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しおりを挟む「……龍」
か細い声で名前を呼ばれて龍は意識を今に戻した。
濡れた千晶の瞳が痛々しい。ダブルベットに身を沈め仰向けになっている。上の布団を手で捲ると千晶は胸元のボタンを外して白くなまめかしい肌を晒した。
「さみしいから、ぼくの頭をなでて」
今にも消えてしまいそうな儚さが千晶にあった。龍は優しく千晶の頭を撫でた。
ん、と千晶は小さく声を洩らして手に擦り寄り甘える。
「……龍、ぼくにキスして」
名前を呼ばれてキスをねだられ龍は堪らない気持ちになった。
みずみずしい赤い身のような唇に吸い付いた。柔らかく何度か食む。
千晶が薄く唇を開いた。深いキスをねだっている。龍は厚い自らの舌を差し入れて舌を絡ませた。小さく甘い千晶の舌を味わう。
微かな水音が部屋に響く。
はあ、と大きく息をして千晶は龍をベットのなかへと招いた。足を絡ませて抱きつく。
「……っん、はあ……龍はぼくのことすき?」
唾液の糸を引かせ唇が離れる。
千晶が分かりやすく龍に甘えている。
普段は普段で、『何を言っても龍は自分を嫌いにならない。その時の気分だけの言葉で本当の言葉じゃないと分かってくれる』と甘えているが。
「ああ、好きだ。千晶が愛しい」
龍の言葉に千晶は安心した笑みを浮かべた。
「嬉しい。ぼくも龍もすきだよ」
「……お前が愛しているのは摩耶だけ。俺はすき、止まりか」
愛しい千晶から『ぼくも愛している』という言葉を貰えず龍が少しだけ拗ねる。
くすくす、と笑い声を洩らして千晶は龍の頭を撫でて額に柔らかく唇を押し当てキスをした。
「愛しているよ、龍」
深く奥底に沈む千晶を救いだしてくれるのは、いつも龍だった。
千晶は龍を抱き締めて何度もキスをした。
「お前が溺れていいのは、俺の愛にだけだ」
龍は深々と唇を合わせてキスをした。
さみしさを与えず死ぬまで愛して、可愛がる。
その思いを込めて。
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