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第五章 変わりゆく世界、変わらない世界

第18話 いざ、王都へ!

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ゴルドがソルトの元を訪れてから、数日が過ぎ今日は王都へと出発する日だ。
ギルドの前で領主代行と待ち合わせをしていると、ギルマスがやってくる。

「よう、とうとう今日だな」
「ギルマス、おはよう」
「ああ、おはよう」
「それで?」
「ん?」
「いや、『ん?』じゃなくて、だからなんでここにいるの?」
「ああ、そのことか。領主代行と待ち合わせしているんだから、俺もいないとダメだろ」
「そうなの?」
「そうなの! ま、その内ゴルドも来るだろうから、それまでの暇潰しだな」
「暇潰し……って、仕事ないの?」
「しっ! いいから、そういうことは言うな。あ、ゴルドも来たみたいだな」
ギルマスが言うように通りの向こうからゴルドがギルドの方へと向かってくる。

「おう! 待たせたか……おい、お前達の馬車は?」
「馬車?」
「何を不思議そうにしているんだ。王都まで行くんだぞ。なんで馬車を用意していないんだ?」
「え? 領主と同じ馬車じゃないの?」
「んな訳あるか!」
「でも、俺達にはコレがあるし」
そう言って、無限倉庫からボードを取り出す。

「お前、それで王都まで行くつもりか?」
「ダメなの?」
「ダメじゃないが、目立つのはどうかと思うぞ」
「じゃあ、どうするの?」
「まあ、今からどうにかするしかないか」
「でもさあ、俺のせいみたいに言ってるけど、この話を持って来たのはゴルドさんでしょ。なら、そういう諸々を準備するのはゴルドさんなんじゃないの?」
「……そうかな?」
「「「そうでしょ!」」」
「ぷっははは! まあ、確かにソルトの言う通りだな。ゴルド、お前の怠慢だ」
「ギルマスまで……まあ、それは認めるが実際、馬車はどうするんだ? 今から、用意するのは無理だぞ」
「あるよ」
「な、だから無理だって」
「だから、あるって言ってるだろ。ゴルド、ここがどこか忘れたのか?」
「「「ギルマス?」」」

「ちょっと、待ってろ」
ギルマスがそう言って、ギルドの裏手に回ると、馬車に乗って現れた。
「ほら、コレ持って行け」
「え? いいの?」
「ああ、いいぞ。だが、ちゃんと返せよ。いいな、ちゃんとお前が返すんだぞ。言っている意味が分かるか?」
「へ? どういうこと?」
「もう! ギルマスはちゃんとここへ帰って来いって言ってるの! もう、せっかくギルマスが格好付けてハードボイルド調に言ってるのに台無しだよ」
「レイ、説明ありがとうよ。でも、改まって言われると恥ずかしいからな、その辺で勘弁してくれ……」
ギルマスがそう言って頭をボリボリと掻く。

「まあ、とりあえずこれで馬車は用意出来たが、メシは? 水は?」
「え?」
ゴルドはそう言って、ソルトに確認するが、ソルトはまたも不思議そうにしている。

「お前、『え?』ってなんだよ。そりゃ、確かに馬車は俺の不手際かも知れないが、メシくらいは用意しているんじゃないのか」
「別にいらないでしょ」
「お前、マジで言ってるのか?」
「そっちこそ大丈夫?」
「どういうことだ?」
ゴルドからの問い掛けに今度はソルトがハァ~と短く嘆息するとゴルドに答える。

「あのね、俺には無限倉庫もあるし、転移も出来るの。だから、必要に応じて家に帰ればいいだけだから、そんなのは必要ないでしょ」
ソルトが得意気にそう答えると、ゴルドとギルマスは揃って嘆息する。

「だから、目立つ行動は控えろと言うんだ。分からないのか?」
「目立つも何も領主代行でしょ。なら、何を隠す必要があるの?」
「そこからか……」
「これは……ゴルド、お前の教育不足だな」
「そうか? いや、でもそう言われればそうか。今まで、コイツの転移を便利に使わせてもらっていたからな」

「ねえ、俺にも分かる様に説明してよ」
「ああ、いいか? 野営場所にはお前達だけじゃなく他にも利用している奴がいるだろう。そんな奴等の前で転移や無限倉庫なんか大っぴらに使えるか?」
「ああ、そういうことね」
「分かってくれたか」
「まあ、少しはね。でもさ、そういうことなら馬車の中で済ませればいいんでしょ。なら、何も問題ないんじゃないの?」
「「「ああ……」」」
「『ああ』って、そこに気付かなかったの?」
「そうみたいね。いい大人がダメだな」
「そういうレイも気付いてなかったんじゃないの?」
「エリス、そこは黙ってくれているのが友達じゃないのかな」
「じゃあ、この話はここまでだ。ほら、領主代行が来たぞ」

領主代行の馬車がギルドの前に止まり、領主代行が下りてくる。
「ギルマス、ゴルド、それとソルトさん。今回は依頼を受けて下さりありがとうございます」
「それはいいけどさ。そっちは大丈夫なの?」
「……はい」
「ふ~ん、じゃあ、いいか。ゴルドさん、行こうか」
「ああ、分かった。アラン殿、では行きましょうか」
「はい、お願いします」

領主代行のアランが馬車に乗り込んだのを確認するとソルト達が乗った箱馬車が先導し王都へと向かう。
御者の役割はゴルドが引き受けてくれたが、コレも勉強だからと後で変わるようにとソルトに言う。

「ねえ、王都ってどんなところかな? エリスは知っているの?」
「さあね。私は行ったことないから分からないわ。ゴルドはどうなの?」
「まあ、俺も行ったことはあるが、そんなには詳しくはないぞ」
「え~じゃあ、どうするの?」
「どうするって何をだ? その前にだ。レイ、お前はこれが護衛任務だと分かっているのか?」
「あ……」
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