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第三章 遺跡の役目

第6話 人化します

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ソルト達は今はリリス達の母親の墓標となっている巣穴へと転移する。
「ふぅ~やっと帰って来たって感じ!」
「まだ、半分だけどな」
「もう、言わないでよ。まだ、半年先のことでしょ!」
「レイ。そうは言うが半年なんてすぐだぞ」
「ゴルドまで……」

ソルトはリリス達とお墓に無事に帰還した挨拶を済ませると、じゃ行こうかと皆に言う。
「ほれ、レイもさっさと立つ! 外を見てみろ! もう日が落ちかけだ」
「だから、転移しようって言ったのに」
「ソルト。だから、この人数じゃダメだろ」
「じゃ、ゴルドさんが早く帰りたそうだし。ゴルドさんに頼んじゃおうかな」
ソルトはそう言うと、ゴルドの両肩をガッシリ掴む。
「ソルト? なにをするつもりだ?」
ソルトはニヤリと笑うと、ゴルドに告げる。
「ギルマスへの説明は任せた。『転送トランスファー』」
「おい、ソ……」
なにかを言いかけたゴルドの姿が消える。

「ソルト。ゴルドをどこにやっちゃったの?」
「ギルマスの所。先に説明しといてもらえば楽かなって」
「あ~それ、多分逆効果よ」
「え~そんなことはないでしょ」
「私もエリスの言う通りだと思うけどね」
「レイまで……」
「ソルトよ。悩んでいてもやってしまったことはしょうがないだろ」
「サクラ……そうだな。行けばなんとかなるだろ」

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ヒュンと音がしたと思ったら、ギルマスの前にゴルドが立っていた。
「……ルト! って、ここは? あ、ギルマス」
「ゴルドか? お前一人なのか? 他のはどうした?」
「いや、それがな……」
「まあ、座れ。そして、聞かせてくれ」
ギルマスはゴルドにまずは座るように勧めると話を聞く体勢になる。
「分かった。じゃあ、話すぞ。まずは魔の森に入ってから……」
ゴルドはギルマスに魔の森に入ってから遺跡までのこと。そして遺跡に入ってから出るまでを話す。

「まさか、遺跡が本当にあったとはな。それに遺跡がそんな役割を担っていたとは……」
「ああ、俺も驚いたよ。詳しくはソルトが連れてくる『人造人間ホムンクルス』にでも聞いてくれ」
「は? 今、なんと?」
「だから、遺跡の中に『人造人間ホムンクルス』がいたんだよ。しかも水槽の中にズラッとな」
「……無理だ。俺一人じゃ支えきれん。なあ、ゴルド。どうすればいいと思う?」
「あのな、俺だって、この街の警備隊長でしかないんだぞ。その俺にどうしろと?」
「そうだよな~ったくそれもこれもアイツのせいだな」
「そうだな。アイツが来てからだな……」

ギルマスとゴルドがこれからのことについて、頭を悩ませ共に項垂れていると、部屋のドアが『コンコンコン』とノックされる。

「入れ!」
「失礼します。ソルト様からの用件をお伝えしに参りました」
そう言って部屋へと入ってきたのはソルトの屋敷で働く獣人の女性だった。
「ソルトからだと! なぜ、ここに来ない!」
「さあ? では伝言です。『ギルマスの部屋には入りきらないから、屋敷まで来て』と言うことです。では、確かにお伝えしましたから」
獣人の女性はそう言うと軽く会釈をしてから、退室する。

「ゴルド、どういうことだ?」
「どうもこうも、従魔も増えたし、人も増えたからな。まあ、あの人数じゃ確かにここには入らないな」
「そうか、分かった。よし、ゴルドも付き合え」
「え~俺はちゃんと報告しただろ? 早く家族に会いたいのに……」
「いいから、ほんの少しだから付き合えって」
「それ、絶対に長くなる言い方じゃないか!」
「いいから、お前がごねるだけ帰るのも遅くなるぞ」
「きったね~」
「言うな!」

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「ほう、ここがお前の屋敷か」
「そう。部屋の案内は……エリス、頼むね」
「分かったわ。子供達と一緒なら私の隣の部屋が空いてるわ」
「私は床があれば、それでいいぞ」
「まあまあ、そう言わずに。部屋の中を見れば気に入ると思うから。ほら、コスモ達もおいで。その後で、お風呂とかも案内しなきゃいけないんだから、ほら早く」
「分かった。よろしく頼む」
『お願いします』
『で、どこなの? 早く見たい!』

「それで、屋敷の人達への説明は誰がするの?」
「それは、エリスが……」
「今、サクラを案内中だよ」
「なら、レイが……って、無理か」
「そうだけど、ハッキリ言われるとムカつく!」
「じゃあ、シーナは……あれ? シーナは?」
「あそこで、獣人のお姉さん達にもみくちゃにされてる」
「なら、リリス……も、ショコラと一緒にもみくちゃにされているね」

ソルトは思った。遺跡に向かう時に屋敷に住む子供達、獣人達は俺達を暖かく送り出してくれたハズだと。それなのに帰って来たら、放置ですかと。

「ソルト、考えていることは分かるけど、今は言わない方がいいよ。それにギルマスも来るんでしょ?」
「来ると思う?」
「そりゃ来るでしょ。分からないことだらけだし、サクラ達の説明と従魔登録もあるし」

『ドンドン!』
屋敷の扉が激しく叩かれる。

「来たみたいよ」
「そうだね」
屋敷の扉を開けると、ゴルドとギルマスが屋敷の中へなだれ込んでくる。

「「ソルト!」」
「早かったですね」
「そうじゃないだろ!」
「なに怒ってるんです?」
「お前……ああ、もういい! どっか座れるところに案内しろ!」
「分かりました。では、こちらへ」
ソルトはギルマス達を食堂へと案内し、レイにはサクラ達を呼んで来るようにお願いする。

ギルマス達が座ったのを確認し、ソルトも対面の席に座る。
「ゴルドさんからはどこまで聞いています?」
「ああ、魔の森に入った所から遺跡を出るまでだから、ほぼ全部だな」
「ほら、やっぱりゴルドさんを先に送って正解だったじゃん」
「それで、ソルトは俺になにかいうことはないのか?」
「ゴルドさん、お疲れ様でした!」
「おう。って、そうじゃないだろ!」
「ソルト、連れてきたよ!」
レイがサクラ達を連れ、食堂へ入ってくる。

「ギルマス。こちらが白虎のサクラと、その子供達のカスミとコスモね」
「サクラだ」
『カスミです』
『コスモ!』
「そして、遺跡でお世話になった『人造人間ホムンクルス』のシーナです」
「シーナと言います。以後、よろしくお願いします」
「……」
「ギルマス?」
「ソルト!」
ギルマスが大声でソルトの名を叫ぶから、心配した人達が何事かと食堂の中になだれ込んできた。子供達の中には泣いている子もいる。

「あ~あ、ギルマスが大声出すから、泣いちゃったじゃん。ティア、ごめん。頼めるかな」
「はい。分かりました」

「すまん。泣かせる気はなかったんだが……」
「いいですよ。ソルトが悪いんだし。ほら、皆も心配しないでいいから」
エリスが食堂からパーティメンバー以外を外に出すと座り直す。

「は~まったく。お前らがいない時は平和だったのに。何だよ、白虎って……それに『人造人間ホムンクルス』だと……もう、俺一人で抑えるのは無理だ! 限界だ!」
「でも、まだ魔の森の騒動は片付いてないんだよ。もう少しだけ頑張ってよ。カスミ達のことだって、その内、収まるでしょ」
「一つ聞くが、ここへはどうやって戻った?」
「どうって、転移で戻って来たけど?」
「よし。それなら、まだ誤魔化しは効くな」
「誤魔化し?」
「ああ、とてもじゃないが白虎はダメだ」
「なんだ? そこのギルマスとやらは、私達に喧嘩を売るつもりか?」
『そうなんですか?』
『俺がやる?』
ギルマスの発言にサクラ達が臨戦態勢に入る。

「待て! 誤解だ。ちゃんと話を聞いてくれ」
「ふん。遺言か? 話してみろ」
「遺言じゃないからな。いいか? 白虎は目立ちすぎる。それにどこかのバカ貴族がお前達に手を出すかもしれない。だから、白虎じゃなく普通の虎として、従魔登録をしてくれ。それと、ソルトもどうにかして、見かけを普通の虎に化かしてくれ」
「そういうことか。分かった。ならカスミ、コスモ。お前達には私が『人化』スキルを教える。それを覚えるまでは外出禁止な!」
『『え~』』
「なにもそこまでしなくても、黄色くするとかあるだろうに」
「ならん! 白虎である私達が普通の虎になるなど、ガマン出来るか!」
「そうなの?」
「俺に聞くな!」
ソルトが言い出しっぺのギルマスに確認するが、ギルマスも知らないという。それもそうだろとゴルド達は呆れるしかない。

「まあ、『人化』スキルなら、すぐに覚えられるだろうから心配はいらないよ」
『『『『本当?』』』』
「本当だよ。って、リリス達も覚えたいの?」
『はい!』
『うん!』
「え~そこはモフらせて欲しいな~」
『お兄様が望むなら、いつでもこの姿に戻りますよ』
「じゃ、いいか」
「リリスは私の……」
「エリス。諦めなって。私だって、一緒に寝たのは一回だけなんだよ」

ギルマスがソルトの横に座るシーナをジッと見つめる。
「なあ、君は本当に『人造人間ホムンクルス』なのかい?」
「はい」
「そうか。しかし、この目で見ても信じられないな」
「ギルマス。本当だって。鑑定したらちゃんと種族欄に『人造人間ホムンクルス』って出るからさ」
「そうか。ちゃんと出るのなら本物だな。……って、出たらダメじゃないか!」
「あ、やっぱり?」
「とりあえず、白虎達とシーナはソルトがちゃんと対策するまでは外出禁止でお願いしたい」
「分かったよ。私達も面倒を起こしたい訳じゃないからな」
「助かる。それで、魔の森は二週間程度で元の状態に戻るんだな?」
ソルトがシーナに目配せすると、シーナが頷きギルマスに対し返事する。
「はい。二週間ほどで元の状態へと戻ります」
「分かった。ありがとう。では、俺からギルド職員へ通達しておく。他に言い忘れたことはないか?」

皆がソルトに注目する。
「言い忘れたこと……あっ、思い出した」
「なんだ。言ってみろ」
「言っても怒らない?」
「ん? 怒らないから、言ってみろ」
「じゃあ、言うね。やっぱり、生えなかったね」
「は? なんのことだ?」
「だって、出る前に俺達が帰るまで頭は剃らないって言ってたじゃん」
「あ~確かに」
「そういえば……」
「言ってたな」
パーティメンバーの視線がギルマスの頭部へと集中する。

「うるさ~い!」
『バタン!』とドアが開き、ティアが怒鳴る。
「やっと、泣き止んだのに! 今度はなに!」
「「ごめんなさい……」」
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