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第4話
☆3
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「……ゼオさん、そんなに慌ててまた悪さでもしたんですか?」
兄の本気の殺気を目の当たりにして顔を蒼白くさせたゼオはロイの身体とぶつかる寸前で抱き止められる。細い腰にロイの腕が絡まり、ゼオの心臓がどきりと一瞬大きく跳ねあがり気持ちが高ぶる。
「……眠っていたかわいこちゃんをちょっと味見しただけ」
ゼオはさっとロイから離れて距離を置く。心の中を見透かされそうで怖かった。
いつもの呆れた表情を浮かべるロイに安堵する。
「……また、貴女はお転婆が過ぎます」
「お転婆って、僕を女扱いしないでよ…身体だけなんだし」
心底うんざりとした顔をしてゼオは肩をすくめた。ゼオの心は男だ。175㎝ありしなやかな筋肉に包まれている身体は細身の男性とよく間違えられるが、戸籍上女と記されていた。
「どーせ、兄貴に慰められるんだろ。可愛いって特だよねぇ」
もう口を開きたくないけど苛立ちと嫉妬の感情が混じった言葉が止まらなくなる。ゼオは舌打ちして視線を外した。
「……帰ってきたのが間違いだった」
掠れた低い声で呟く。
サリス、と呼ばれている少年を見てもうここに居場所がないとゼオは思った。
サリスは、本当は自分の名前だった。ゼオロンヌという訳がわからないダサイ女の名前なんていらない。
男の魂を持って、偽りの肉体を纏っている自分が酷く惨めになった。
俯いて肩を震わせているゼオをロイは静かに見つめている。彼、の苦しみは計り知れない。生物として未完成である自分がいう言葉はない。
中途半端な言葉は彼を傷付けるだけだ。
ゼオは傷ついた心のまま自室へ戻ろうとするが、腕を掴まれた。
「……私が欲しくて戻ってきたんでしょう?ここをサリスにしたように、弄ってとろとろにして欲しくて」
ゼオの尻をゆっくりと揉んで耳元で囁いた。切なく身体の奥が疼いてきゅんとなる。忌まわしい膣が潤んで下着が濡れる。
「勘違いするなよ。僕が欲しいのはお前じゃない…卑しい僕の中の雌を解放したいだけ」
ゼオはジェスの唇に食らい付いて唇を深く合わせた。愛なんていらない。ここにあるのは肉欲だけ。心なんて麻痺していればいい。今はただ痛みも感じず、ただ快楽を貪りたい。
***
「……サリス、大丈夫か?」
「まま……っ、まま」
震えるサリスが痛々しい。サリスを膝の上に座らせた。胸元に顔を埋め母親を恋しがり泣いている。頭や背中をゆっくりと撫でた。
兄の本気の殺気を目の当たりにして顔を蒼白くさせたゼオはロイの身体とぶつかる寸前で抱き止められる。細い腰にロイの腕が絡まり、ゼオの心臓がどきりと一瞬大きく跳ねあがり気持ちが高ぶる。
「……眠っていたかわいこちゃんをちょっと味見しただけ」
ゼオはさっとロイから離れて距離を置く。心の中を見透かされそうで怖かった。
いつもの呆れた表情を浮かべるロイに安堵する。
「……また、貴女はお転婆が過ぎます」
「お転婆って、僕を女扱いしないでよ…身体だけなんだし」
心底うんざりとした顔をしてゼオは肩をすくめた。ゼオの心は男だ。175㎝ありしなやかな筋肉に包まれている身体は細身の男性とよく間違えられるが、戸籍上女と記されていた。
「どーせ、兄貴に慰められるんだろ。可愛いって特だよねぇ」
もう口を開きたくないけど苛立ちと嫉妬の感情が混じった言葉が止まらなくなる。ゼオは舌打ちして視線を外した。
「……帰ってきたのが間違いだった」
掠れた低い声で呟く。
サリス、と呼ばれている少年を見てもうここに居場所がないとゼオは思った。
サリスは、本当は自分の名前だった。ゼオロンヌという訳がわからないダサイ女の名前なんていらない。
男の魂を持って、偽りの肉体を纏っている自分が酷く惨めになった。
俯いて肩を震わせているゼオをロイは静かに見つめている。彼、の苦しみは計り知れない。生物として未完成である自分がいう言葉はない。
中途半端な言葉は彼を傷付けるだけだ。
ゼオは傷ついた心のまま自室へ戻ろうとするが、腕を掴まれた。
「……私が欲しくて戻ってきたんでしょう?ここをサリスにしたように、弄ってとろとろにして欲しくて」
ゼオの尻をゆっくりと揉んで耳元で囁いた。切なく身体の奥が疼いてきゅんとなる。忌まわしい膣が潤んで下着が濡れる。
「勘違いするなよ。僕が欲しいのはお前じゃない…卑しい僕の中の雌を解放したいだけ」
ゼオはジェスの唇に食らい付いて唇を深く合わせた。愛なんていらない。ここにあるのは肉欲だけ。心なんて麻痺していればいい。今はただ痛みも感じず、ただ快楽を貪りたい。
***
「……サリス、大丈夫か?」
「まま……っ、まま」
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