中へと放り込んでいる。
「ミディ、どうしたの? やめなさい!」
「そうよ! ほら、スプーンを放しなさい!」
「止めたいけど、止まらないの~」
「なにバカなことを言ってるの」
「そうよ、ミディ」
二人はミディがなにを言っているのか意味不明だったので、その原因であるボウルの中に指を入れ掬って舐めてみる。
「これは……」
「どうしたの? ティア」
サリュもティアと同じ様にボウルの中味を指で掬って舐めてみる。
「あら、美味しい!」
「あ、ダメだ」

ソルトはミディを止めることを諦め、自分が作ったマヨネーズは無限倉庫に入れ、死守するのだった。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「「「ごめんなさい」」」
「いいよ。でも、あなた達のマヨは無しで」
「「「そんな~」」」
「残念だね。あれは単体でも美味しいと思うけど、唐揚げやトカゲカツに掛けると、凄く美味しくなるのに……本当に残念だね」
「「「うっ……」」」

「ほら、ティア達も反省はその辺にして、手伝ってよ」
「「「はい……」」」

食堂のテーブルに座ったそれぞれの前に唐揚げとカツが並べられた皿とは別に、なにやら黄色いクリーム状のが小皿に載せられている。

「ソルト、これってもしかして……」
「レイなら分かると思った。そう、これはマヨだよ。すでに中毒者が三人ほど出たけどね」
「あ~それで……」
レイが可愛そうな目でティア達三人を見る。

「ほら、そこの三人は放っておいて食べようよ。いただきます!」
「「「「「いただきます!」」」」」
「「「いただきます……」」」

レイはなにも気にすることはなく、カツにマヨネーズを着けると、そのまま口の中へと放り込む。
「ん~これこれ! チキンカツにはこれだよね! ありがとうね、ソルト」
「よろこんでくれてありがとう。でも、これはトカゲカツだからね」
「これが、あのトカゲか。唐揚げは食べさせてもらったから分かったが、これはこれで美味いな。で、この黄色いのを着けるのか? どれ……おう、レイが喜ぶのも分かるな。これは美味い!」
レイとサクラの反応を見て、子供達も次々にカツをマヨネーズに着けると迷うことなく口の中へ放り込む。
「「「「「ん~」」」」」
口の中に放り込んだ子供達が両手足をバタつかせ体全体で美味しさを表現すると、見ていた旦那達も意を決したように、カツをマヨネーズに着けると口の中に放り込んだ瞬間。
「「「美味い!」」」

そんな旦那や子供達を羨ましそうにみるティア達三人。
「これだけでも美味しいけど……」
「あの反応を見るとね……」
「ミディのせいで……」
「ちょっと、なんで私のせいなの!」
「だって、ミディが早くスプーンを放せば、私達もあの……」
三人はマヨネーズを付けて食べる皆を見ながら、味気ない揚げ物を口にする。
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